第67話:親友との時間
「ぺスタナ殿下にあんな酷い事をされたのに、その様な事が言えるだなんて。本当に尊敬するくらい、心が広いのね。あなたが皆を虜にする理由が、改めてよくわかったわ。ディーズ公爵も、なんだか優しい雰囲気になった気がるのだけれど、それもマリオネットのお陰なのかしら?」
「お義父様が?いつもお優しい方よ。最近はあまり体調がよろしくなくて、心配しているのだけれど…」
「さすがマリオネットね。あなたならきっと、ディーズ公爵ともうまくやっていけるのでしょうね。冷酷非道で人の気持ちなど分からないと言われていた人の心まで、動かすだなんて…」
何やら訳の分からない事を、ブツブツ呟くレア。たまにレアは、よくわからない事を呟く癖があるのだ。相変わらずの姿に、自然と笑みがこぼれる。
「さあ、事件後の話はこれくらいにして、ゆっくり話しましょう。私、マリオネットに報告したい話が、沢山あるの。マリオネット、その…来月の私たちの結婚披露パーティは、参加できそう?」
「ええ、もちろん参加する予定よ。だって大切な2人の結婚披露パーティなのですもの、私が参加しない訳がないでしょう?レアのウエディングドレス姿、とても楽しみにしているのよ」
「本当?よかった。サターン様の事もあるから、参加できないのではないかと心配していたの。でも、無理はしないでね」
「何言っているのよ。無理なんてしていないわ。そうそう、レアに渡したいものがあるの」
近くに控えていた使用人に、あるものを持ってきてもらう様に頼む。
「お嬢様、お待たせいたしました」
「ありがとう。レア、これ、私が作ったの。もしよかったら、結婚披露パーティで身に付けてくれると嬉しいな」
梱包された箱を、レアに手渡した。
「まあ、私に?開けてもいい?」
「もちろんよ。開けてみて」
嬉しそうに包み紙を開けるレア。そこに現れたのは…
「まあ、なんて美しいサファイアのネックレスなの。まるでマンドル様の瞳の色みたい。こんな綺麗なネックレス、初めて見たわ。周りは獅子が描かれているの?すごいわ」
「ディーズ公爵家の領地には、立派なサファイアが取れるの。お義父様が特別に、一番いいサファイアを取り寄せてくれたのよ。せっかくだから、レアに贈りたいと思って、デザイナーと一緒にデザインしたの。お兄様は、獅子みたいに強いと昔レアが言っていたでしょう?だから、獅子をイメージしてみたの。それから、こっちがお兄様のブローチよ。
レアの瞳の色をイメージして、エメラルドの宝石をあしらっているの。お兄様にも渡してもらえるかしら?」
「まあ、マンドル様にも?ありがとう、マリオネット。サターン様の件で、大変な時に。私達の為に、この様な素敵なプレゼントを準備してくれていただなんて…マンドル様と一緒に、結婚披露パーティの時に付けさせてもらうわ」
涙を流しながら、レアが私に抱き着いてくる。
「レアとお兄様は、私にとって大切な人なのよ。これくらい当然よ。レア、どうかお兄様の事を、よろしくお願いします。あの人、結構無理をする事があるから」
「ええ、もちろんよ。必ずマンドル様を、幸せにして見せるわ」
そう言ってレアが笑った。レアの笑顔が、私は大好きだ。本来なら親友として、一番大切な時期にもっと支えてあげたかった。でも、それが今の私にはできない。
だからこそ、せめてプレゼントだけでもと考えたのだ。喜んでもらえて、本当によかった。
「レア、もう泣かないで。私、あなたが笑った顔が一番好きなのよ。どうかこれからも、笑顔でお兄様を癒してあげてね」
「それを言うなら、マリオネットこそ笑顔が誰よりも素敵よ。マリオネット、大好きよ。彼からもずっと、親友でいましょうね」
「もちろんよ」
いつも私を支えてくれるレア、今回もわざわざ公爵家まで足を運んでくれた。
それが嬉しくてたまらない。レアの為にも、彼女に負けないくらい幸せにならないと。そう心に誓ったのだった。




