第92話:私たちの卒業式
「若奥様、今日はこちらをお召しください」
使用人が持ってきたのは、懐かしい制服だ。サターン様と結婚してから、早2ヶ月。来月には、私たちの結婚披露パーティも控えている。
今日は私とサターン様の卒業証書をもらいに行くのだ。私達は卒業式に出られなかったので、取りに来て欲しいとの事。
わざわざ取りに行かなくても送って下さればよいのだが、せっかくなので手渡しをしたいという事で、学院が休みの今日、取りに行く事になったのだ。
「卒業証書を取りに行くだけだから、わざわざ制服を着なくてもよいのではなくって?」
貴族学院を卒業して半年以上たっているのに、今更制服を着るだなんて、なんだか恥ずかしい。そう思ったのだが…
「何をおっしゃっているのですか!たとえ卒業証書をもらいに行くだけだとしても、学院に行くのですから、制服は着なければいけないのです。若旦那様も着ていかれるのですから、若奥様も着てください」
「サターン様も?それなら着ない訳にはいかないわね。分かったわ、着ていくわ」
まさかサターン様が制服を着られるだなんて。サターン様の制服姿がまたみられると思うと、なんだか胸が高鳴る。
サターン様の制服姿、とてもカッコいいのだ。
急いで着替えを済ませて、部屋から出ると、そこには制服姿のサターン様が待っていた。
「制服姿、とてもよく似合っているね。マリオネットの制服姿を見ていると、学院で過ごした日々が蘇るよ」
「私もですわ。それにしてもサターン様の制服姿、とても素敵です」
「マリオネットもとても可愛いよ。さあ、行こうか」
2人で手をつなぎながら、馬車を目ざす。そして馬車に乗り込み、懐かしい貴族学院に出発だ。最初はあまり乗り気ではなかったが、こうやって制服を着てサターン様と一緒に学院を目指すと、なんだかワクワクしてきた。
「とても嬉しそうな顔をしているね。マリオネットはあの日、急に事件に巻き込まれてしまったから。卒業式や卒業パーティを楽しみにしていたのに、巻き込んでしまってすまなかった」
そう言ってサターン様が謝って来たのだ。
「サターン様のせいではありませんわ。全てぺスタナ殿下が悪いのです。それに卒業式も卒業パーティも、サターン様と一緒でなければ意味がありません。ですので今日、2人で卒業証書を受け取れる事を、とても嬉しく思いますわ」
「そう言ってもらえると有難いよ。マリオネット、学院が見えて来たよ」
窓の外には、懐かしい貴族学院が。まだ卒業して1年も経っていないのに、随分昔のような感じがする。
馬車が学院の前で停まった。いつもここで馬車を降りて学院に通っていたのだ。あの頃の事を思い出し、胸が熱くなる。
「マリオネット、行こうか」
「はい」
サターン様と手を繋ぎ、学院の中に入っていく。向った先は、職員室だ。どうやら職員室で卒業証書をもらう様だ。
私達が職員室に行くと、担任の先生が待っていてくれた。
「2人ともよく来てくれたね。それじゃあ、行こうか」
行く?一体どこに行くのだろう。
サターン様も同じ事を思ったのか
「先生、一体どこに行くのですか?」
怪訝そうな顔で問いかけている。
「そんな顔をしないで。とにかくついて来てくれ。卒業証書はそこで渡すから」
そう言うと、先生は歩き出した。
2人で顔を見合わせつつ、先生がついて来いと言っているのだから、ついていくしかない。そう思い、先生の後をついていく。一体どこに向かっているのかしら?
しばらく進むと、先生がホールの入口の前で止まったのだ。
ここのホールは、卒業式を行う会場だ。一体どうしてこんな場所に?
「サターン殿、マリオネット夫人、どうぞ入って」
先生がゆっくりとホールの扉を開けたのだ。




