第44話:深まる絆
「こうやって外でお茶を飲むのも、悪くはないな。太陽の光がこんなに心地よいものだとは、知らなかったよ」
「まあ、サターン様ったら。サターン様、これからはお天気が良い日は、こうやってお茶に付き合って下さいね。私、中庭でお茶をするのが大好きなのです」
「ああ、もちろんだよ。マリオネットが望むことは、何でもしよう。今まで君には、散々辛い思いをさせて来たからね。こんな俺を、ずっと愛してくれてありがとう。君がいてくれたから俺は…
俺は人の温もりを知ることが出来た。俺は幼い頃から愛情を知らずに生きてきた。母親は俺を嫌っていたし、父親も俺には興味がなかった。使用人たちも、俺とは最低限しか関わろうとしなかった。
貴族どもも俺に怯えて、近づこうともしなかった。それが俺にとっての、当たり前の世界だった。
そんな中、マリオネットに出会ったんだ。俺を真っすぐ見つめる美しい瞳、温かなオーラ、そして太陽のような眩しい笑顔、俺にとっては、どれも衝撃的だった。あの日俺は、君にすっかり心を奪われたんだ。
とはいえ、俺は魔力持ち。俺に好かれたら迷惑だろう、そう思っていたが、その一方で、マリオネットへの思いは、日に日に増していった。そんな中、またマリオネットと再会した。
正直怯えられるのではないかと思っていた。だが君は、あの頃と変わらず…いいや、あの頃よりもずっと美しく魅力的な女性になっていた。正直魔王のような俺を、君のような美しくて優しい女性が、なぜ愛してくれるのか理解出来ないのだよ。
マリオネット、本当に俺の傍にいてくれるのかい?やっぱり嫌だとか、言わないよね?」
サターン様が私を見つめる。その瞳からは、不安がにじみ出ている。そんな彼の手を、そっと握った。
「サターン様は、とても魅力的な人ですわ。強くて優しくて、いつも私を守ってくれる。私にとっては、ヒーローの様な存在なのです。実は私、初めてサターン様に出会った日の記憶が、曖昧だったのです。サターン様がどうやって私を助けてくれたのか、どうしても思い出せなくて…
でも先ほど、なぜかあの時の記憶が戻ったのです。あの日あなた様は、大きな炎を出して、野犬たちにぶつけて倒してくださった。そのせいで、手にやけどを負ったのですよね?怪我までして、守って下さったのです。
あの時からあなた様は、ずっと私のヒーローですわ。サターン様、私はどんなことがあっても、ずっとあなた様の傍におります。あなた様が、私の事が嫌になるまでずっと」
「俺がマリオネットを嫌になる事はない!絶対に」
「それは私も同じ気持ちですわ。それに私、ぺスタナ殿下のせいで、男性に恐怖を感じるようになってしまいましたの。ですので、サターン様以外の男性とどうこうなる事は、絶対にありません。それに私は、もうあなた様の婚約者です。
ですので、どうかもっとご自身に自信を持って下さい」
「そうだな、マリオネットはもう、俺の婚約者だ。すまない、君に野暮な事を言ってしまって。これからは、マリオネットを幸せにすることだけを考える事にするよ」
「それなら既に、私はとても幸せですわ。ですからサターン様が、やりたいようになさってください。私は何があっても、あなた様についていきますから」
サターン様の生い立ちは、何となく知っていた。お母様を早くに亡くされたと。ただ私が知っていた以上に、サターン様はずっと孤独だったようだ。ずっと人の温もりを知らずに育ったサターン様を、これからは私がめいっぱい愛したい。
そう強く思っている。
「ありがとう、マリオネット。君は本当に不思議な子だな。君といると、心が安らぐよ。俺はきっともう、マリオネットなしでは生きていけないだろう。どうかずっと、傍にいてほしい」
「もちろんですわ、これからはずっと一緒です」
笑顔でサターン様に伝えた。するとサターン様に腕を引っ張られ、そのまま抱きしめられる。温かくて落ち着く、サターン様の腕の中。サターン様の匂い…全てが心地よい。
だが次の瞬間、サターン様に引き離されてしまった。もう少し温もりを感じていたかったのに…そう思ったのだが、今度はゆっくりとお顔が近づいてきて、唇が重なる。
「マリオネット、愛しているよ。ずっと一緒だ…」
「ええ、ずっと一緒です」
その後何度も何度も唇を重ねたのだった。
※次回、ぺスタナ視点です。
よろしくお願いします。




