第68話:あれから半年
「お義父様、レアが妊娠したのですって。私も叔母様になるのですね。早くレアとお兄様の子供に会いたいわ。きっととっても可愛いでしょうね」
今日もお義父様を捕まえ、世間話をする。
「マリオネットの兄上は、子供が出来たのだね。マリオネットが叔母さんか。こんなに可愛いのに、叔母さんという響きは似合わないね。とはいえ、マリオネットが嬉しそうにしていると、私も嬉しいよ」
そう言ってほほ笑むお義父様。優しいお義父様は、私の話をいつも笑顔で聞いてくれるのだ。
「マリオネット、あの事故から、既に半年がたっている。サターンは命は取り留めているが、もう二度と目覚める事はないかもしれない。私はマリオネットの事を、大切な娘だと思っている。
だからこそ、君には幸せになって欲しいんだ。そろそろ君の未来の事も、真剣に考えた方がいい」
さっきまで笑っていたかと思ったら、今度は真剣な顔で、私に語り出したのだ。
「お義父様、私は何度も申し上げておりますが、この家から出ていくつもりも、他の殿方と結婚するつもりもありません。サターン様のお傍にいられるだけで、私は幸せなのです」
「しかし…」
「さあ、このお話は終わりですわ。お義父様、最近随分体調が良いと言っても、まだまだ無理は禁物です。どうか今日は、ゆっくり休んでいてくださいね。領地経営も今、かなりうまく行っておりますから、私と執事で何とかなりますわ」
「マリオネットがマンドル殿とレア夫人に贈った宝石のお陰で、今我が領土はかなり潤っているからね。2人が結婚披露パーティで付けていた宝石が、かなり話題を呼んで、今では国内から宝石の注文が殺到している。
我が領地は本当に立派な宝石が取れるのに、今までうまく宣伝できていなかったから。これで領民の生活も、かなり安定するだろう。それもこれも、マリオネットのお陰だ。だがそのせいで、マリオネットにはかなり負担をかけているだろう?領地の件は、私が引き受けるから。先日も領地に足を運んでくれたり、夫人たちに領地の宝石をアピールしてくれたりしてくれただろう。
君はもう、十分すぎるほど公爵家に尽くしてくれている。後は私に任せてくれ。それにマリオネットが来てくれてから、なんだか急に体が軽くなってね。もうすっかり元気になったよ。本当に君は、不思議な子だ」
私が不思議?よくわからないが、確かにお義父様は最近体調が良い様で、王宮にも定期的に足を運んでいる。レアの話では、社交界にもちょくちょく顔を出していると言っていた。
社交界か…
レアとお兄様の結婚披露パーティ以来、公の場に姿を現していない。そろそろ私も、社交界に一度顔を出した方がいいかしら。
でも、結婚披露パーティの時、令息たちがやたらと声をかけてきたのだ。正直ちょっと煩わしかった。きっとサターン様が目覚めないから、私の行く末を心配して色々と気を使ってくれているのだろうが、大きなお世話だ。
そう考えると、社交界からどうしても足が遠のいてしまう。
「マリオネット、難しい顔をしてどうしたのだい?考え事をしているのかい?」
「いえ、何でもありませんわ。それでは私は一度、サターン様の様子を見てまいりますね」
そう伝え、その場を去ろうとしたのだが
「待って、マリオネット。今日の午後は、予定を開けておいてほしい。君のご両親が、我が家に来ることになっているのだよ」
「両親がですか?承知いたしました。開けておきますね」
お父様とお母様がわざわざ公爵家に来るだなんて、一体何の様だろう。もしかして、ずっと実家に顔を出していないから、心配で様子を見に来るのかしら?
でも、定期的に手紙のやり取りはしているし…
変な話でなければいいのだが…




