第75話:魔力とは奥深いです
「ちょっと待って下さい。確かにマリオネットの放つオーラを浴びると、体が軽くなり、心が温かくなるのは事実です。
…言われてみれば魔力を使った後、マリオネットに触れると、なんだか疲れが吹っ飛ぶような感覚が…
マリオネット、体の調子はどうだい?もしかして俺が、君から生気を吸い取っていたりしないよね」
サターン様が、必死に訴えてくる。
「私には全く影響はありませんわ。それに、そんなオーラが出ている感覚もありませんし…とはいえ、私の持つオーラが、サターン様やお義父様の魔力回復に一役買っているのでしたら、とても嬉しいです。
グレース様、どうか私のオーラを、調べて下さいませんか?それで皆様の力になれるのなら、私にとっても有難い事ですので」
「それは本当ですか?では、早速…」
「ちょっと待ってくれ!確かにマリオネットのオレンジ色のオーラには、何か力があるのは確かだろう。だが今は、その話よりももっと大切な話が…て、何をしているのだ!」
サターン様が私を抱き寄せ、訴えかけている間に、グレース様が再び魔力量を測っている。
「やはりマリオネット様のオーラを浴び続けているせいか、今急激に魔力が作られています。信じられない、こんな猛スピードで魔力が復活していくだなんて…やはりマリオネット様の持つオーラが、魔力の生成を急激に助けている様です。
マリオネット様、あなたは何者なのですか?魔力もないのに、どうして魔力の生成を手助けできるのですか?まさか、本当に神の使いなのでは…」
「わ…私は神の使いなんかではありませんわ。ただサターン様の事もお義父様の事も、大好きなのです。そんな気持ちが、魔力の増幅に一役買っているのかもしれませんね」
なんて、そんな事は絶対にないだろう。そんな気持ちで魔力が回復するのなら、誰も苦労はしない。
そう思っていたのだが…
「それは一理あるかもしれない。私もサターンも、誰からも愛されてこなかった。そもそもディーズ公爵家の人間は、魔力を持って生まれた代償からか、人に愛される事を知らない一族だ。
私の両親も祖父母も、夫婦仲が非常に悪く、その上子供にも興味がなかった。グレースの母も、愛情に疎い人物だったよな?」
「はい、私の母も、私には全く興味を持ちませんでした。父も魔力を持った私を気持ち悪がっておりましたし…
確かにディーズ公爵家には、愛情などと言うものは存在しませんでしたね。そんな中、我々魔力持ちにも、無償の愛を注いでくれるマリオネット様が現れた。もしかしたら愛こそが、魔力を増幅される最大の栄養源なのかもしれません。
ディーズ公爵家と愛は、まさしく対義語。ディーズ公爵家に足りなかったものは、愛情だったのです」
「愛か…実にくだらんものだと思っていたが、マリオネットのお陰で、愛と言うものも悪くわないな…」
なにやらお義父様とグレース様が、顎に手を当てて納得している。よくわからないが、どうやら魔力を増やすためには、愛情のオーラが必要だったという事なのだろう。
昨日はずっとサターン様にくっ付いていたから、サターン様の魔力が一気に回復したという訳か。
それなら昨日の私の行動は、間違っていなかったという事になる。そう勝手にいい風に、解釈をしておいた。
「話は分かりました。要するに、まだ魔力が完全ではない俺は、マリオネットにずっとくっ付いていれば、魔力が完全に元に戻るという事ですね。それではもう、2人とも部屋から出て行ってください。
それからこれからは、無駄にマリオネットと仲良くなることはお控えください。いいですね、さあ、早く出て行って」
サターン様が、お義父様とグレース様を追い出したのだ。
「さて、邪魔者はいなくなったし。2人でゆっくり食事をしようか。それから、この半年、何があったのか話してくれるかい?俺にわかるように、事細かく」
「ええ、もちろんですわ。あなた達、すぐに食事の準備を。その前に、着替えてこないと。サターン様、少しお待ちいただけますか?先に着替えてまいりますね。サターン様もせっかく目覚められたのですから、一度湯あみをしてすっきりされるのが良いでしょう。
それではこれで一旦、失礼いたしますわ」
「待って…マリオネット」
サターン様が何か言いかけた気がしたが、まあいいか。とにかく、サターン様が目覚められたのだ。一刻も早く着替えを済ませて、サターン様の元に戻らないと。




