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最強ツンデレ闇令息に近づいたら溺愛されました  作者: Karamimi


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第6話:少しずつ距離が近づいている気がします

「それでその時、レアがすぐに手当てをしてくれたので、大事には至りませんでしたわ。あの子、とてもいい子なのです」


 サターン様の隣で、1人おしゃべりを続ける私。特に返事をしてくれる訳ではないが、いつも黙って聞いてくれるサターン様。


 ここに来るようになってから、1ヶ月が過ぎた。サターン様が読書をしている横で、私が1人話しているという構造が出来た。サターン様が私の話を聞いているかは不明だが、それでもこうやって、傍にいられることが嬉しいのだ。


「その指の怪我がそうか?」


 珍しく返事をしてくれたサターン様。


「ええ、そうですわ。包帯を巻いていますが、大したことはないのです。針で突いただけですので。私、本当に不器用で嫌になりますわ。侯爵令嬢なのに、刺繍が苦手だなんて」


 レアが手当てしてくれた指を見ながら呟く。


 その時だった。サターン様が私の手を取ると、スルスルと包帯を外したのだ。そして私が転んだときと同じ薬を塗ってくれたかと思うと、そのままガーゼで指を巻いてくれた。


「包帯を巻いているだけでは、治りが悪いからな…これですぐに良くなるだろう」


 そう呟くと、再び本を読み始めたサターン様。相変わらずお優しい方だ。


「ありがとうございます、サターン様。この薬、本当によく効くのですよね。あの時の傷も、すぐに治っておりましたから、びっくりしましたわ」


「…」


 あら?せっかく珍しく話してくれたのに、また無言に戻ってしまった。でも、それがサターン様なのだ。


 ふと時計を見ると、16時を過ぎていた。いけない、今日はレアが家に来る日だった。


 レアは私の兄の婚約者だ。その為、定期的に我が家にやって来て、夕食を食べながら家族との交流を深めている。別に私がいなくてもいいのだが、それでも未来の義理姉兼親友を直接迎え入れたいのだ。


「サターン様、この後予定がありますので、失礼いたしますわ。それではまた明日」


 サターン様に頭を下げて、急いで丘を降りていく。レアは17時に我が家に来る予定だから、今から帰れば十分間に合うわね。せっかくだから、レアが好きなお花を準備しておこう。


 そんな事を考えながら歩いていると…


「あれ?マリオネット嬢じゃないか?珍しいね、君が1人でいるだなんて。良かったら今から、少し話をしないかい?」


 私に話しかけてきたのは、同じクラスの公爵令息、ドリー様だ。社交界一の美少年と言われているドリー様は、非常に令嬢たちから人気が高い。そのせいか、非常に令嬢たちとの噂が堪えない令息なのだ。


 正直私は、胡散臭い彼の笑顔が苦手なのだ。


「申し訳ございません、今から来客を迎え入れる準備がございますので。それでは失礼いたします」


 令嬢らしく笑顔で挨拶を済ませると、その場を後にしようとした時だった。


「待って、少しだけならいいだろう?僕はずっと、マリオネット嬢の事が気になっていたのだよ」


 私の腕を掴むと、そのまま引き寄せられた。背後には壁があり、身動きが取れない。何なの、この人。


「私をですか?ドリー様は非常に令嬢たちから人気が高いですし、私なんかに興味を持たなくてもよろしいのでは?」


 だから早く解放して!そんな思いで必死に訴える。


「君は何にも分かっていないね。社交界の華と言われているほど美しい君のような女性と、僕は結婚したいと思っているのだよ。近くで見ると、本当に美しいね。さすがファレリス侯爵家の令嬢だ」


「あの…私は別に社交界の華でもありませんし、美しくもありませんわ。どうかもっと美しい令嬢と、幸せになってください。どうか放して!」


 恐怖から、顔が強張る。


「怯えているのかい?本当に君は可愛いね」


 そう言うと、ドリー様の顔がゆっくり近づいて来た時だった。


 急に私から離れると、真っ青な顔をして震えだしたのだ。


「ど…どうしてお前がここに?止めろ…やめてくれ!僕は悪くない…僕は何もしていない」


 そう叫ぶと、急に走って逃げて行ったのだ。びっくりして辺りを見渡すが、誰もいなかった。一体あの男は、どうしたのだろう。


 とはいえ、助かったわ。あのままだったら、もしかしたらあの男に襲われていたかもしれないし。それにしても、安全と言われている貴族学院で、あのような事をする男がいるだなんて。


 さすがに抗議を…と言いたいところだけれど、相手は公爵令息だ。下手に抗議をして、逆に難癖をつけられてもめんどくさい。特に何もされていないし、ここは黙っておくことが賢明だろう。


 まさかあんな事をする令息が、貴族学院にいるだなんて。これからは夕方、人気がなくなる時間は、なるべく1人で歩かないようにしないと。


 そう思っていたのだが、後日彼は令嬢たちに迫っていたことが暴露され、卒業まで停学処分になったのだった。

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