第27話・悪意・余響②
第27話・悪意・余響②
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魔法少女の覚醒は、ほとんどが悲劇と共に訪れる。
覚醒と同時に家が失ったもよくあるもの。
支部が壊された光景は、魔法少女たちのトラウマを呼び起こしかねない。
幸い、寮はほとんど無傷だった。
帰る場所が残っているだけで、精神的なダメージはギリギリ抑えられたようだ。
オレたち連絡員は懸命に動き回り、ようやく現場の魔法少女たちの混乱を収めた。
音羽さんが他の小隊に説明を引き受けてくれた。
あの人の演説は上手い。オレよりずっと詳しく、的確に状況を伝えられるはずだ。
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次は、オレの小隊のみんなのことについて。
固有魔法の燃費が悪い雪菜と、自然回復できない楽奈はオレの魔人化から戻す為、すでに魔力供給済み。
他の子たちも精神状態に異常はないみたい、魔力も半分以上残ってます。
そして、葵のこと。
朝に覚醒したばかりなのに、こんな大規模な戦いに巻き込まれた。
詳しく確認する必要がある。
まずは、みんなに変身解除の方法を教える。
「変身解除は……うん、言いづらいけど、放出してる魔力を体の中にしまう感じ?」
「彩音もよくわからないけど……なんか『しゅう~パーン』って?」
「……直感で解除する」
……感みたいなものだから、教えるのは難しいらしい。
葵はみんなの言葉を聞いて、ますます目がくらくら。
「何が言いたいの……うち、全然わからないよ」
「もう、みんなもっと考えてよ!そうね、わたくしにとっては本を閉じるような……かな?」
みんなで真剣に伝えようとするが、葵は数十回の試行錯誤の末、ようやく変身を解除できた。
通常姿に戻った葵は、桜色の髪をなびかせ、木の枝を握った女子高生。
使った武器も、あの枝に《変化の魔法》をかけて変形させたものだろう。
ある意味、武器に困らない便利な魔法だ。
本当の杖はどこなんだろう?
「少しは慣れたかな、弓月さん」
「はい!どうしたんですか?」
「体の具合はどう?何か変わったところ、増えたものはある?」
葵は枝を放し、自分の体を見回す。
「うん、特に変な感じはしませんでした。あ、増えたもので言うと……これ!」
頭から、ハート型の髪飾りを外す。
「これ、うちの杖?」
「うん、そうみたい。雪菜、どう思う?」
雪菜が横から近づいてくる――って、近い過ぎる。
まだ不安でコアラみたいにオレの腰にしがみついてる小夜の向こうに、ぴったり寄り添う。
「そうね、この髪飾りから魔力が感じられます。心の中にしまうってイメージすれば、消えるはずです」
「はい、むむむ……あ、本当に消えました!」
握っていた髪飾りが、ふっと消える。
「うん、よくできました。次に変身が必要になったら、同じ方法で呼び出せばいいですよ」
「はい!」
これで葵の魔法と杖が確認できた。
精神状態も、特に異常なし。
最後に、登録のこと。
「弓月さん、明日に時間はある?」
「どうしたんですか、急に?」
「今の支部の状態じゃ、登録と身体検査ができない。本部でやるから、時間を合わせてほしい。オレが案内するから、安心して」
「あ、少し待ってください」
葵はスカートのポケットからスマホを取り出し、カレンダーを確認。
「あ、明日なら大丈夫です」
「じゃあ、明日の10時に支部前の広場のここで合流でいい?」
「10時なら大丈夫です!よろしくお願いします!」
こうして、色々な確認を終え、本部からの支援が到着した。
時間が経っても追加のテロはなく、一件落着。
でも、このテロは阻止できたものの、代償は重い。
13区支部は半壊。
魔法少女たちの精神状態も不安定で、作戦にリスクが生じる。
だからしばらく、本部の支援を受けながらみんなが長期休暇する。
支部再建まで、みんなでゆっくり休むことになった。
*
寮住まいの彩音、奏、楽奈は寮へ帰宅。
葵は本部のスタッフに家まで送ってもらう。
魔法少女になった以上、魔物対策局の説明も必要だ。
お隣同士だから帰り道は同じ。
オレと小夜は、雪菜と一緒に家路についた。
「お兄さん、お先に帰るから、まだ明日ね」
「うん、まだ明日」
「雪菜ねえ、またね~」
彼女の家前に別れて、ようやく自分の家に帰ってきた。
なんとも慌ただしい長い一日だった。
*
湯船に浸かり、湯気が立ち込める浴室。
オレは最近の出来事を振り返る。
「やっぱり、家が一番ですね……最近の出来事多すぎて、一日が長く感じます」
そういえば、魔人はともかく、廃棄工場のコウモリはあの魔人の使い魔。
地下街の雷爪炎狼も、支部襲撃の魔物と同じタイプ。
最近のイレギュラーは、全部あの違法組織の仕業か。
なら、自然顕現した魔物は、局長が倒したゲイザーだけ?
でも局長もあの魔物は普通より強いに言ってたから、それは確定出来ない。
「なんだ、お前は妙に大人しいな……まだ魔物に襲われたショックが残ってる?」
オレは小夜の長い灰色の髪を優しく洗いながら、声をかける。
「そういうわけじゃない……お兄ちゃんの勘違い」
「本当か?じゃあ、水流すから目つぶって」
シャワーで髪に付けた泡を流し、背中も丁寧に洗う。
小夜は強がりを言うくせに、普段よりぴったりと背中をオレの胸に寄せてくる。
「……まあ、オレがここにいるから、安心しろ」
「別に……明日にはいつもの怠いアタシに戻ってるから」
そう言いながらも、小夜はオレの腕に自分の手を重ねて、ぎゅっと握る。
湯船に二人で浸かり、肩までお湯に沈む。
小夜の濡れた髪がオレの肩に触れ、温かい体温が伝わってくる。
「……おにい」
「もうお兄ちゃんって呼ぶのやめましたか?」
「うるさいな……今日は特別」
小夜は少し頰を赤らめ、オレの胸に頭をもたれかける。
オレは苦笑して妹の肩を抱き、髪を優しく撫でた。
「大丈夫だ。もう、何も来ない」
「……うん」
しばらく、そうして湯に浸かった。
湯気が立ち込め、静かな浴室に水音だけが響く。
妹の呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
その夜はいつものように、隣で眠る妹の寝顔を見ながら――明日から、また日常が戻ることを祈った。




