第61話:知らなかった事実
「そんな…私のせいで、サターン様は…私がぺスタナ殿下に好かれなければ…私がサターン様の元に、現れなければ、サターン様は、こんな目に遭わなかったのに…全て私のせいだわ。私のせいで、サターン様は…」
私のせいだ。私のせいで、サターン様が命を落とす。全て私のせいだ。私さえいなければ…
ポロポロと涙が溢れだす。私の存在が、サターン様の命を奪ってしまったのだ。私さえいなければ、サターン様は今頃元気に生きていられたのに…
「マリオネット嬢、それは違うよ。マントレス王国の魔術師と戦うと決めたのも、誰の手助けを受けないと決めたのも、全てサターンなんだよ。それにぺスタナ殿下は…マントレス王国はマリオネット嬢を手に入れるためだけに、魔術師をよこしてきた訳ではない。
隣国でもある我がアンデルサン王国に、魔力持ちがいる事を脅威に感じていたのだろう。その為、魔力を持っているサターンを潰すことを考えた。
実はね、私はもう長くはないのだよ。少し魔力を使いすぎてね。だから息子でもあるサターンさえ消してしまえば、アンデルサン王国には魔力持ちがいずれ居なくなると考えたのだろう。
だから彼らは、元々サターンと戦うつもりで、マリオネット嬢を利用した。マリオネット嬢を使って、サターンをおびき出したのだよ」
「ディーズ公爵とサターン殿は、ずっとぺスタナ殿下の動きを見張っていた。どうやら彼らは、わざとサターン殿たちに、自分たちの計画を聞かせていたらしい。
この戦いにマントレス王国が勝利したら、我が国に攻め込んでくるつもりだった様だよ。せっかくリスクを冒して、自国の魔法使いを倒したのだから、それなりの見返りがないと、という話になったらしい。
ディーズ公爵は既にほとんど魔法を使えない、サターン殿もいないとなれば、この国はあっという間に攻め落とされるだろう。王族たちを皆殺しにし、我々を奴隷として扱うつもりだったらしい。
もしサターン殿がこの戦いで負けていたら、この国に住む全ての人間が地獄を見ていただろう。サターン殿は、この国をも救ってくれたのだよ」
「それでは今回の件は、最初からすべて皆が知っていたという事ですか?知らなかったのは、私だけ…」
「君をのけ者にしようと思っていた訳ではない。ただ、サターン殿が“マリオネットをこの戦いには、絶対に巻き込みたくはない。もしマリオネットがこの恐ろしい話を聞いたら、恐怖で震えあがり、いらぬストレスを与える事になる。そんな事はさせたくはない。絶対にマリオネットを巻き込まないから、どうか黙っていてほしい”
そう言われてね。本当は君が目覚める前に、サターン殿は安全な場所にマリオネットを避難させ、別の場所で戦いを行う予定だったのだよ。君が目覚めた時には、全てが終わっている様に。
マリオネットは、一度寝たら多少の事では起きないだろう?念のため、睡眠薬も寝る前に飲ませたのだが…まさか今回に限って、マリオネットが起きてしまうだなんて」
お父様が苦笑いをしている。確かに私は、一度眠りにつくと朝までぐっすり眠っていて起きない。一度夜中にボヤ騒ぎが我が家で起きた時があったが、その時ですら1人グーグー寝ていたくらいだ。
「サターン殿は、最後までマリオネットの事を気にかけてくれていたよ。陛下や他の貴族たちが、全ての魔術師を投入してサターン殿の負担を軽くするべきだと提案したのだが、彼は最後まで首を縦に振ってくれなくてね。
“この戦いは、自分に宛てられた挑戦状だ。だから自分の手で、魔術師を倒したい。絶対に死にませんから”
そう断言していたよ。きっとマリオネットを苦しめたぺスタナ殿下を、どうしても許せなかったのだろう。本当にすごい人だ、サターン殿は」
そう言ってお父様が、力なく笑った。私の知らないところで、サターン様はずっと戦っていただなんて。
「マリオネット嬢、サターンはもう生きられない。どうか君だけでも、幸せになって欲しい。サターンが命を懸けて守った、この国で」




