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第25話・悪意・番外・星野雪菜:あの日の真相

第25話・悪意・番外・星野雪菜:あの日の真相


==========

小夜を襲った魔物との戦闘で、隣で援護してくれたお兄さんが両手に黒い焔と鎖を纏った姿を見た瞬間――わたしは、勝利を確信した。


だって、あれはあの日のヒーローと同じだから。


一緒にいれば、どんな困難も乗り越えられる。


その後、楽奈ちゃんと協力して過剰の魔力を奪い、予想通り無事に元に戻せて、本当に良かった。


みんなはこの破壊されたお兄さんのオフィスに集まり、軽く警戒しながら状況を共有する。


わたしも周囲に気を配りつつ、あの日の記憶に沈んでいく。



*



《これは星野雪菜、過去の記憶》


五年前、わたしがまだ十四歳の中学生だった頃。


お兄さんとは幼馴染だから、二つの家族の仲もとても良かった。


あの日は夏休み。お兄さんがバイト代をもらったから、わたしと小夜をどこかに連れて行ってくれるって。


「どこに行きたい?」


そう聞かれて、近くにある遊園地を選んだ。


本来なら小夜も一緒のはずだったけど――


「あ~、今日は暑いから家のエアコンから離れたくないよ。雪菜ねえとお兄ちゃん、二人で楽しんでおいで~」


ソファーに寝転がった小夜は、親指を立ててにやりと笑う。


「がんばれ~!お兄ちゃんに突撃しちゃいなよ~」


そんなフォロー(?)を受けて、結局遊園地に行くのはわたしとお兄さんだけになった。


わたしは時間をかけて、気合を入れた服装を選んだ――白いワンピースに麦わら帽子。


鏡の前で何度も確認して、ドキドキしながらお兄さんと待ち合わせ。


遊園地に着いた瞬間から、楽しくて仕方なかった。


ジェットコースターで叫び合ったり、お化け屋敷で手を握ったり、観覧車で隣に座ったり……


お兄さんの笑顔が、すぐそばにあって。


でも、その幸せな時間は――魔物の出現で、突然終わった。


観覧車より巨大なタコ型の魔物が、警報と共に虚空から顕現した。


いま思い出すと、まだムカつくになるあのクソタコ野郎だ。


遊園地中が悲鳴に包まれる。


わたしは怖くて、足が竦んで動けなかった。


「雪菜!早く逃げろ!」


お兄さんは動けないわたしの手を強く握り、公主抱っこで壊れた建物の影に隠れる。


タコからどんどん離れていく。


でも、タコは執拗にわたしたちを追ってきた。


八本の触手が、荒々しく攻撃してくる。


運が良かったのか、攻撃は命中しなかった。


でも、お兄さんの必死の顔が、今でも忘れられない。


けれど、その幸運は長く続かなかった。


怒ったタコがジェットコースターのレールを巻き上げ、わたしたちの進路に投げつけてきた。


重い金属が落ちる鈍い音と共に、大きな衝撃と土煙が舞い上がった。


土煙が晴れた時、わたしたちの逃げ場は完全に塞がれていた。


絶望的な状況で、お兄さんはわたしを強く抱きしめ、最後まで守ろうとしてくれた。


「もういいよ……わたしを置いて、お兄さんだけでも逃げて……!」


その瞬間――わたしの体から、眩い光が放たれた。


タコも警戒したのか、攻撃を止めて高速で後退する。


光が収まると、わたしは雪のような蒼い和服に変わり、手元に刀が現れていた。


よく聞いていた現象――でも、自分が体験するなんて。


魔法少女の覚醒。


「雪菜……さん?」


「わたし……魔法少女になったみたい。これからは、わたしがお兄さんを守る!」


こうして、わたしはあのクソタコに挑んだ。



*



戦いの途中で、なんとなくわかった。


覚醒した魔法は「距離を操作できる」もの。


でも、真っ向から戦うと嫌でも理解できた――あのタコは丸い見た目とは裏腹に、かなり狡猾だった。


八本の触手は常に朧げで、攻撃前に上手く認識できない。


覚醒直後で、しかも普通の中学生のわたし。


刀を振るうのも初めて。


戦闘経験の差で、距離を取って戦うしかなかったけど――ミスで触手に捕らわれた。


「放せ……くぅ……!」


強力に締め上げられ骨から嫌な声が聞きた、タコ特有の目でわたしの苦しみを眺められる。


突然、拘束していた触手の力が失せ、切断された。


わたしは落下し、途中で黒い鎖が腰に巻きつき、引き寄せられるように抱き上げられた。


(わたしを助けてくれた……誰?本物の魔法少女?)


顔を上げると――黒い焔と鎖に纏われた、全身鎧の騎士。


手にする大剣が、触手を噛み千切るように切り落とす。


鎖は手足の代わりに廃墟と化した遊園地を高速移動。


隙あらば、次々とタコの触手を斬り払う。


陽炎のような黒い焔はタコを焦がすのに、わたしにはただ温かくて、懐かしい感覚だけ。


「お兄さん……だよね?」


言葉はいらない。


わたしの確信は、絶対に間違っていなかった。


今ならわかる。あれは魔人化だった。


お兄さんが鎖を操って高速移動で回避し、回避しきれない攻撃はわたしが刀で受け流し、魔法で弾く。


観察するとこの魔物対処する方法がわかった、触手の先端は朧げでも、本体と根元を狙えば問題ない。


二人の連携で、八本の触手を全て切り落とした。


全身が数えない鎖の印に刻まれて本来の色が見えずに、真黒に成ったタコに最後の一撃、無事にタコは討伐された。


お兄さんは魔物を倒した後、その場で鎖で自分を縛り、銅像のように動かなくなっていた。


魔物の脅威は消えたけど――明らかに変貌したお兄さんは、どうすれば?


(どうしよう……こんなこと、学校じゃ教えてくれないよ。物語ならお姫様のキスで解決するって……絶対変な意味じゃない、ただのお試し……って、誰に言い訳してるの、もう……!)


少し自分を説得して、顔があるはずの場所に手を伸ばす。


黒い焔は、わたしを傷つけない、ただ暖かいに感じた。


その下に、お兄さんの顔があった。


「……うん、やるぞ――ちゅー」


初めてのキス。


期待と緊張で心臓が爆発しそうだった。


唇が触れた瞬間、凄まじいエネルギーが体に流れ込む。


疲労が一気に吹き飛び、代わりに熱い衝動が湧き上がる。


もっと、もっと欲しい――


……。


気がつくと、周りに有名な魔法少女たちが立っていた。


わたしは慌てて、気絶したお兄さんから離れる。


「わおー」どこからか、そんな声。


「うう……穴があったら入りたい……恥ずかしい……」


わたしは恥ずかしさで地面に伏せた。


「まあ、元気で何よりですの。自分は残桜、この任務の責任者みたいなもの。魔物が出現し、魔法少女が覚醒、そして魔人も同時に現れた反応で来たの。でも到着したら、魔物は討伐済み、魔人も元に戻ってる……何があったか、教えてくれますの?」


小さな巫女服の幼女が、わたしに話しかけてきた。


「……うん」


こうして、わたしたちは魔物対策局に加入した。


わたしは正式な魔法少女に。


お兄さんも、この機会で連絡員になった。


お兄さんは普通じゃない方法で魔人化から戻ったこと――局長から「言わないで欲しい」と言われたから、小隊のみんなにも秘密。


ずっと隠し通すつもりだったけど……


そろそろ、みんなに説明する日が来るみたい。

==========

天城暁


極めて近距離から魔法少女覚醒で放たれた魔力に照射され、意外にも魔人化。

魔力と共鳴した欲望は「保護欲」


→固有魔法は《焔と鎖》。黒い焔と鎖を創造できる。


→魔人化の姿は黒い焔に纏われ、ねじれた鎧のような騎士。


→黒い鎖は手の届く距離を延長、微弱な封印効果あり。傷をつけると鎖の印が蔓延し、それを攻撃すると印の範囲全体にダメージを伝導。目の前の人を守り、手に届かない危険を排除する具現化。


→黒い焔は周囲の魔力を燃料に無間燃焼。消えない火。自分が死んでも守る具現化のため、保護対象は燃やさない。


→『彼女の日常も守る』信念で自我封印特性あり。体に纏う鎖も微弱封印効果があるため、覚醒ばっかりの雪菜も簡単に魔力を奪い、元に戻せた。


→しかし保護対象が危険な限り、爆発的な感情で周囲魔力を集めて魔人化。変身途中の副産物で時間感覚が鋭く、視界がスローモーション化。危険排除で変身停止、時間感覚正常化。


→本人も知らないが、この原因で魔力保有量は通常男性より多い。知っているのは雪菜、残桜を含む上層部だけ。

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