第66話:事件後の変化
「サターン様は、それほどまでにマリオネットを深く思ってくれていたという事ね。今回の戦いだって、自ら志願したと聞いたわ。たった1人で、マントレス王国の魔法使いを倒してしまわれるだなんて、本当にすごい人ね。
マリオネット、知っている?今サターン様は、貴族世界で英雄としてもてはやされているのよ。もしサターン様があの魔法使いに負けていたら、私たち王族は皆殺し。貴族や平民たちも、殺されているか奴隷として一生こき使われていたはず。
サターン様は、マントレス王国からアンデルサン王国に住む全国民を守った、英雄なのよ。今国中が、英雄が1日でも早く目覚めてくれることを、祈っているわ。
元クラスメイト達も、サターン様に会って、今まで避けていたことを謝りたいと言っているわ。皆サターン様に、一目置いているのよ」
嬉しそうに、レアがそう教えてくれた。
サターン様の素晴らしさが、皆にも理解してもらえた。もちろん喜ばしい事だ。
でも…
「教えてくれてありがとう、レア」
「あら?どうしたの?浮かない顔をして。もしかして、サターン様が英雄としてもてはやされていることが、不安なの?大丈夫よ、いくら英雄と言っても、あの人見た目が怖いから、令嬢たちは好き好んで近づいたりしないし。何よりもサターン様は、マリオネット一筋だから、安心して」
レアがそう言って笑った。
「もう、レアったら。サターン様は、とても魅力的な方よ。他の令嬢たちが惚れてしまっても、それは仕方がない事なの。やっと皆、サターン様の魅力に気が付いたのね」
とはいえ、きっとサターン様は、英雄としてもてはやされている事に、興味などないだろう。サターン様はサターン様、自分をしっかり持った方。だから私も、周りの評判に流されずにいたい。
それに何よりも、もうそんな事はどうでもいい。サターン様さえ元気になって下されば、世間の評判など興味がない。
「そうそう、ぺスタナ殿下のその後を話さないとね。ぺスタナ殿下は、先日マントレス王国に帰国したわ。とはいえ、今回の事件は、我が国を冒涜する非常に許しがたい出来事だったの。
事件後すぐに、マントレス王国から国王と王妃がやって来て、必死に謝罪していた。全てはぺスタナ殿下が1人で行った事だ。ぺスタナ殿下を、この国の法律にのっとり処分してもらっても構わないと言ってね。
さらに多額の慰謝料と、無償で資源を提供すると言って来たの。呆れるでしょう?確かにぺスタナ殿下が今回の事件を起こした張本人ではあるけれど、実際は母国と連絡を取り合い、陛下や王太子殿下、さらには一部の貴族たちと作戦を練りながら動いていたくせに。
それもマントレス王国の魔法使いが勝利した暁には、我が国に攻め込むという話をしていたのは、陛下と王太子殿下だというのに。あまりにも酷い話に、お父様や貴族たちは大激怒だったわ。
あわや戦争になるのではないかというくらい、混乱したの。このままだと収拾がつかないというところまで来たのだけれどね。
ディーズ公爵が“今回ぺスタナ殿下の罪は問わない。ただし、もう二度と我が国には関わらないでほしい。もし今後何かしてくる様なら、その時は容赦しない”
そうはっきりと、マントレス王国の国王と王妃に告げたの。あの時のディーズ公爵の恐ろしい顔ったらなかったわ。マントレス王国の国王と王妃は震えあがり、ありったけのお金と資源を置いて、逃げるようにぺスタナ殿下を連れて国に帰って行ったわ。
それにしても、息子があんな目に遭わされたのにあっさり許すだなんて、少し変わっているわね。とはいえ、ディーズ公爵が上手く収めてくれなかったら、まだ大混乱は続いていただろうから、有難いと言えばそうなのだけれど」
レアがお菓子を頬張りながら、その後の事を教えてくれた。
「ディーズ公爵様は…お義父様はサターン様に負けず劣らずお優しい方よ。きっと無駄な争いをする事を、避けたのでしょう。もし戦争にでもなれば、沢山の人が傷つき命を落とすから。サターン様も、そんな事は望んでいないでしょうし。お義父様らしい判断だわ」




