第69話:公爵家に両親が来ました
「サターン様、お待たせしました。さあ、体を綺麗にしましょう」
今日もベッドで眠るサターン様の体を、丁寧に拭いていく。体を拭き終わったら、サターン様のお部屋で執事と話を進める。
「ディーズ公爵家の宝石をマルシェル王国に出荷する件だけれど、あそこはおしゃれに気を遣う貴族が非常に多いから、女性向けだけでなく男性向けにもアクセサリーを作って、輸出したいと考えているの。
これがマルシェル王国で、今流行しているデザインよ。これに合わせて、アクセサリーを作り、輸出の準備を進めてほしいの。デザイナーとも一度話を進めたいから、手配してくれるかしら」
「はい、かしこまりました。それにしても、斬新なデザインですね。よくここまで調べられました。さすがマリオネット様です」
「相変わらずお世辞がうまいのね。出来るだけ早く、話を進めて。出来れば私も、マルシェル王国に一度足を運びたいのだけれど、あの国まで行くのに船で丸1日かかるでしょう?あまり家を空けたくはないのよね」
サターン様の容態は安定しているとはいえ、いつ何時急変するか変わらない。出来るだけ家を空けたくはないのだ。
「承知いたしました、マルシェル王国の視察は、一度私共で行って参ります。マリオネット様がいらしてから、一気に領地の宝石が売れ始めましたね。領民たちの雇用も促進され、かなり潤っております。
本当にありがとうございます」
満面の笑みの執事。
「あら、まだこれからよ。もっともっと宝石を売って、もっともっと豊かな領地にしましょう。それが私達貴族の仕事なのだから」
サターン様がこの様な状況なのだ。私がサターン様の分までお義父様を支え、領地を盛り立てて行かないと。それが私にできる事の1つだと思っている。
「お嬢様、そろそろ旦那様と奥様がいらっしゃる頃です。ご準備を」
「まあ、もうそんな時間なの?わかったわ、すぐに準備をしましょう」
着替えを済ませ、軽めの朝食を頂く。そして、外で両親が来るのをお義父様と一緒に待つ。それにしても、一体何の様なのかしら?
疑問に思いつつ待っていると、見覚えのある馬車がこちらに入って来た。
「マリオネット、久しぶりね。元気そうでよかったわ」
扉が開くと同時に、お母様が飛び出してきたのだ。
「こらこら、まずはディーズ公爵に挨拶をしないか!ディーズ公爵、今日は急に押しかけて申し訳ございません」
「いえ、私は大丈夫ですよ。それよりも、例の件、考えて下さいましたか?」
例の件?
「ええ…とにかく、その話は後程」
「そうですね、それでは、どうぞこちらへ」
両親とお義父様と一緒に、客間へと向かう。一体何の話だろう。
そう思い、それぞれソファに腰を下ろした。
「それで今日は、どういう用事でこちらにいらしたのですか?」
席につくなり、早速両親に問いかけた。こう見えて、私も忙しいのだが。
「マリオネット、実はね、私からファレリス侯爵夫妻にお願いしていたことがあるのだよ。その件で、今日は足を運んでもらったんだ」
「お義父様からお願い?」
一体何を両親に、お願いしたのだろう。
「君が我が家に来てくれて、劇的に我が家は良くなった。いつも重苦しい雰囲気だったこの屋敷は、見違えるように明るくなった。いつも無表情で作業を黙々とこなしていた使用人からは、笑みもこぼれるようになった。
もちろん私も、君のお陰で毎日を楽しく過ごしている。領地に関しても積極的に取り組んでくれている。君のお陰で、ディーズ公爵領は今、この国一番の豊かな領地になった。これからもっともっと、発展していくだろう。
全て君のお陰だ。君がディーズ公爵家に、そして私に幸運をもたらしてくれた。私は君を、幸運の女神だと思っているのだよ。
だからこそ…」




