第21話・悪意・心像共鳴
第21話・悪意・心像共鳴
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「使役系の固有魔法……研究員、実験……魔力と共鳴した欲望は『支配欲』だろう、そして行動パターンは『破壊欲』だろうの。使い魔を普通に倒しても、蘇生を阻害しない限り数が減らないの~」
局長は明らかにブチ切れ状態なのに、声は冷静そのもの。
折扇を軽く振るうと、腰のカードケースから無数の符が飛び出し、戦場全体に散らばった。
強化符――彼女が普段、服の下に体に貼っているものと同じ種類。
前線で戦う魔法少女たち全員に符が貼り付き、攻撃力、防御力、速度、反応速度、自動再生……あらゆるパラメータが一気に跳ね上がる。
さらに、攻撃符をコウモリが密集する地点に集中投下。
「爆発~の!」
連続する爆発が巻き起こり、黒煙と共に魔人への道が開かれた。
「……」
楽奈――魔法少女・シャドウは、無言でその隙を突く。
影から影へ転移し、魔人の背後に回り込む。
死神のような巨大な影の鎌が、首を一閃。
「――ふふ、しぶとい。まだ切れる」
即座に再生する首を、冷たい殺意と共に何度も、何度も斬り落とす。
愉快そうに、しかし容赦なく。
いつも響いていた魔人の狂気的な笑い声が途切れ、コウモリの動きが乱れる。
蘇生の間隔が明らかに延びた。
強化された味方小隊の火力が、障壁を薄くしていく。
「偶然だけど、この場に最適な人物が……二ノ宮先輩、お願いしますの~!」
局長は別のカードケースから、小さな紙人を投げ上げる。
「それはそうとも!後輩の頼みなら、拒否する理由なんてないわ!」
これが局長、残桜が現役の原初の魔法少女の中で最も特別な存在たる理由。
『自分の目の前で』死んだ魔法少女の魂を紙人で縛り、魔力で新たな肉体を与える――式神に近いが、確かに擬似蘇生の奇跡。
復活した先輩たちは普段、本部で局長の仕事を手伝ったり、新たな人生を楽しんだり謳歌している。
彼女がずっと変身を解除しないのも、この魔法を維持するためだ。
「この二ノ宮音羽、後輩たちに手を貸すわ!原初の魔法少女・コンダクター、ただいま参上!」
紙人から変化したのは、長い白髪の宝塚系美少女。
モノクロのタキシード姿で、凛々しくバトンを握り、優雅に一礼。
「この私が公演する前に原因を回収するなんて……確かに、私の《音楽の魔法》は多数の対象と相性が良いわね。流石残桜ちゃんの予測、ちっちゃいのに偉いわよ」
「む、ちっちゃいって言うなの!みんなが見てるのに頭撫でないの!それに予測じゃない、ただ先輩が暇だっただけだの!あと、あの公演はまだ3ヶ月後だろうの~!」
局長は符を操りながら、コンダクターに頭を撫でられて頰を膨らませツッコミする。
傍らで葵が、小さな声でオレに尋ねた。
「あの……コンダクターさんって、新都が建つ前に『旧東京の解放戦』で犠牲……亡くなった原初の魔法少女のはずなのに……どうして?」
「まあ、複雑な事情があるんだ。『局長の魔法』って理解してくれればいいよ」
「は、はい……?」
そんなやり取りをしている間に、準備が整った。
「後輩たちよ、せっかくの機会だわ。みんなの固有魔法が精進した極意――『心像共鳴』を見せてあげましょう!」
「ちょ、ちょっと待っての!そこまでする必要ないの!?先輩が使う魔力は全部この自分の魔力だぞ!?」
局長が慌てて止めようとするが、コンダクターは意に介さない。
凛々しい声が、戦場全体に響き渡る。
一瞬、全員の意識を引きつけ、魔物すら動きを止めた。
バトンを高く掲げ、優雅にお辞儀。
「公演、開幕――《廻旋響奏ノ劇場》!」
――世界が変わった。
*
変換された空間は、モノクロの巨大アリーナ。
空中に無数の空白な五線譜が浮かび、観客席にはシルエットだけのミュージシャンが楽器を構えている。
コンダクターは中央の指揮席に立ち、演目が始まった。
当然、魔人勢力だけじゃない、戦場全員が巻き込まれる。
非戦闘員の連絡員たちは五線譜のような環に守られ、安全圏に隔離された。
「うわっ、これは――!?」
「おお、すごい!この感覚、マイスターの頭にアイデアが溢れてくるよ~!」
「こ、これは!」
「また変なことが発生している!?」
みんな、さまざまな反応。
「……ッ!?」
シャドウは、この変化でオレの影から引き出された。
「もう、冷静に戻ったか?」
「……うん。魔人の首を百回くらい斬ったあたりで、冷静になった。ごめん、待機命令を破って勝手に動いた」
「いいよ。あれは因縁のある相手だ、仕方ない」
局長は明らかに不満げ。
「二ノ宮先輩、また自分を目立たせるために必要以上のことするの!誰の魔力を使ってると思ってんの!」
指揮席のコンダクターの声が、空間全体に響く。
「後輩たち、これは固有魔法の極意――『心像共鳴』!周囲の魔力を一気に掌握し、自分の固有魔法と共鳴させて世界を上書きする結界よ。この閉鎖空間では、全ての魔力が思うままに操れ、固有魔法も強化される!魔物の再生を阻害するわ!特に感情が強烈な魔人は我々より速く空気中の魔力を吸収する、けどこの結界なら、相手の回復速度も大幅に減るの!」
音楽の高まりと共に、味方全員がさらに強化。
雷撃、業火、氷の槍、狂嵐――無数の魔法が炸裂し、コウモリを討伐する速度が爆発的に上がる。
倒されたコウモリは、魔石から蘇らず、空中に浮かぶ五線譜の音符に変わった。
「うん、後輩たちやるわね!私も頑張るわ!『アクセント』『三連符』『アレグロ』」
コンダクターは音符を消費し、不可視の音波攻撃を魔人側に叩き込む。
逃げ場のない結界内で、魔人はさらに追い詰められる。
コウモリは音波攻撃で反撃するつもりも沈黙させられ。
「『キャンセル』。演目の途中で静かにしてくれ」
ようやく頭が再生した魔人は、コンダクターや他の魔法少女たちには見えていない――
だが、シャドウには、ずっと見えている。
不気味な声で、魔人が隠せない悪意と共に叫んだ。
「覚えている……覚えているぞ!お前は逃走した67番!汚らわしい実験動物の分際で、よくも飼い主の頭を切り続けたな!お前の逃走で施設は魔物対策局にバレ、97番の破壊で実験記録を燃やされた……全部、お前のせいだ!忠実なる下部たちよ、67番を破壊しろ!」
残されたコウモリが一斉にシャドウへ襲いかかる。
小隊全員が迎撃態勢に入る、が――天から荘厳な音が降り注ぎ、襲来した魔物が地面に叩きつけられ、音符に変わった。
「それはいけないわ!かわいい後輩を実験動物扱いするなんて……お前は調律が必要な雑音ね!」
コンダクターが指揮席から優雅に降り、バトンがレイピアに変化。
圧倒的な気迫を纏い、魔人と直接対峙した。




