第7話:森にピクニックです
「見て、レア。大きな森が見えて来たわよ」
「マリオネット、危ないから座ってちょうだい。子供みたいにはしゃいじゃって。それにしても、野犬がいるあの様な森にピクニックに行くだなんて。貴族学院は何を考えているのかしら?マリオネットも、無理をしていく必要はないのよ、あなたにとってあの森は、いい思い出なんてないでしょう」
隣で私の事を心配してくれているのは、レアだ。今日は貴族学院主催の、ピクニック。私達貴族は、あまり自然に触れ合う事がないため、貴族学院が学生たちを連れてピクニックが開催される。
とはいえ、森や自然が苦手な人もいるため、今回は自由参加だ。令息たちは狩りを楽しみ、令嬢たちは綺麗な湖のほとりでお茶を楽しむ。
騎士団から護衛たちも来ている為、非常に安心なのだが…5年前、私が野犬に襲われた森とあって、レアは私の事を心配してくれているのだ。森の奥にさえ入らなければ問題ないし、護衛たちもいる。
それに何よりも、あの森は初めてサターン様に出会った場所。私にとって、思い出の場所なのだ。
「レア、いつも私の事を気にかけてくれて、どうもありがとう。でも私、この森が大好きよ。だって、大切な人と初めて会った場所だから…」
素直に自分の気持ちを伝えた。
「もう、マリオネットったら。どれだけあの人の事が好きなのよ。でも、サターン様は今日は参加していないのではなくって?あの人、あまりこういう行事には、参加しないでしょう?
それにサターン様はきっと、あなたの気持ちには応えるつもりはないのではなくって?今も一定の距離を置かれているのでしょう?」
一定の距離を置かれている…
サターン様の傍にいる事は、許されるようになった。とはいえ、私が一方的に彼に好意を抱き、一方的に話し掛けているだけ。もしかしたら、サターン様は迷惑だと感じているかもしれない。
「ええ、分かっているわ。だからね、サターン様の傍にいさせてもらうのは、学院を卒業するまでと決めているの。私だって、これでも侯爵令嬢よ。いずれどこかの殿方と結婚しないとけないことくらい、わかっているわ。
サターン様が私に振り向いて下さることは、決していないと思う。それでも学院にいる間は、彼の傍にいたいの。お父様もその件は、了承してくれているし。ただし、貴族学院を卒業したら、必ず婚約者を作ること、もし相手が見つからなかったら、その時はお父様が決めた相手と結婚する事を、約束しているわ」
私はこれでも、ファレリス侯爵家の令嬢だ。本来なら婚約者がいないといけない年齢に差し掛かっている。それでも学生の間は、自由にすることを許されている。
だからこそこの半年、多少無理をしてでも、悔いのない様にいきたいのだ。
「そうだったの…ごめんなさい、侯爵様とその様な約束をしているだなんて、全く知らなかったわ…マリオネットが後悔しない様に、私も精一杯協力するわ。そうだわ、私もあなたに合いそうな殿方を、何人か探しておくから」
笑顔のレアだが、なんだか方向がずれている気がする。
「レア、私は別に殿方は…」
「どうやら森に着いた様よ。せっかくなら、狩りが上手な殿方がいいわよね。さあ、行きましょう」
レアが私の腕を引き、馬車から降りた。なんだか妙に嬉しそうなのだが、何がそんなに嬉しいのだろう。そもそも、私はサターン様以外の殿方には興味がない。それに学院にいる間は、他の殿方と交流を持つつもりなんてないのに…
そんな私の気持ちとは裏腹に
「皆様、狩りを頑張って来てくださいね。マリオネットと一緒に、皆様のご活躍を期待しておりますわ」
そう叫びながら、レアが令息たちに手を振っている。
「さあ、マリオネット。あっちでお茶をしましょう。そういえば、あなたの好きなタイプの殿方を聞いたことがなかったわね。今日はゆっくり殿方について話をしましょうね」
完全に暴走しているレアを見ながら、どうしたものかと頭を悩ませるのだった。
※次回、レア視点です。
よろしくお願いします。




