Verse 5: 銀の弾丸
Verse 5: 銀の弾丸
Phase/ウィンクルレイン・メルクリオ
「カナリア、窓から顔出したらダメだって。
頭が吹っ飛んでも知らないぞ」
「遠方の線路上に何かが在ります。ウィル」
次にカナリアが発した言葉に、俺は耳を疑った。
「あれは──クリオネです」
「…………なんだって?」
「クリオネです。ウィル。
間違いはありません」
俺も車窓から外へ身を乗り出し、レールの先に目を凝らした。
遠目に浮かぶ灰色のシルエットへ徐々にピントが合わさり、その姿が明らかになる。
逆さに吊るされ、腕を切り落とされた人魚のような風体。
流線型の外表に、腰部から下方へと突き出されたバッカルコーン。
頭部に取り付けられた巨大な単眼状のアイセンサー。
高架線上に浮遊していたのは紛れもなく、俺がいつか資料映像で見た通りの監視者の姿だった。
あり得ない。
今まであいつらが下に降りてきた話なんて、俺は一度だって聞いたことがない。
ましてや、よりにもよって列車が通過する線路上に?
「……カナリア。
この列車とクリオネとの距離はわかるか?」
カナリアはその言葉に即座に応じた。
虹彩の奥で微細な光の粒子が回転を始め、内部で演算処理が行われている様子だ。
「対象との距離はおよそ3,000メートル。
現行の速度で走行を続ければ、約240秒後に衝突します」
「──くそ……ッ!」
俺はすぐさま先頭車両の制御室へと走り出す。
背後からはしっかりとカナリアも付いてきていた。
制御室にいる監督員も、異変には気づいているはずだ。
とっくに緊急停止を試みていてもおかしくはない。
けれど、列車の速度が落とされる様子はまるでなかった。
客室を通り抜けて制御室へ辿り着き、強引に扉を開く。
制御室の内部は客室よりもずっと狭く、壁面の計器には異常表示が走っていた。
先程の俺達の横を通り抜けていった運行監督員が、蒼白な表情で非常制動レバーを握り締めている。
「おいあんた、一体どうなってる!」
「わ、わからない!
さっきから手動制御に切り替えて減速させようとしてるのに、言うこと聞かないんだよ!
あぁ、畜生畜生畜生、非常信号だって通じやしない!
ど、どうなってるかなんてこっちが聞きたいよぉ!」
監督員は半ばパニックに陥りながら状況を捲し立てた。
「……そんな馬鹿な」
列車は依然として直進を続けている。
この状況で思考を停止させることは、黙って死を受け入れることと同義だ。
思考を止めるな。
考えろ……考えろ。
衝突までの僅かな時間で、まずすべきことは──
「──カナリア!」
客室と制御室の間の連結部からこちらを覗いているカナリアへ向けて、声を張り上げた。
「乗客達に『列車の走行システムに不具合が出ている』と伝えてくれ!
後方車両へ向かって移動するよう、出来るだけ落ち着かせながら誘導してほしい!
頼めるか!」
「承知しました。ウィル」
カナリアはそう一言返事を返すと、後方車両へ踵を返した。
ほどなくして彼女の声が聴こえてくる。
「現在、列車の走行システムに小さな異常が確認されました。
安全のため、速やかに後尾車両への移動をお願い致します。
移動が終わりましたら、お近くの──」
彼女は俺の意図を察して上手くやってくれている。
それなら次は、俺が出来ることをやらなくては。
「うぅーッ、駄目だ……!
何度やっても緊急制動が入らない!
センサーは反応してるのに、どうして噛んでくれないんだよぉ!」
取り乱した運行監督員は、誰に言うともなくそう叫んだ。
「あれクリオネだよなっ!?
なあ! なんでこんな……ッ」
「俺がなんとかしてみるから、落ち着いてくれ。
あんたはそのまま非常信号を打ち続けるんだ」
「あ、ああ……っ。
あ? そういやあんた、一体──」
俺は監督員が言い終わるより先に制御室側部のハッチを蹴り開けた。
そのまま列車の外装を伝って屋根に飛び乗った。
遠くのレール上に浮かんでいたクリオネの姿が、先程よりもその存在感を増していた。
「……ッ。
冗談じゃない」
まだ随分と距離があるはずなのに、その異様な造形も相まって想像していたより遥かに巨大に感じられる。
あんなものに突っ込んだら、間違いなく車両もろとも木っ端微塵だ。
吹き荒れる煤混じりの風の中、焦燥を握り潰すように黒革の手袋を深く嵌め直した。
ぎちり、と革が鳴る。
重心を低く構え、フェイズで生成した銀鎖のアンカーを屋根の装甲板に叩きつけるようにして打ち込む。
装甲板を穿つ火花と共に、銀の楔が俺の身体を列車に繋ぎ止めた。
落ち着け。
いつも通り、冷静に、正確に。
自分に言い聞かせるように頭の中で呟き、意識を研ぎ澄ませる。
俺は屋根に片手をつき、列車の構造を思い浮かべた。
車両側部、その少し下──
──車輪の横を覆う装甲板……。
思い描いた箇所にイメージを固定して力を込める。
手のひらを伝って車体に含まれたフェイズ粒子が呼応し、両車輪の装甲板を起点に、下方へ複数のブレーキロッドが生成されていく。
そして、ロッドが地面に触れた瞬間──
──ギッギャリギャリギャリギャリッ!!!!
金属が削れ合い、耳を劈く悲鳴のような摩擦音が鳴り響く。
車体が小刻みに震え、周囲に蒼白い火花を散らしながらロッドが削れ散っていく。
摩耗した端から次々に追生成していくも、鋼鉄に覆われた超重量列車の質量を止めるにはまるで至らない。
「く、そ……こんなのじゃ悪戯に精神を消耗するだけか……。
今回ばかりは、このやたら馬力のある列車の設計者を恨みたくなるな……」
……もっと銀の強度を上げ──……いや駄目だ。
列車よりもレールが耐えられない。
最悪そのまま脱線だってあり得る。
──なら車両と線路を鎖で直接繋いで止めるか?
いや、それも駄目だ。
前方車両を急停止させれば後続車両が突っ込んでくる。
もっと別の方法だ。
一箇所だけじゃない、列車全体へ均等に制動をかける方法は──
俺の脳内で分泌されたノルアドレナリンが思考を加速させ、鋼鉄の棺桶と化した列車を止めるための方策が浮かんでは消えていく。
確実なのは、もはや自分の消耗を気にして出し惜しみができる状況ではないと言うことだけだ。
「──だったら」
屋根に両の手のひらを置く。
意識を再集中し、銀の性質を緩めるイメージを構築する。
銀は瞬時に液状へと姿を変え、水銀のように流動した。
車輪を駆動させているドライブシャフトとメインロッドへ滑り込ませた銀は、複雑な機構の隙間を縫うように絡みついていく。
更に、そのまま銀は後部車両にまで及んだ。
そして、一息に手のひらを握り込む。
「──ふぅ……ッ!」
車両の側部を覆った大量の水銀が瞬時に硬化した。
鈍く重い破砕音が車両の底から突き上がり、列車全体が前方へ引きずられるような激しい衝撃に見舞われる。
それに混じり、足元からは監督員の絶叫が聞こえた。
固めた銀の一部が砕けて散らばっていく。
列車の速度が目に見えて落ち始めた。
だが、車輪の駆動を完全に止めるには至っていない。
速度は落ちたものの、列車は停止を拒むかのように前進を続けている。
──ああ、畜生、頭が、割れそうだ。
頭の芯から重く鈍い痛みが、吐き気と一緒に迫り上がってくる。
「まだ……足りないって……?」
……これだけの負荷をかけても、車輪の駆動が止まらないなんてことが物理的にあり得るのか?
これじゃあまるで、列車そのものが明確な意志を持って強引に進み続けようとしているみたいじゃないか。
「こ、の……ッ」
ここで力を緩めるわけにはいかない。
俺は奥歯を噛み締め、もう一度強くイメージを描く。
砕け散った銀を補うように新たな水銀を流し込み、砕けた箇所を包み込む。
「止、ま、れぇぇぇええええ──ッ!!!!」
再び水銀が硬化し、更に激しい破砕音が鳴り響く。
車輪が甲高い悲鳴を上げながらレールの上を滑り、振動によって視界が細かく揺さぶられる。
金属片と、摩擦によって生じた黒煙が列車の両脇から尾を引いて散っていく。
…………やがて、列車は完全に停止し、金属の軋む音がその場に残った。
列車の駆動部からは、焼けた金属と焦げた油の匂いを伴う黒煙が細く立ち昇っていた。
「はぁ……はぁ……どうだ、この……っ。
……はっ、あー、畜生……。
なんだってんだ……」
肩で大きく息を切らしながら、ゆっくりと顔を上げる。
クリオネは数百メートル先で、変わらずその体躯を線路上に浮かせていた。
「もう、どっか、行けよ……。
一つ目野郎……」
そう吐き捨てて、力の入りきらない腕でクリオネに中指を立てる。
いい加減フェイジングを解いて、その場に寝転んでやろうと腕を下ろす。
頭は割れそうに痛むし、もう身体を動かすことすら億劫だ。
けど、ようやく終わった……。
そう安堵した、次の瞬間だった。
ぎしり、と何かが大きく軋む音がした。
空耳か……?
いや、違う。
弾かれるように顔を上げると、今まで微動だにしなかったクリオネの胴体が軋みを上げていた。
アイセンサーの付いた半身を異様に反らしながら、ゆっくりとこちらに向けて突き出す。
そして、六本のバッカルコーンを節足動物の脚のように広げ、高架線を左右から挟み込んだ。
クリオネの青ざめていたアイセンサーが、真っ赤に染まる。
「…………おい嘘だろ、怒ったのか?」
それはまるで、巨大な蜘蛛を思わせる姿だった。
その蜘蛛は、観察でもするかのようにこちらを覗き込む。
クリオネのアイセンサーと目が合った、その瞬間。
心臓を鷲掴みにされたような感覚が俺を襲った。
「……ッ!?」
理屈では説明のつかない、抗い難い冷たい何かが身体の底から這い上がってくる。
何故だか目を逸らすことも出来ず、次第に関節の一つ一つが硬直していくのが感じられた。
「くそ、なん、だよ……身体、が……ッ」
頬からは冷や汗が伝い落ち、思考が上手く定まらない。
「落ち着け……落ち着け……。
あんな一つ目に、ビビってんのか? ウィル」
自らを奮い立たせるための虚勢も虚しく、身体の自由と思考力は奪われ続ける。
「あんなの……ただの、機械、だろ。
いや、蜘蛛か……。
ああ? 何、言ってんだよ。
あー……でかい、蜘蛛……?
……なんだっけ、それ」
混濁した思考が、次から次へと口から零れだす。
呼吸は次第に浅くなり、指先ひとつ動かすことさえ億劫に感じられた。
すると、高架線を挟み込んでいた脚の一本が離れた。
その脚をゆっくりと前方へ踏み出し、クリオネの巨体が動き出した。
蜘蛛が捕らえた獲物を捕食しようとするかのように、ぎち、ぎち、とこちらへ這ってくる。
一本、また一本。
クリオネの脚が高架線に食い込む。
その度に、クリオネの這う速度が少しずつ増していく。
高架線を覆う外板はその膂力に耐えきれず、クリオネの這った後から剥がれ落ちていく。
逃げろ。
逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。
頭のどこかで、本能が警鐘を鳴らしている。
だが、その訴えは硬直した身体には届かない。
世界が色を失い、灰色の視界の中で赤色の瞳が浮いている。
未だ俺の眼差しは、クリオネの瞳に吸い込まれるように釘付けになっていた。
「……ィル──」
…………何かが聴こえる。
「──ィ……ル。
……ウィ……ル──」
……どこかから、場違いなほどに澄んだ声が、聴こえる──
「──ウィンクルレイン・メルクリオ」
意識の外からの呼び声に、はっと我に返った。
その瞬間、灰色に揺れていた視界が再び色を取り戻す。
声の方へ顔を向けると、足元からカナリアがひょっこりと顔を覗かせていた。
「乗客の避難誘導は完了しました。ウィル。
ですが、先程とは姿を変化させたクリオネがこちらへ接近しています。
このままでは、約90秒後に対象と接触します」
カナリアは迫りくるクリオネに顔を向けながら、いつもの調子で淡々と状況を説明した。
その事も無げな彼女の様子が、俺の混乱した頭を落ち着かせてくれた。
気がつけば、既に全身の硬直も解けていた。
「ああ、意外と短気な奴だったらしい。
……ありがとう、カナリア」
「どうするのですか?」
「撃ち抜く。
あいつを、直接な」
「クリオネの胸部、及び腹部中央にモナドコアの反応があります。
対象部位付近に強い衝撃を与えてしまえば、誘爆の可能性が考えられます」
……くそ。
なにが『あいつら自体に害はない』だ。
ついさっき自分でカナリアに言い放った言葉に対し、胸の内で毒づいた。
カナリアの分析通りなら、あそこにいるのは監視者なんかじゃなく、ブロックを丸ごと消し飛ばしかねないほど強力な誘導爆弾だ。
腰の後ろのホルスターの留め具を弾き、そこから二丁のハンドガンを取り出す。
鈍痛の残る頭で再びイメージを強く描きながら、両の銃を胸の前で勢いよく叩き合わせる。
音と共に青白い火花が散る。
二丁の銃は一瞬にして、鈍銀色の光沢を放つ長銃に組み変わった。
続けて右手を開き、もう一つの像を描く。
手の中に銀色の粒子が凝集し、一発の弾丸へと形を変えていく。
通常の弾丸よりも遥かに質量を持った、銀の徹甲弾。
弾丸を薬室へ押し込みボルトを閉じる。
その場に腰を下ろし、片膝を立てる。
膝に回した腕を銃架代わりにして銃身を預け、狙撃姿勢を取った。
迫るクリオネの体躯をアイアンサイト越しに睨めつける。
「……いや、カナリア。
あいつを高架線上から退かすだけでいい。
銃の口径は13mm。
弾丸は銀を高密度に圧縮して創ったAP仕様だ。
どこを狙えばいい?
バランスを崩せる急所は分析できるか?」
カナリアは軽々と屋根の上に飛び乗ると、素早く俺の傍へ駆け寄り、膝をついた。
そっと俺の身体に手を添え、正面を真っ直ぐに見据える。
そして、その虹彩に再び淡い思考の光を灯した。
「──向かって右側。
中央バッカルコーン内部に、推力供給用の導管が通っている筈です」
「手前から二番目の右脚ってことだな」
「はい。
中央バッカルコーン、関節部──」
集中と共に周囲の雑音は遠ざかり、カナリアの声だけが俺の耳に鮮明に響く。
「──照準、右、40mm。
上、60mm。
右、10mm修正──」
彼女の言葉をなぞるように照準を定めていく。
「──そのまま。
照準を維持してください。
多少の誤差はこちらで修正可能です。
トリガーのタイミングを指示します」
ありがたい。
正直今の消耗具合じゃ、あの這い回る脚をピンポイントで打ち抜けるかは怪しいところだ。
高架線を破壊しながら、クリオネが這い寄る。
銃口の向こうで、巨大な蜘蛛が刻一刻と大きさを増していく。
その脚が高架線を噛む音が、今や腹の底まで響いていた。
ついに、その巨体が目と鼻の先まで迫った──
「──……今」
カナリアの言葉が切れると同時にトリガーを絞る。
金属にハンマーを打ち下ろしたような独特な銃声の直後、乾いた着弾音が響いた。
──数瞬の沈黙後、穿たれた装甲の弾孔から、高温の圧縮蒸気が堰を切ったように漏れ吹き出す。
側面からの急激な噴流によって、クリオネの体躯は断末魔のように軋みをあげて傾き始めた。
そして、高架線の脇へ、スローモーションのように傾倒していく。
しかし、傾倒していくクリオネの脚の一本が、大きくその軌道を変えた。
それはまるで死神の鎌のように、俺達に向けて横薙ぎに迫る。
「──伏せろ、カナリア!」
俺は咄嗟にカナリアの身体を引き寄せ、その上に覆い被さった。
そして、残った精神力の残滓を振り絞り、屋根についた片腕に込める。
「いい加減しつっこいんだよッ!」
直後、高架線上から迫り上がった巨大な銀の柱が、迫る脚を真下から打ち上げた。
爆発にも似た凄まじい衝突音と摩擦音。
眼前で激しく火花が弾けて降り注ぐ。
脚の軌道が僅かに上方へ逸れた。
死神の鎌が風を切り裂きながら俺達の頭上のすれすれを掠めていく。
そして、クリオネの身体は完全にバランスを失い、高架線の縁から身を投げ出した。
刹那、あの赤い眼球が再びこちらをじろり、と一瞥したように見えた。
俺はクリオネの姿を目で追った。
真っ逆さまに落下していくクリオネは、空中でバッカルコーンから推力を噴射し、身を翻す。
一本分の揚力を失ったにも関わらず、器用に身を揺らしながらバランスを取っている。
クリオネはそのまま緩やかに高架線直下の地面へ不時着すると、ようやくその不気味な瞳から光を消した。
◆◇◆◇◆◇
後部車両から乗客が続々と降り出してきている。
その中には、すっかり憔悴しきったあの監督員の姿もあった。
何人かの怪我人は見受けられるものの、比較的乗客が少なかったことも幸いし、人死にまでは出なかったようだ。
遠方の空には、おそらく政府のものと思われる数隻の飛行船の姿が薄っすらと見えた。
「あー……もうすっからかんだ……」
ようやく人心地をつき、満足に息を吸うことができた。
緊張で強張っていた全身から力が抜けていく。
同時に、列車を固めていた銀が粒子となって分散し、空気中に溶けていった。
カナリアはというと……──未だに俺の傍で腹ばいに寝そべったままになっていた。
「おっと、悪い。
……カナリア、平気か?」
彼女の体を慎重に抱き起こす。
「はい。問題ありません。ウィル」
カナリアは相変わらずの様子で、何事もなかったかのように平然と答えた。
「大分ひりついたけど……なんとかなったな。
しかし本当になんだったんだ、一体……」
カナリアの額に小さな煤汚れが付いていた。
それを指で拭ってやりながら、言葉を続ける。
「カナリアがいなけりゃ、今頃ピンボールみたいにアウターシェルまでふっ飛ばされてたかもな。
……助かったよ、色々と」
「いいえ。
それよりも、鼻腔からの出血が見られます。ウィル。
顔色も優れないようです」
「ん……」
カナリアに指摘されて、自分が鼻から血を流していることに初めて気がついた。
鼻の奥に、鉄錆のような匂いが居座っていた。
「ああ、平気だ。
しばらくすれば止まる。
……けど、流石に少し、無茶し過ぎたみたいだ」
そう言って指で鼻を摘んだ。
「はぁ……。
とんだ遠足になったもんだ……」
未だ頭の奥には、ずきずきと軋むような鈍痛が残っている。
俺は今夜を少し憂鬱に思いながら、薄く靄がかった空を仰いだ。
Verse 5.End




