第59話:我が家の使用人たちは仕事が早いです
「マリオネット、さっきディーズ公爵殿が魔法を使って、サターン殿の容態を報告してくれたよ。一命は取り留めているみたいだから、どうかマリオネットにはゆっくり休んでほしいとのことだ。
もちろん、サターン殿が心配でゆっくり休める状況ではないだろう。着替えを済ませたら、すぐに公爵家に行こう。私も一緒に行くから」
「それは本当ですか?でも、一命は取り留めたと言っても、危険な状況なのではなくって?とはいえ、わざわざ公爵様が、お父様に魔法で伝言を伝えてくれたのだから、この様なはしたない格好では、公爵家には向かえないわ…
承知しました、それではすぐに着替えます。お父様もいらっしゃるのなら、急いでくださいね。準備が遅かったら、置いていきますからね」
とにかく一度着替えて、きちんとした格好でサターン様の元に向かわないと。そうだわ、どうせ明日には、公爵家で生活をする事になっているのだから、今日から公爵家でお世話になりながら、サターン様のお世話をしよう。
私のせいで、こんな酷い目に遭わせてしまったのだ。せめて私が、責任を持ってサターン様のお世話をしたい。何よりも、私がサターン様の傍を離れたくはないのだ。
よし、そうと決まれば、こうしちゃいられない。早く屋敷に着かないかしら。
王宮から屋敷までは、馬車で15分程度。いつもならあっと言う間に着くのに、今日はやたら長く感じる。
「マリオネット、気持ちは分かるが、少し落ち着きなさい」
お父様が苦笑いをしているが、サターン様の事が心配で、落ち着いてなんていられないのだ。
やっと見慣れたお屋敷が見えてきた。
馬車が停まるなり、一目散に馬車から降りた。すると…
「「「「おかえりなさいませ、お嬢様」」」」」
まだ薄暗い中、使用人たちが皆待っていてくれたのだ。
「まあ、私の為に待っていてくれたの?皆、ありがとう」
私の姿を見た使用人たちが、安堵の表情を見せる。彼らにも、随分と心配をかけてしまったのだろう。いつもならまだ、休んでいる時間の子もいるのに。私の為に、ここで待っていてくれたのだ。
「マリオネット、何をぼっとしているのだい?早く着替えて、サターン殿の元に向かうのだろう?こんなところで、ゆっくりしている暇はないよ。
君たち、悪いがすぐにマリオネットに湯あみを。準備ができ次第、ディーズ公爵家へ向かう予定だから」
「承知いたしました、旦那様」
「さあ、お嬢様、急いでお着替えをなさいましょう」
専属使用人たちが、すぐに部屋へと連れて行ってくれた。既にお風呂の準備も出来ており、そのまま湯あみを行う。
「お嬢様、お怪我はございませんか?血が付いておりましたが」
使用人が傷がないか丁寧に確認しながら、体を綺麗にしてくれる。
「あの血は、サターン様の血よ。私は擦り傷一つしていないわ。ただ、サターン様は酷い怪我を負っていたうえ、意識がなかったの。一時は心肺も停止してしまって…とにかく、彼が心配なの。急いで準備をしてくれる?」
「はい承知いたしました」
ペースを上げつつ、丁寧に洗ってくれる使用人たち。湯あみが終わり部屋へと戻ると、使用人たちが慌ただしく荷物をまとめて外に運び出していた。
「お嬢様、お荷物は全てディーズ公爵家へと運ぶよう手配をしております。私たちも、今日からお嬢様に付いてディーズ公爵家でお世話になりますので、どうかご安心を」
なんと!私が指示を出す前に、既にディーズ公爵家へ行くための準備を整えてくれていたのだ。
ちなみに私がディーズ公爵家で生活を始めると同時に、専属の使用人たちも、ディーズ公爵家に来ることになっていた。予定では明日からだったのに、どうやら今日から一緒について来てくれる様だ。
「あなた達、いつも仕事が早くて助かるわ。本当にありがとう」
「お嬢様が快適に過ごせるようにするのが、私共の仕事ですので。さあ、お着替えも終わりました。急いでディーズ公爵家へ向かいましょう。細かい荷物などは、後で他の使用人が運ぶ予定ですので、ご安心を」
「何から何まで、ありがとう。それじゃあ、行きましょう」




