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荒川斎場雪の間1・2・3  作者: 土御門惟愛


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4/7

第4話

通夜前日の夜、20時半。

新宿区落合の路地裏にある、落合葬儀社の社員がよく利用する安い居酒屋「やきとり たかや」

カウンターの端に3人の男が並んで座っていた。

左から順に——

渡部健一

汗を拭きながらジョッキを傾け、すでに3杯目。

佐藤修二

穏やかな笑顔で枝豆をつまみながら、表面上はのんびりしている。

上原順平

無言でビールをちびちび飲み、ほとんど口を開かない。

渡部が先に口火を切った。

「……今日もまいったよ~

 うちの会社、なんで毎日こんな案件ばっかり回ってくるんだろな……」

佐藤が柔らかく笑って答える。

「まあまあ……なんとかなるよ〜。

 ……ただ、明日ばかりはね……。

ヤバい案件が入っちゃってねぇ……

光明の道って知ってる? あの、ガンガン太鼓叩くやつ……。

故人が信者でね……。夫の喪主は仏式で荒川斎場でやるって聞かないんだよ……」

渡部がジョッキを置いて顔をしかめた。

「は? お前も明日荒川かよ……

俺なんか、彫り師の葬儀でヤクザが大量に来るかもしれないんだけど……

高橋(上司)に『東都系は阻止しろ!』って怒鳴られたけど……、阻止なんかできるわけね~じゃん!」

佐藤が目を丸くする。

「そうだよな〜……

こっちも喪主が『絶対に信者は来させない』って言うから……

でも信者って突然来るだろ?」

2人が同時にため息をついた。

上原だけが無言でビールを一口飲む。

渡部がチラッと上原を見て、軽く肘で突いた。

「おい、上原。お前はどうなんだよ?」

上原はジョッキをゆっくり置いて、低い声で一言だけ。

「……遺産争いだ」

それだけ言って、再び黙ってビールを飲む。

渡部と佐藤が同時に上原を見た。

「……は?」

「……え〜?」

上原は天井を仰いで小さく息を吐いた。

「……後妻と連れ子の次女が、

 故人の実の娘の長女を絶縁状態にして、父親の死さえ知らせてなかったんだ。

 昨日長女の夫から電話が来て……

 『血のつながった娘としてその葬儀は認められない』って……」

店内に少しの間、沈黙が落ちた。

「それで?斎場どこなんだよ?」

「……荒川」

渡部が頭を抱える。

「……おいおい……

俺はヤクザ、佐藤は新興宗教、お前は遺産争い……

落合葬儀社、荒川で三重苦じゃね~か~……。式場は?」

佐藤「雪3」

上原「雪1」

渡部「俺、雪2だぜ~、隣どうしで、しかもうち真ん中に挟めれてるじゃ~ん……」

佐藤が苦笑しながらジョッキを掲げた。

「まあまあ……なんとかなるよ……

 ……多分……」

上原は無言で自分のジョッキを軽く上げ、

ただ一言だけ呟いた。

「……長い一日になりそうだ」



お読みいただきありがとうございます。


今回はブラックユーモアたっぷりに “葬儀という聖域” でのドタバタコメディーを書いてみました。

いよいよ修羅場と化す通夜の日が近づいてきました。

全7話の短いお話です。

お付き合いいただけましたら幸いです。


18時頃に毎日投稿したいと思っております。

よろしくお願いいたします。

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