第9話:何が起こったの?~レア視点~
「レア、そんな顔をしないで。私ね、たとえ気持ちが通じなくても、彼の傍にいられるだけで、十分幸せだから。見て、あんなところに野ウサギがいるわ。なんて可愛いのかしら?あっ、待って」
急にマリオネットが立ち上がり、ウサギを追いかけだしたのだ。
「待って、勝手に森の中に入ってはいけないわよ」
急いでマリオネットを追いかける。
いつも行動派で、思い立ったらすぐに動くマリオネット。今回も後先考えずに、体が動いたのだろう。そんな所もまた、マリオネットの可愛いところなのよね。
「あら?マリオネットったら、どこに行ってしまったのかしら?あの子、動きがとても速いのよね。確かこっちに行ったような…」
いつの間にか、マリオネットを見失ってしまった。この森は、マリオネットが野犬の襲われた場所だ。万が一、またマリオネットの身に何かあったら…
そう考えると、気が気ではない。
「マリオネット、どこにいるの?マリオネット」
彼女の名前を呼びながら周りを探すが、マリオネットの姿はどこにもない。おかしいな、こっちに来たような気がするのだけれど…もしかして、もう戻ってしまったのかしら?でも、もしもっと奥に行っていたら…
その時だった。
がさりという音が聞こえたのだ。
「マリオネット、そんな所に…えっ…」
振り返った先にいたのは、マリオネットではなく、大きなクマだったのだ。一気に血の気が引くのを感じた。
クマは威嚇しながら真っすぐ私を見つめている。もしかして、私の事を獲物だと思っている?どうしよう…
このままだと私…
次の瞬間、クマがすごいスピードで襲い掛かって来たのだ。ダメだ、襲われる!
そう思い、目を閉じその場に座り込んだ時だった。
「ぐわぁぁぁ」
クマの鳴き声が聞こえたかと思うと、どさりと何かが倒れる音が聞こえたのだ。
恐る恐る目を開けると、そこには真っ黒な髪をした男性が、私を庇う様に背を向けて立っていたのだ。
その奥には、倒れたクマの姿が。
この人は…
「サターン様?」
私の声に、ゆっくりとこちらを振り向くサターン様。もしかして、私を助けてくれたの?そもそも、どうして彼がここにいるのだろう。彼は欠席のはずなのに。
ただ、すぐに反対側を向いて歩き出したサターン様。
「お…お待ちください。どうして私を助けて下さったのですか?」
気が付くと彼に向かってそう叫んでいた。すると、真っ黒な瞳が私をギロリと睨みつけている。なんて恐ろしい男なの。恐怖から、体が震えた。
「貴様など、どうなろうと知った事ではない。ただ…貴様に何かあると、あいつが悲しむから…」
「あいつ?」
一体何を言っているのだろう。
「いいか、この事は誰にも言うな!もちろん、あいつにもだ。もし誰かに話したら、その時は」
「ぜ…絶対に誰にも言いません。もちろん、マリオネットにも…」
あまりにも殺気立った雰囲気に、とっさにそう叫んでしまった。
「分かればいい…絶対にあいつには言うなよ」
そう言うと、サターン様は足早に去って行ったのだ。あまりの恐怖に、その場から動く事が出来ない。
「レア、ここにいたのね。良かった…て、何、あの大きなクマは!もしかして、レアが倒したの?」
私の元にやって来たのは、マリオネットだ。
「私がクマなんて、倒せる訳がないでしょう?これは…いいえ、何でもないわ。ちょっと腰を抜かしてしまって…」
「大丈夫?ほら、立てる?」
マリオネットが私の手を引っ張り、起き上がらせてくれた。
「ありがとう。さあ、戻りましょう。ここは危険よ」
「そうね、なんだか大きなクマもいたみたいだし。それにしても、レアがいなくなって心配したのよ。まさかこんなに奥まで来ていただなんて。でも、無事でよかった」
そう言って笑ったマリオネット。彼女の笑顔は、本当に可愛くて素敵だ。
それにしても、まさかサターン様が助けて下さるだなんて。
それにあの言葉は一体…




