第84話:抑えきれない気持ち~サターン視点~
もうどこにも行って欲しくない!俺の傍にいて欲しい。それと同時に、マリオネットの普段の様子を、もっと詳しく知りたくなった俺は、使用人を呼び出し、話しを聞いたのだ。
それにしてもあの専属使用人、マリオネットの事をとても大切に思っているのだな…俺にかなりの恐怖を抱きながらも、必死にマリオネットがいかに俺を大切に思っているかを、訴えていた。
「マリオネット、毎日俺の体を自ら拭き、花を選び、口づけをしてくれていたのかい?」
分かっている、マリオネットが父上や使用人と仲良くし、領地を立て直したのは、全て俺の為だろう。中々目覚めない俺が目覚めた時に、少しでも苦労しない様にと…彼女はそんな女性だ。
頭では分かっているのだが、どうしても我慢できないのだ。
嫉妬に狂った男など、見苦しいだけ。いつマリオネットに、愛想を付かされてもおかしくはない。だが…
「マリオネット、どうかこれからは、ずっと俺の傍にいてほしい。それが唯一の願いだから」
眠るマリオネットに口づけをした。すると
「サターン様…」
そう呟くと、俺にしがみついて来たのだ。だが、瞳はしっかり閉じられている。どうやら無意識の様だ。
あぁ…なんて可愛いのだろう。こんな可愛い事をされたら、俺は…
もう気が狂いそうになる。いっその事このまま…
その時だった。
「坊ちゃま、そろそろファレリス侯爵と夫人がいらっしゃる時間です。ご準備を」
専属執事が、声をかけてきたのだ。もうそんな時間か。このままマリオネットとこの部屋で過ごしたい。だが、今から俺とマリオネットが、正式に夫婦になるために集まるのだ。このまま参加しないなんて事は到底できない。
「わかったよ、すぐに準備をしよう」
そう伝え、一旦執事を部屋の外に出す。俺の腕の中でスヤスヤ眠るマリオネットに、声をかける。
すると、まだ眠いのか、すり寄って来た。
なんて可愛いんだ!やはりこのまま…ダメだ、マリオネットを起こして、正式に籍を入れないと。籍さえ入れてしまえば、もうマリオネットは俺から逃げられない。
再び声をかけると、ゆっくりと目を開けるマリオネット。
両親がもうすぐ来ることに気が付くと、急に飛び起きて急いで着替えに向かおうとしている。
どうして俺から離れようとしているのだ?どうか離れないでほしい。そんな思いで溢れだした。
分かっている、マリオネットは、ただ着替えに行くだけだと。だが、どうしてもマリオネットと離れたくなかったのだ。
つい魔法で、着崩れを起こしていたマリオネットの服を直した。マリオネットは俺が魔法を使った事に不安を抱いていた様だが、この程度の魔法は全く問題ない。何よりも、マリオネットのオーラを浴びれば、すぐに魔力も戻るのだ。
その事をマリオネットに説明したら、納得してくれた。
「それじゃあ、行こうか」
マリオネットの抱きかかえ、客間へと向かう。
「サターン様、下ろしてください。自分の足で歩けますわ」
恥ずかしいのか、俺の腕の中でバタバタと暴れている。そんなマリオネットのおでこに口づけをした。
「部屋の前まで行ったら降ろしてあげるから、今はじっとしていて」
耳元で呟くと、頬を赤らめ大人しくなったマリオネット。彼女の動き一つ一つが、愛おしくてまらない。このまま客間にはいかずに、部屋に戻ってしまおうか…ついそんな事を考えてしまう。
「サターン様、部屋の前に着きましたわ。降ろしてください」
「ああ…分かったよ…」
あっと言う間に着いてしまい、仕方なくマリオネットを下ろした。彼女がどこかに行ってしまわない様に、すかさず腰をがっちりつかむ。
「行こうか」
「はい」
2人で部屋に入ると、既に皆集まっていた。
「サターン殿、本当に目覚めたのですね。よかった」
「マリオネット、よかったわね。まさかサターン様もご一緒に、今日という日を迎えられるだなんて…」
ファレリス侯爵が嬉しそうに俺の方にやって来た。夫人も涙を流して喜んでいる。今日の2人のオーラは、黄色だ。
彼らも俺に、少しだけ好意を抱いてくれているのだろう。
「ファレリス侯爵、夫人、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。これからは俺がマリオネットを、しっかり守りますので」
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか。あなた様はずっと、マリオネットを守って下さっておりますよ。マリオネットだけではない、我々を始め、この国に住む全ての人を、あなたは命がけで守ったのです。本当にありがとうございました」
そう言うと、侯爵が頭を下げたのだ。隣で夫人も一緒に頭を下げていた。




