第18話・嵐の前の静け・招かれざる客
第18話・嵐の前の静け・招かれざる客
明けましておめでとう、今年の初投稿です。
今年もよろしくお願いいたします。
==========
会議室の鍵を開けると、ファンからの贈り物が山積みになっていた。
「うわ~、めっちゃ多いね……」
小夜が、語彙力ゼロの感想をぽつり。
四つの大きな箱が並び、みんなそれぞれ自分の名札がついた箱を開ける。
「わあ……服とか、かわいいアクセサリーがいっぱい。それに、感謝の手紙もたくさん」
雪菜は、雪の結晶を模した髪飾りを手に取り、そっと自分の黒髪に付けてみる。
「ねえ、お兄さん。この髪飾り、どう?似合うかな?」
「うん、白い雪の結晶が雪菜さんの黒髪に映えて、すごく似合うだよ」
「えへへ……ありがとう」
隣で彩音は、絵の具セットとアート関連の本を広げて目を輝かせる。
「これいいね~!あとでアトリエに……」
「こら、彩音ちゃん。寮に自分の部屋あるだろ、そこに置けよ。あのアトリエはキミだけ使えるけど、あれ一応休憩室なんだから」
「むー、けちー」
奏は彼女の箱からは、本ばかりが出てきた。
一冊を手に取り、彼女の顔がぱっと明るくなる。
「この本……ずっと探してたのに、どこにもなくて……!SNSで書いたこと、覚えててくれたんだ……!ファンの方がわざわざ……!早く感謝の投稿しなきゃ!」
長期間の入院生活で、本とネットが唯一の娯楽だった奏。
今でもSNSで結構なフォロワーを持っている、隠れたインフルエンサーだ。
最後に、楽奈の箱を開けると――中身はお菓子ばかり。
「……なんで、ぼくだけ食べ物ばっかり」
「もしかして、キミがちっちゃいからかな?食べ切れないなら、オレと職員で分けようか?」
少し考えて、楽奈は小さく頷く。
「……食べる」
そして、ふと視線を上げて、ぽつり。
「……そういえば、兄さんの頭の上に、誰か立ってる」
「オレの頭?」
俺が上を見上げるが、何もいない。
「後ろに回って……右、左、まだ頭に登ってる」
楽奈の指示に従ってぐるぐる回るが、やっぱり何も見えない。
騒ぎを聞きつけて、他の四人もこちらを覗き込む。
「あの、お兄さん……楽奈ちゃんは直接会ったことないからわからないかもですけど、その人……局長さんですよ」
雪菜がそう言った瞬間――
「もうー、雪菜ちゃん。こうやって隠れてると、遊びがおしまいになっちゃうじゃないの~」
まるで重力を無視したような動きで、俺の目の前に降り立つ。
太陽と月の紋様が入った巫女服、裸足の幼女――魔物対策局局長、原初の魔法少女・残桜。
彼女は魔法を維持する為に、ずっと変身状態を維持し続け、本名も正体も誰も知らない。
だが、この姿こそが、紛れもない本人だ。
急に上司が現れて、俺は思わず固まる。
「まあまあ、案ずるでないの~。軽くて良いの、暁。とりあえず、外の廊下で話そうか、良いの?」
「は、はい……。みんなは贈り物見ててくれ。オレは局長とちょっと外へ。小夜、走り回らないで」
「もう~、一々言わなくてもわかってるって、おにい~」
俺たちは、宣伝課の外の廊下へ出た。
*
「最近、君の小隊はよくやってるの~。連続のイレギュラー事件の報告書、全部見たの。ちょっと暇だったから、こっちに来たの」
局長は本当に暇なのかな……ドッキリのために、いつからオレの死角に隠れていたんだろう。
しかも靴を脱いで頭の上に立っていたなんて、幸いだったのか不幸だったのか……。
「あれは偶然遭遇しただけです。オレの仕事は報告書を書くことだけ。あの子たちのおかげですから、褒めるなら彼女たちに直接どうぞ」
「まあまあ、正式な場じゃない、堅苦しいのはやめとくの。残桜って呼んで良いの。君ならそう言うと思ってたの~あの子たちに褒めることは後でするから、安心してたまえの。この13区の安全を確認する前に、自分はしばらくこの支部に残るの。あ、そういえば……」
残桜は、ぽかりと口を開け、中からガラス玉のようなものを手のひらに吐き出した。
「てりゃのー!」
「飴が――?」と思った瞬間、彼女は無造作にそれを床に叩きつける。
ガラス玉が粉砕し、一瞬の強烈な閃光が視界を白く染めた。
「うわっ、眩しい!?残桜さん、何を――!」
光が収まると、目の前に――
「ふえぇ――」
ピンク色のフリフリした魔法少女衣装を着た、見たこともない少女が、ぺたんと座り込んでいた。
まさに「魔法少女そのもの」といった、動画キャラみたいな見た目。
「というわけで、この子は君の小隊に任せるの~」
……え?
「いやいやいや!?というわけで、じゃないですよ!?一体何が起こったんですか!?」
混乱する俺に、残桜はニコニコしながら答える。
「フフフッ~びっくりしたの?この子は、自分が来る途中で出会ったの。ちょっと前にこの『13区』で覚醒した野生の魔法少女の。魔物に襲われて覚醒したところを見た、通りすがりの自分が助けたの。まあ、戦闘の最中だったから、呪符で仮封印したの。この巫女服ポケットがないから、口にくわえて保護してただけなの。そうそう、魔物はもう消したから、安心して良いの~」
理屈はわかるけど……気になる点が山ほどある。
「彼女の来歴はわかりました。でも、この13区、まだ魔物が顕現して……イレギュラーの事件は終わってない、が。それに、口にくわえて保護って……そこまでする必要があったんですか?」
残桜は、慌てて手を振る。
「正直、面白いの部分もあるの。でも、一番の理由は、覚醒直後の魔法少女は、魔物より危険なの。固有魔法がわからないだろう?予測不能な魔法が予測不能なことを起こすと、戦いはカオスになるの。さらに、覚醒のトリガーとしての精神衝撃で暴走する危険性もあるの。だから、封印して、口にくわえてたの。自分の身体は頑丈だから、封印が破れても平気なの~」
「理由はわかるけど……面白いの部分があるのが問題ですよ!まだ趣味悪のこと……」
残桜は、胸を張って当然のように言う。
「それはそうともの、長く生きてると、若い精神を保つために面白いことやるのは大事なの!それより……ほら、あの子、混乱から戻ってきたみたいの~」
言われた通り、少女はようやく視界が回復したのか、目の前の一点を凝視して――
「ひいぃ――!うち食べられた人!?」
俺の後ろに隠れ、服をぎゅっと掴む。
だが、すぐに俺だと気づいたらしく、手を離して壁際まで後ずさり。
「ひぃ!知らない人!?服掴んでごめんなさい!」
……なんだか、騒がしい問題児がまた一人、増えてしまった気がする。




