第52話:どうしてあなたがここに?
食堂に着くと、それぞれ自分の席に着いた。
そして次々と、お料理が運ばれてきた。お母様がおっしゃっていた通り、どれもこれも私の好物ばかりだ。
「まあ、とても美味しいそう。頂きます」
既にお腹ペコペコだ。早速お料理を頂いていく。どれもこれもとても美味しい。しばらくこの味とも、お別れか。そう思うと、なんだか寂しい。
ふと両親のお兄様の方を見ると、なぜか皆私の方を見つめていた。
「お父様もお母様もお兄様も、どうされたのですか?せっかくの美味しいお料理が、冷めてしまいますわ。さあ、早く食べましょう」
3人にも早く料理を食べる様に促したのだが、なぜか涙ぐむ両親とお兄様。本当にどうしてしまったのだろう。もしかして、私があまりにもがつがつ食事をするから、呆れているのかしら?
「すまない、こうやってマリオネットが美味しそうに食事をする姿を、しばらく見られなくなると思うとなんだか寂しくて…」
「まあ、お父様ったら。他国に嫁ぐわけではないのですよ。ディーズ公爵家は、ここから馬車で10分、いつでも帰ってこられますわ」
今生の別れでもあるまいし、そんな悲しそうな顔をしなくても。とはいえ、ずっと一緒に過ごしていたのだ。お父様の気持ちは十分わかる。
「…そうだな、いつまでも考えていても仕方がないな。さあ、私たちも頂こう」
お父様の一声で、両親もお兄様もやっと食事を開始した。
その後は終始和やかな空気の中、食事は進んでいった。
「明日は卒業式や卒業パーティがございますので、私はこれで失礼いたします」
両親とお兄様に挨拶をして、自室へと戻ってきた。湯あみを済ませ、少し早めにベッドに入る。
明日はいよいよ卒業式だ。思い返してみれば、この1年色々な事があった。ずっと思いを寄せていたサターン様に再会できたこと、ひっそりと彼を見つめ続けた日々。
そして心が通じ合ったあの日。辛い事もあったけれど、それ以上に楽しい事や幸せな事が沢山あった貴族学院を、明日卒業する。
そう思うと、なんだか胸が熱くなった。この貴族学院で、私はたくさんの事を学び、大切な人と結ばれた。友人も沢山出来た。
そんな貴族学院とも、明日でお別れ。そう思うと、なんだか寂しい。それでも明後日からは、ディーズ公爵家での生活が始まる。大好きなサターン様の傍にいられるのだ。サターン様には、何度も助けられた。だからこそ、これからはサターン様を支えたい。
何だか急に眠くなってきた。明日も早いし、そろそろ眠ろう。
ゆっくりと瞼を閉じ、眠りについたのだった。
******
ガタン!!
誰もいるはずのない私の部屋、今の物音は一体何?
大きな音で目が覚めた私は、ゆっくり体を起こそうとする。でも、なぜだか体が動かない。まるで体が石の様だ。一体何が起こっているの?
大きく目を見開き、辺りを見渡す。
次の瞬間。
「あれ?目覚めてしまったのかい?おかしいな、マリオネットはデスモン殿の魔法で、ぐっすり眠っているはずなのに。でも、体は動かない様だね」
私の目の前に現れたのは、なんとぺスタナ殿下だ。どうして彼が、ここにいるのだろう。
「どうして私がここにいるのだろう?そんな目をしているね。それはね、君をあの悪魔から助けに来たのだよ。さあ、マリオネット、一緒にあの男から逃げよう。大丈夫だよ、こっちには、大魔法使いのデスモン殿がいるから。
既に出国の準備は出来ている。さあ、行こう」
そう言うと、こっちにゆっくりと近づいてくるぺスタナ殿下。
いや…来ないで…
必死に体を動かそうとするが、全く動かない。その上、叫ぼうとしても声すら出ないのだ。
どうしよう、このままだと私は…




