第10話・火と雷の奇襲・事後処理
第10話・火と雷の奇襲・事後処理
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みんなの奮闘によって、今回の任務は無事に終了した。
オレはすぐに魔物対策局へ状況を報告する。
ここは支部からも近い。
事後処理部隊は、もう間もなく到着するだろう。
ただし――戦場となったのは地下街だ。
周囲を見渡せば、破壊された店舗がいくつも連なり、幸いにも街の設備はギリギリ無事だが、復旧には大工事が必要になる。
特に被害が大きいのは、マイスターが描いた『水』によるものだ。
あれは魔力で構成された擬似物質のため、物理的な干渉が困難で、広範囲にわたって激流による破壊をもたらしている。
……後始末は、専門の事後処理部隊に任せるとしよう。
「みんな、保有魔力の状態はどう?精神状態はまだ安定してる?変身解除は、事後処理部隊が到着して周囲を封鎖してからでお願いします」
まずは、彼女たちの状態確認が最優先だ。
三人を一度集め、順番に確認する。
今回の戦闘は三人の連携が取れていた分、魔力消費も分散されている。
昨晩の雪菜ほど深刻な暴走状態ではない。
目立った異常行動も、今のところ見られない。
「わたしは……まだ大丈夫そう。魔力は、だいたい半分くらいかな」
彩音=マイスターが、自分の感覚を確かめるように答える。
「今回の魔力低下は、たぶん『集中力の低下』。だから、さっきの不意打ちに気づけなかった……うぅ、悔しい」
あの一瞬が、相当引っかかっているらしい。
「……ぼくも、たぶん平気。ただ、感情が揺れて、いつもより強い動揺するかも」
楽奈=シャドウが続ける。
「……自分じゃ回復できないから。兄さんに、あとで魔力供給は必要、かな」
なるほど。
さっき珍しく大声を出していたのは、その影響か。
最後は――奏=フラン。
「……」
順番なのに、彼女だけ反応が遅い。
どこか、ぼんやりしている。
「どうしたの、フラン?」
声をかけて、ようやく気づいたように肩を揺らす。
「わ、わたくしは……ぜんぜん平気、ですよ~?あはは……」
明らかな嘘だった。
棒読みで、不自然な笑顔。誰が見ても分かる。
「奏ちゃん、まさか……いつもの強がり?魔力低下を我慢して、自然回復を待つつもり?」
彼女の過去の影響で、人に迷惑をかけるのを極端に嫌う。
だからこそ、自分を無理してでも隠そうとする。
オレは彼女の肩に手を置き、しゃがんで視線を合わせた。
「大丈夫。みんなの世話をするのは、連絡員の仕事だ。迷惑なんて思わないから……正直に言って」
「い、いえ……ほんとうに……だい、じょうぶ……です……ふぁ」
近くで見ると、はっきり分かる。
呼吸は荒って、顔は赤く、瞳が潤んでいる。
これはヤバいかも――次の瞬間。
視界が反転した。
「っ!?」
気づいた時には、オレは地面に倒され、フランが腹の上に跨がる形になっていた。
「え……なにが……起きた?」
至近距離。
視野範囲で全てはフランの顔に埋めった、上から見下ろすの視線は、どこか危うい。
「わたくし……ずっと、我慢してたんです……全部、暁お兄ちゃんのせい……よ」
「ちょ、待ってフラン!正気に戻れ!!」
危険を察して抵抗しようとするが、一般人の力で魔法少女に敵うはずもない。
「えいっ!」
「痛っ!?なにするの、マイスターちゃん!いいところだったのに!」
背後から、彩音が水彩筆槍の柄でフランの頭を軽く叩いた。
「フランちゃん、さすがにここはやりすぎだと思うよ。支部内なら止まらないけど、ここは外ですよ。«祈りの魔法»は万能ですが、魔力の使いは制御不能の魔法だよね。たぶんだけど――さっきの戦闘で、障壁維持に騎士の召喚と強化、魔力を一気に使いすぎたんじゃない?」
「……うん。ぼくも、そう思う」
楽奈も静かに頷く。
「魔力低下で『自制心』が落ちてる、たぶんそれ」
「え……?わたくし、なにもおかしなこと……あ」
ようやく自我に返ったフランは、自分が何をしていたか理解した瞬間、顔を真っ赤にした。
「ご、ごめんなさい!!!」
慌てて立ち上がり、オレにも手を貸してくれる。
オレは身体についた埃を払いながら、苦笑した。
「大丈夫。気にしてないよ。でも……やっぱり精神状態、かなり不安定だ」
「はい……本当は我慢して、こっそり寮に戻ってベッドで休むつもりでした……なのに……」
前と別の意味で、顔が赤くなる。
「まあ、キミのせいじゃない。ちゃんと回復するから、今は大人しくしてよう」
「……はい。おとなしく、します……」
「まあまあ、ドンマイ!」
「……普段考えてることが、行動に出ただけ」
「うぅ……からかうの、やめて……」
少しドキッとはしたが、三人とも普段の雰囲気に戻ってきた。
オレも、ひとまず胸を撫で下ろす。
(前に娯楽室で見た、連絡員が担当魔法少女に囲まれてた修羅場……ああならなくて本当に良かった。彩音が止めてくれて助かった)
彩音がこちらをちらりと見て、親指を立ててウインクする。
*
「魔法少女の皆様、連絡員様。討伐、お疲れ様でした」
事後処理部隊が到着する。
「これより後は、我々にお任せください。周囲の封鎖は完了しています。安心して、変身解除していただいて結構です」
「了解です!変!身!解!除!」
彩音が元気よくポーズを決め、背後に魔法で虹色の光を散らしてながら変身を解除する。
「おお、かっこいい。彩音さん、今回のMVPだよ。浪の絵で魔物の火を消した、見事だった」
「でしょでしょ~!もっと褒めてもいいんだよ~?頭、撫でちゃう?」
ぐいっと距離を詰めてくる、その頭を撫でる、スラスラの金髪は心地良い感触。
「……疲れた」
いつの間にか、シャドウも楽奈に戻り、猫のようにオレの背中にもたれてくる。
「はいはい、お疲れ様。敵の注意を引いてくれて助かったよ」
軽く暗示を乗せて、顎を撫でる。
「……集中、集中……」
最後に、奏。
目を閉じ、深呼吸を繰り返して――
「……はあ……変身、解除しました」
「お疲れ様。……今は、近くにいて大丈夫?」
「い、今は……だいじょうぶ、です……たぶん」
自信なさげに差し出された手。
オレは、迷わずそれを握った。
「じゃあ、みんな支部で帰ろう」
「「「はい」」」




