第47話:久しぶりの学院です
「お嬢様、今日は随分とご機嫌ですね」
「ええ、だって今日からまた、学院に行けるのですもの。それに、大好きなサターン様とも婚約が出来た事を、友人達にも報告できるしね」
ずっと学院に行けずにいたのだ。きっと皆、心配してくれている事だろう。こうやってまた学院に通えるだなんて、嬉しくてたまらない。もしあのままぺスタナ殿下と婚約をしていたら、もう二度と学院に通うことなく、マントレス王国に向かっていたかもしれない。
そう考えると、こうやってまた貴族学院の制服が着られるのも、奇跡なのかもしれない。それもこれも、全てサターン様のお陰だ。
卒業まで後1ヶ月もない。残り少ない学院生活を、めいっぱい楽しもうと考えている。
「マリオネット、今日から学院に行くのね。きっとあなたとサターン様の、婚約話でもちきりよ。素敵な婚約者が出来て、よかったわね」
「はい、とても幸せですわ。それに、やっと今日から学院に行けますし。それでは行って参ります」
笑顔で見送ってくれるお母様に挨拶をして、馬車に乗り込んだ。今日はとてもいい天気、太陽の光が、窓から差し込んできてとても気持ちがいい。
しばらく進むと、見慣れた学院が見えてきた。久しぶりの学院、なんだかわくわくする。いつもの様に馬車から降りると
「おはようございます、マリオネット様。聞きましたわ、サターン様と婚約なされたのでしょう?」
「まさかサターン様とあなた様が、婚約をなさるだなんて」
「てっきりマントレス王国のぺスタナ殿下と婚約を結ぶと思っていたから、びっくりしたよ。それよりも、大丈夫かい?侯爵殿も酷いよな、まさかサターン殿の元に、君を嫁がせるだなんて」
「ディーズ公爵家が、サターン殿の花嫁探しをしているとは聞いていたけれど、まさかこのタイミングで、マリオネット嬢と婚約させるだなんて」
「ディーズ公爵家に婚約を申し込まれて、断れなかったのだろう?可哀そうに」
一気に貴族たちから囲まれたのだ。それもなぜか、おかしな方向に話しが進んでいる。
「あの、皆様、何か誤解をされているようで…」
私がそう叫ぼうとした時だった。皆が一斉に静まり返り、すっと後ろに下がったのだ。1筋の道が出来たと思ったら
「マリオネット、おはよう。朝から人気者だね。それで俺の婚約者にちょっかいを出しているのは、どこのどいつだい?」
真っすぐ私の元にやって来たのは、サターン様だ。私の肩を抱き、自分の方に引き寄せた。さらに令息たちをギロリと睨んでいる。
「い…いや、俺たちは、その…」
令息たちが、恐怖で腰を抜かしそうになっているではないか。このままではまた、サターン様の評判が落ちてしまう。
「皆様、私とサターン様は、ずっと思い合っていたのです。この度私の強い希望により、無事婚約する事が出来ましたわ。どうかこれからは、サターン様共々仲良くしてくださいね」
サターン様に寄り添いながら、笑顔で皆に気持ちを伝えた。これからはサターン様も、貴族の輪の中に…そう思ったのだが…
なぜかすぐに、サターン様に抱きしめられた。
「貴様ら、どういうつもりだ?マリオネットの顔を見て、頬を赤らめるだなんて!マリオネット、他の男にほほ笑まないでくれ。こいつらの瞳に、マリオネットの可愛らしい顔がうつると思うと、怒りで気が狂いそうになる」
今まで聞いた事のない様な低いサターン様の声が、頭の上から聞こえてきたのだ。その上、かなり強く抱きしめられているせいか、身動きが取れないうえ、息もしづらい。
「「「「ひぃぃぃ、申し訳ございませんでした」」」」
貴族たちの悲鳴に近い叫び声と、バタバタとどこかに遠ざかっていく足音が聞こえた。せっかく皆の仲良くなれるチャンスだったのに…でも、今はそれどころではない。強く抱きしめられていて、苦しいのだ。
「さ…サターン様…ぐるじいです…」
背中を叩きながら、必死に訴えた。
「すまない、君が他の男どもに笑顔を振りまくから、ついカッとなってしまった。マリオネット、君はもう俺の婚約者だ。気安く令息どもに近づくのは控えてほしい。
令息共もきっと、もうマリオネットに気安く近づいては来ないだろうが。ただ、油断は禁物だ。極力君の傍を離れない様にしよう。さあ、一緒に教室に行こうか」
「…はい」
まだお怒りなサターン様に腰をがっちりつかまれながら、2人で教室へと向かったのだった。




