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第14話・嵐の前の静け・番外・陽葵彩音:世界に色を

第14話・嵐の前の静け・番外・陽葵彩音:世界に色を


==========

«これは陽葵彩音の、過去の記憶≫


彩音の過去は、多くの魔法少女と大差ない。

魔物と遭遇し、逃げ場のない絶望の中で――覚醒した。


原初の魔法少女たちの努力によって、世界は少しずつ平和を取り戻してきた。

けれど、魔物は今もなお現れる。


神話や怪談、怪獣映画や小説、色んな要素に影響されて、魔物として姿を現す傾向があることは、皆も知っているよね。


彩音が生まれ育った国も例外ではなかった。

ゾンビ、宇宙人、怪獣――そういった魔物が、人手不足で日常のすぐ隣にいた。


特にゾンビは厄介だ。

弱いくせにしぶとく、噛まれれば同じ存在になる。


そんな環境で育ったからだろうか。

彩音は、死に対してどこか鈍感になっていた。


時が流れ、家族は決断した。

魔物災害が比較的安定している、海の向こう――日本へ移住することを。


ママは前線を退いた元魔法少女だった。

完全ではないけれど、魔物から身を守る力はまだ残っている。

護衛役として同行し、家族は船で日本を目指した。


……けれど、魔物たちは、彩音のことを放ってはくれなかった。



*



あの日は、彩音の十三歳の誕生日だった。


誕生日プレゼントは、パパとママと一緒に行く雪山でのスキー旅行。

彩音はずっとこの日を楽しみにしていて――本当に、心から喜んでいた。


目的地は新都圏内の雪山。

多くの家族連れが訪れ、笑い声があちこちに響いていた。


彩音も、家族と一緒に遊んだ。

楽しくて、あたたかくて、幸せな時間だった。


――その時間は、唐突に終わる。


地面を突き破り、木の根がママの身体を貫いた。


「……っ!?彩音!魔物だ!早く逃げて!変……身……っ!」


「くそ……この怪物め……!」



あれは魔物顕現じゃない、森の中で長い間、魔法によって擬態していたのだ。


ママへの奇襲で、その隠蔽は解除された。

あれは朽ち果てた大樹のような姿をした魔物だった。


魔物は、執拗にママだけを狙う。


長い間、実戦から離れていたママ。

不意打ちによる重傷も重なり、戦況は最悪だった。


パパとママは必死に魔物の注意を引きつけ、その隙に、彩音を逃がそうとした。


けれど――

動きは鈍くとも、この魔物は地中から無数の木の根を伸ばせる。

山全体が、攻撃範囲だった。


いま回想すると、遊ばれてるなって思えば、そうとしか思えない。


わざと致命傷を与えず、

わざと逃げ道を塞ぎ、

わざと――彩音を、パパとママが倒れた場所へと追い立てた。


…………


その光景を目にした後の記憶は、ひどく曖昧だ。


覚えているのは、ママと同じように、木の根に身体を貫かれながら――それでも、変身したこと。


その時の彩音の姿は、今とは違った。

暗い色合いの衣装。

どこか歪で、禍々しい雰囲気。


彩音は、絵で攻撃した。

色を叩きつけ、塗り潰し、上書きする。

受けた傷さえも、顔料で覆い隠し、「無かったこと」にした。


どれほどの時間が経ったのかは、分からない。


自我を取り戻した時、あの憎い魔物は――原型を留めない、現代芸術のような塊になっていた。


山一帯は、黒く、虹色に歪んでいた。


周囲を見渡して、生き残っていたのは――彩音だけ。


「……人って、こんなに簡単に、死んじゃうんだ」


彩音は、絵でパパとママの傷を塗りつぶした。

綺麗なままに戻して、絵で作った棺に、そっと閉じ込めた。


その場に残された他の残骸も、同じように。


やがて魔物対策局が到着し、

彩音は保護された。



*



ママみだいな魔法少女になりたい、だから迷いなく戦闘の道に選んだ。


一年間の心の治療と訓練を経て、彩音は魔物討伐任務に復帰した。


「キミが陽葵さんだね。オレは担当連絡員の天城暁。好きに呼んでいいよ。これからよろしく。どんなことでも、任せてくれ」


それが、暁との出会いだった。


当時の暁は、遊園地事件の生存者。

新人連絡員として研修を終えたばかりだった。


同じ災害の生存者として、彩音と暁には、共通の話題が多かった。


気づけば、彩音はずっと暁に甘えていた、世話された。


やがて、雪菜ちゃんが加わり、奏ちゃん、楽奈ちゃんも仲間になった。


パパとママのことは、今も覚えている。

たくさんの絵を描いて、記憶を保存している。


「絵を描くことで、彩音の“痕跡”はこの世界で残される」


だから――もう、大丈夫。



*



淡々と過去を語り終えた彩音に、最初に声を出したのは、小夜だった。


「……これは一般人の噂には聞いてたけどさ。魔法少女になるって、やっぱり良いことばかりじゃないんだね……」


あまりに壮絶で、言葉が続かなかった。


「あれ?もしかして、彩音の話、分かりづらかった?じゃあ、もう一回――」


「いいえ、もう十分です!」


「ご、ごめんなさい……嫌な記憶、思い出させちゃって……」


その前に、わたしと奏ちゃんが彩音を抱きしめた。


「ずっと友達だから。辛い時は、支えるから」

「そ、そうです……!」

「……うん」


「みんな、ありがとう。でもね、これはもう大丈夫な話だよ」


彩音の声は、いつも通り明るかった。


「もう六年前のことだし。復讐も……ちゃんと、やったから」


「……ほんとに、大丈夫?」


「うん!だからさ、みんな席に戻って。次は奏ちゃんだよ、次!」


突然名前を呼ばれ、奏が跳ねる。


「わ、わたくしですか!?……うん、分かりました」


皆が席に戻り、奏の物語が始まる。

==========


陽葵彩音

魔力と共鳴した願いは「この狂った世界を自分で塗り替える」から「この世界に、自分の痕跡を残す」へと変化。魔法出力は低下したが、精神は安定された。


→《絵の魔法》応用範囲が広く、状況対応力の高い万能型。顔料のみ魔力消費、絵として成立しない場合はただの顔料。


→覚醒時に暴走したが、危険域を越える直前で戦闘終了。 復讐を果たしたことで精神が安定。


→当時、雪菜はまだ訓練中。彩音は暁の最初のパートナー


→心像投影の杖は槍のような水彩筆。性格もそれを反応する、ふわふわ、天然、幼く見える。しかし直感が鋭く、嘘は通じない。時折、腹黒い一面を覗かせる――顔料のように、多面的な少女

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