第13話・嵐の前の静け・ティーパーティー
第13話・嵐の前の静け・ティーパーティー
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「……やっぱり、自分の家がいちばん落ち着くな」
連続任務を終え、深夜。
ようやく帰宅できたオレは、白い湯気に包まれた浴室で思わず独り言を漏らした。
湯船で肩まで浸かりながら、張りつめていた神経がゆっくりほどけていく。
「こらー、何を言ってるのおにい~。早く来て、アタシの髪洗ってよ」
「はいはい……たまには自分で洗え」
浴室の椅子に座る小夜は、当然のように顎を突き出す。
「やだ~。長いし面倒だし。だからこの重要任務は~おにいに任せるの!」
「……重要任務ね」
仕方なく湯船を出て、シャワーを手に取る。
「流すぞ。目、閉じろ」
「はーい」
泡を洗い流していると、今度は小夜が背後に回り、ぐいっとオレを椅子に押し戻した。
「お返し~。おにいの背中、洗ってあげる」
「なっ……!?お前がそんな殊勝なことを?ほんとにオレの妹なの!?」
「失礼ね!黙って受けなさい!」
ごしごしと遠慮のない力。
「痛い!爪、爪が刺さってる!」
「ムハハ~。これは失礼の罰だよ」
「こらっ――」
騒ぎながら二人で湯船に沈む。
湯の中で、小夜がふと静かになり、背中を預けてきた。
「……ねえ、おにい」
「なんだ」
「明日さ。おにいの小隊、全員休養日でしょ。アタシも学校休みだし……雪菜ねえが、みんなでメイン娯楽室でお茶会しようって」
「そうか。でも無関係者のおまえ、勝手に支部入るなよ」
「だいじょーぶ。雪菜ねえと一緒に行くから」
「……ならいい」
小夜はむっと頬を膨らませる。
「アタシ、もう子供じゃないし」
「はいはい」
頭を撫でると、不満そうにしつつも抵抗しなかった。
こうして、久しぶりに静かな家族の時間が流れた。
*
――目が覚める。
だが、そこは自分の部屋ではなかった。
灰色の石床。
宙に浮かぶ無数の本棚。
金と青の焔が、わずかな光源として漂う。
果ての見えない暗闇。
だが、不思議と視界は利く。
「……図書館?いや、オレは確か……家で寝たはず……」
混乱しても意味はない。
オレは歩き出す。
本棚の書物は、見たこともない文字で綴られている。
読むことはできない。
ただ、進む。
足音だけが、この空間に自分が存在する証。
どれほど歩いたか――
「……キミは、人間?」
背後から、低く凛とした声。
「どうして我が図書館に入れる?……これは、想定外だな」
「っ!?誰だ!」
拘束される感覚。
声は幼く、だが圧倒的に傲慢で、格が違う。
「振り返るのはまだ。認識外の知識は、狂気を呼ぶからね……よし、遮断完了。もういい」
拘束が解ける。
「危ないこと言うなよ……」
恐る恐る振り返る。
そこにいたのは、ゴシックロリータ風の衣装を纏った少女。
輝く銀髪、金色の縦瞳。
黒曜石の角、夜空のような翼と尾。
――終⬛⬛⬛災 N⬛.1⬛ 境⬛⬛⬛龍 ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛
霧のようなノイズと共に、理解不能な情報が頭に流れ込む、わかるのはこれだけ。
「っ……!」
少女の指が額に触れ、痛みが消えた。
「問題なし、だな」
「……キミは?」
「『真龍』、詳しいことはキミが別の真龍と遭遇して生存する後で説明する。真名は教えない。今は――『フェリー』と呼ぶといい。」
目の前の少女『フェリー』に自称するはの『真龍』、でもこんなに理性と智慧あるの魔物が?そして、人形に......
本棚から本が飛び、テーブルと椅子は本の中から出せた。
「戦う気はない。目覚める前に、ティーパーティーで少し話をしよう。ね、天城暁。」
「……なぜ、オレの名前を?」
「観察しているだけだよ」
差し出された紅茶は、香りだけで心を落ち着かせる。
「いい香り......でも、ここは図書館だよな、良いのか?」
「ここは我の世界。そんな規則などない」
一口飲むと、不安が薄れていく。
「……君は魔物、なのか?」
「そう理解して構わない。だが我は戦よりも、智慧に興味がある。だから、ここで世界を眺めている、本を作る。」
クッキーを口にし、穏やかに微笑む。
「魔物の中に智慧があるものが少ないから、あまり興味を喚起できない。それより、人間の話を聞かせてほしい、いまの人間の生活が知りたいです。特に――キミのことだ」
凛々しい顔するけど、その目がキラキラして、噓偽りがなさそうです。
「なら、最近の任務の事はどう?」
「それは良いです、教えてください。」
「なら、始めからしよう」
こうして、オレはフェリーと語り合った。
フェリーは聞き上手、反応が良い、理性賢明で博学な、オレは言う間違えたことに訂正してくれる。
時間の感覚が溶けるほど、心地よく。
「……そろそろだ」
「なにが?」
「明日の夜、楽しみする」
頬に触れられ、意識が途切れる。
*
他の誰もいない図書館で、フェリーは独り言ちる。
「時を越えた干渉……『未来の我』の仕業か、我とあの人間との出会いを早めること」
静かに、しかし重く。
「観測したよ。キミはあの人間とどうな絆が作ったのは知らない、けど」
「あの人間が『灰』に殺したことを知りましたと、キミが――戦いを嫌う我が、復讐で『灰』を殺す、その未来を見ました」
「無念と憎悪を抱き、その『灰』に囚われた魂を解放するために……」
「その未来は、まだ遠い。だが最善へ至るには、準備が必要だ」
静寂が、再び図書館を満たす。
*
「起きて!おにい!……えいっ!」
腹への衝撃で目が覚める。
「ぐっ!?なにする!」
「寝坊は説教するくせに、自分はいいの?」
時計を見て、跳ね起きる。
「助かった。お礼に、帰りに小遣いやる」
「やったー!いってらっしゃー!」
夢の内容は、もう思い出せなかった。
*
「……今日は、集まってくれてありがとう」
メイン娯楽室。
わたし――星野雪菜が声をかけると、みんながそれぞれ頷いてくれた。
本当は、ただのお茶会のつもりだった。
甘いお菓子と、他愛ない雑談。
それだけで十分なはずなのに――
最初は近況の話だった。
任務の疲れ、最近の流行、どうでもいい笑い話。
けれど、気づけば――
話題は、あの人のことへ流れていた。
「……みんなは、お兄さんのこと……どう思ってる?」
自分でも驚くほど、まっすぐな問いだった。
「わたしは……幼なじみとして、大切な人。ずっと前から、変わらないよ」
言葉にしてしまうと、少し胸が苦しくなる。
でも、これは良い機会だ、今は――みんなの気持ちを知りたかった。
最初に答えたのは、彩音。
「はいはーい!彩音のこと、ちゃんと見てくれてる人。優しくて、彩音のこと放っておかない人だね~」
いつもの軽やかな笑顔。
でも、その言葉には、確かな実感がこもっている。
次に、奏ちゃん。
「あの……わたくしにとっては……危ない時に、手を引いてくれた人。……ヒーロー、みたいな……」
言い終わる頃には、頬が赤くなっていた。
楽奈ちゃんは、少し間を置いてから。
「……名前をくれた。信頼できる人」
短い。
けれど、彼女らしい、重みのある答え。
最後に、小夜ちゃん。
「それ、聞く?アタシにとってはおにいはおにいだ。家族だし、妹として一生絡むだけ~」
軽く笑って、肩をすくめる。
でも――それだけじゃないって、わたしにはわかる
彩音がぱっと顔を上げる。
「みんなの答え、それぞれの『過去』と、ちゃんと繋がってる気がするね!」
彩音いつも通り、自然とそう口に言った。
「そういえば……みんなが『覚醒』した時の話、ちゃんとは聞いたことないよね」
「いいね、それ。せっかくだし、過去の話しよっか!」
(……そうだね)
みんなのことを知るほど、この小隊は、もっと強くなれる。
「じゃあ……最初は、わたしから――それは遊園地で……」
そう言いかけた瞬間。
「あ、雪菜ちゃんなら大丈夫。何回も聞いたし~」
「あ、あの……わたくしも、そう思います……」
「……うん」
「アタシも~」
「……みんな、なんで?」
思わず苦笑してしまう。
(わたし、そんなに語り部みたい?)
「じゃあ、提案した彩音からね!」
そう言うと、自然と視線が彩音へ集まる。
「えへん~。じゃあ、彩音の覚醒の話からね!」
わたしはカップを手に取り、彼女の物語りを聞く。




