第49話:自分たちのペースで
「マリオネット、俺の事は気にしなくてもいい。だから友人たちと、食事をしてきてくれ」
サターン様が私に訴えかけてくる。けれど彼の瞳はどこか寂しげだ。私の行いのせいで、サターン様を傷つけてしまった…
クラスメイト達は皆、サターン様を怖がっていた。私と婚約をしたからって、その気持ちは変わる訳ではないのに。それなのに私は!
「ごめんなさい、サターン様。私のせいで、嫌な思いをしてしまいましたね。昨日自分に向けられる嫌悪感を、黒い靄として感じ取ることが出来るとおっしゃっていたのに。朝も先ほども、クラスメイトからその靄を感じていたのでしょう?
それなのに私ったら、無理やりサターン様を、皆様の輪の中にいれようとして。無駄にサターン様を傷つけてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
せっかくサターン様と婚約ができたのに、サターン様を傷つけてしまった。クラスメイト達にも、変に気を使わせてしまったし。私は一体、何をしているのかしら。
「そんな事は気にしなくてもいい。俺は子供の頃から感情が欠如しているのか、誰にどう思われようが、全く気にならない。ただ…君が悲しい思いをしていると思うと、胸が締め付けられる。
俺のせいで、マリオネットまで好奇な目で見られたり、避けられたりして傷つけられたりしたらと思うと…そいつらを八つ裂きにしてしまいそうだ…」
ん?八つ裂き?
「サターン様ったら、その様な物騒な事をおっしゃらないで下さい。サターン様が原因で、私が傷つく事はありませんわ。私の友人たちは、その様な器の小さな人間はおりません。
それに、元々私の事を快く思っていない人もおりましたし。その様な人たちにどう思われようと、私もなんとも思いませんわ。言いたい人には、言わせておけばいいと思っております。
私の事を大切に思って下さっている人たちさえ、傍にいてくれたらそれでよいのです」
「マリオネット…俺もそうだよ。君が傍にいてくれれば、何もいらない。だからどうか、俺の傍から離れないで」
切なそうに私を見つめるサターン様。どうしてまだ、こんなに悲しそうな顔をしているのだろう。
「私があなた様から離れる事は、決してありませんわ。ですからどうか、安心してください」
そう笑顔を向けた。
「さあ、丘に着きました。お昼ご飯にしましょう。私、お腹がペコペコですわ」
早速2人で食事を始める。
「あの腹黒王子のせいで、随分痩せてしまったね。しっかり食べてくれ。これ、好きだろう?たくさん食べて」
よく見ると、サターン様のお弁当は私の好きなものばかりが入っている。
「私が以前お話しした好物を、覚えていて下さったのですか?」
「当たり前だろう、君が話してくれた事は、何一つ忘れていない。マリオネットの事なら、何でも知っているよ。俺は相当君に執着している様だ。今は必死に抑えているが、独占欲も相当強い。
こんな男は、嫌かい?」
「嫌な訳がありませんわ。私もサターン様が大好きなのですから。そもそも半年以上もずっと、あなた様を木の陰から見つめていた様な女なのです。私も大概サターン様に、執着しておりますわ。
卒業まで後少しですし、極力サターン様のお傍にいる様に致しますね。昼食はここで一緒に摂りましょう」
「だが、それだと君が友人たちと過ごす時間が無くなってしまう。後少し我慢すれば、ずっと一緒にいられるのだから、学院にいる間は俺に気を使わなくてもいい」
「私がサターン様と一緒にいたいのです。もちろん友人も大切なので、放課後は友人と過ごしますわ。それに私、こうやってサターン様と一緒に食事をするのが夢だったのです。あと少ししかない学院生活、サターン様との思い出を作りたいのです」
ずっと夢見ていた、こんな風にサターン様と笑い合ってこの丘で過ごすことを。やっと実現できたのだ、この時間をもっと大切にしたい。
「ありがとう、マリオネット。それじゃあお昼は、俺と一緒にいてくれるかい?」
「ええ、もちろんですわ。こちらこそ、よろしくお願いします」




