第78話:お父様とサターン様は思ったより仲良しです
「マリオネット、いつもあの若い庭師と仲良くしていたのかい?」
耳元で呟くサターン様。いつもより声が低い気がするのは、気のせいだろう。
「はい、彼は私がこのお屋敷に来た時から、よくしてくれているのです。お花の事も色々と教えてくれて、本当にいい方なのですよ。仕事も熱心ですし。それにいつもはもっと色々と話してくれるのですが、今日はサターン様がいらしたので、緊張していたのね」
「…そうか、マリオネットが来てから、ずっとあの男はマリオネットと親しくしていたのだな…マリオネットと言葉を交わし、可愛い顔を見ていただなんて…」
「サターン様?何かおっしゃいましたか?」
「いいや、何でもない。それでその摘んだ花は、俺の部屋にでも飾るのかい?そういえば部屋に花が飾ってあったが、あの花はマリオネットが毎日飾ってくれているのかい?」
「はい、そうですわ。毎日私が摘んで、サターン様のお部屋に飾っていたのです」
「そうか…毎日あの男に会いに行っていただなんて…」
「先ほどから、何をブツブツとおっしゃっているのですか?」
「いいや、何でもない。それにしても、たくさん摘んできたのだな」
「はい、このお花の一部は、お義父様のお部屋に飾るのです。さあ、参りましょう」
「参りましょうとは、もしかして父上の部屋に行くのかい?」
「はい、そうですわ」
目を大きく見開き、かなり驚いているサターン様。私がお義父様と仲良しになったから、きっとビックリしているのね。
そう思いつつ、いつも通りお義父様の部屋へと向かった。
「お義父様、お花をお持ちしましたわ」
「マリオネット、今日も来てくれたのだね。サターンが目覚めたから、今日は来てくれないかと思っていたのだが。さあ、こっちにおいで。今日はマリオネットと食事がとれなかったせいか、食欲がなくてね」
「まあ、そうだったのですね。確かにかなりお食事を残されていますね。しっかり食べないといけませんよ。さあ、沢山食べて下さい」
近くに残っていた朝食を、お義父様に食べさせようとした時だった。
「マリオネット、何をしているのだい?そんな事は、使用人の仕事だ。君がそんな事をする必要はない。花を置いたし、そろそろ部屋を出よう」
私の手を握り、そのまま部屋から出ようとするサターン様。
「待て、サターン。マリオネットはこうやって私の事も、毎日気にかけてくれているのだよ。特に今日は、少し体調が優れなくてね…ゴホゴホゴホ」
「お義父様、大丈夫ですか?さあ、ベッドに横になってください」
「ありがとう、マリオネット。君の顔を見たら、なんだか少し食欲がわいて来たよ」
「それは本当ですか?それでは、少しでもいいので食べて下さい」
近くに置いてあった朝食を手に取り、お義父様に食べさせようとした時だった。さっと、サターン様に奪われたのだ。
「父上は俺が食べさせるから、マリオネットは下がっていていいよ。ほら、父上、口を開けて」
そう言うと、サターン様がお義父様のお口に、料理を入れたのだ。サターン様とお義父様は、あまり関係が良くないと聞いていたが、なんだかんだ言って、やはり親子なのだろう。仲がよさそうでよかったわ。
“サターン様、なんだかんだ言って、お義父様の事を心配しているのね。見て、サターン様とお義父様の嬉しそうな顔”
近くに控えていた執事に話しかけた。すると、なぜか大きく目を見開き、汗を拭きだしたのだ。一体どうしたのかしら?親子の美しい食事風景なのに。なんだか少し執事が怯えている様に見えるのは、気のせいだろうか…
「父上、もう十分食べましたね。それでは俺たちはこれで失礼します。マリオネット、行こうか」
サターン様が私の手を引き、その場を去って行こうとする。




