第40話:公爵家へ
そのまま公爵家の馬車に乗り込むと、膝に乗せられ後ろから抱きしめられた。今までのサターン様からは考えられない程、べったりだ。
いつもは私に触れようとしなかったのに、あまりの変わりように頭が付いていかない。
「マリオネット、困惑しているのかい?無理もないな、今までの俺は、君に触れようともしなかったのだから…だが、俺はずっと君に好意を頂いていた。森で出会ったあの日からずっと…
やっと今、こんな風に君に触れられる様になった。もう二度と、君から離れないから。マリオネット、俺は君を愛している。俺との婚約、受け入れてくれるよね?」
真っすぐ私を見つめるサターン様。
「ええ、もちろんですわ。ずっとあなた様をお慕いしておりましたから。サターン様の傍にいられるなら、私は何でもいたします。
ただ、正直まだサターン様が私を受け入れてくれることが、信じられなくて…」
どう見ても、私に好意を抱いていたとは考えられないのだが…
「その件に関しては、後でゆっくり話をしよう。それよりも、まずはやらなければいけない事があるからね。さあ、行こうか」
目の前には、立派なお屋敷が。ここは、ディーズ公爵家だ。
「おかえりなさいませ、サターンお坊ちゃま、マリオネット様。旦那様がお待ちです。どうぞこちらへ」
使用人に案内されて、中に入っていく。さすが公爵家、屋敷の中もとても豪華だ。
「屋敷が気になるのかい?後で屋敷の中を案内するよ。いずれマリオネットも住むことになるのだから」
このお屋敷に、私が住む…
サターン様と婚約をする事が決まっている今、彼の家でもあるこのお屋敷で、いずれ私が暮らすのは当たり前の事だ。けれどやはりまだ夢の中にいる様な、現実味を全く感じない。
「どうぞこちらです」
使用人に案内され、立派なお部屋に通される。そこにいたのは、サターン様にそっくりな男性、公爵様だ。
「ディーズ公爵様、お久しぶりです。夜会の時は助けていただき、ありがとうございました」
あの日、公爵様が助けてくれなかったらきっと、私はそのままぺスタナ殿下に…考えただけで、倒れそうだ。
「こんにちは、マリオネット嬢。お礼を言う必要はないよ。あの汚らわしい男から、未来の義理の娘を守るのは当然だからね」
「マリオネットの両親も、そろそろ来るだろう。さあ、こっちにおいで」
サターン様に促され、ソファに腰を下ろした。それにしても、公爵様とサターン様は、本当にそっくりだ。髪や瞳の色はもちろん、顔の造りまでほぼ同じ。
「何をそんなに嬉しそうな顔をしているのだい?マリオネットは本当に可愛いね。あまり父上の前で、そんなに可愛い顔をしないでくれ。隠したくなってしまう…」
耳元でサターン様の声が聞こえた。私、そんな嬉しそうな顔をしていたかしら?恥ずかしいわ。
「いえ…その…公爵様とサターン様がよく似ていらっしゃったので…」
つい見とれておりました!と、都合の悪い事は心の中で呟く。
「俺と父上が?髪の色や瞳の色は同じだが、そんなに似ているかな?」
2人が不思議そうに首をかしげている。そのしぐさもそっくりで、つい笑いが込みあげてしまう。
その時だった。
「旦那様、お坊ちゃま、ファレリス侯爵夫妻がいらっしゃいました」
使用人に連れられ、やって来たのはお父様とお母様だ。
「ディーズ公爵、サターン殿、お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。この度は、娘のマリオネットをぺスタナ殿下から救って頂き、ありがとうございました。本当になんとお礼を申し上げたらよいか」
「あの日、サターン様が我が家を訪ねて来てくださらなければ、今頃娘はあの王子の元に嫁いでいたでしょう…あなた様は、我が家の恩人ですわ」




