第38話:隠された真実
「サターン殿のお気持ちは分かりました。ですが私も、この国には婚約者を見つけるために来ているのです。やっと見つけた理想の女性を、はいそうですかと言って諦められるほど、私もお人好しではないのでね。
陛下、私にマリオネット嬢を嫁がせてくだされば、今回の条件よりも、もっと好条件で貿易が出来るように手配いたしましょう。アンデルサン王国は今後、貿易に力を入れていきたいのですよね。
それなら尚更、私にマリオネット嬢を嫁がせた方が、この国にとって利益が大きいかと」
確かに彼の言う通り、彼に私を嫁がせた方が、この国にとって利益は大きい。でも、私は…
無意識にサターン様にしがみつく。そんな私を、サターン様が強く抱きしめてくれた。
“大丈夫だ、あんな男にマリオネットは渡さないから!”
耳元でサターン様が呟いたのだ。
そして
「ぺスタナ殿下、あなたがどれほど我が国に良い条件で貿易の話をしても、当のマントレス王国は、その条件で貿易を進めるつもりはありませんよね。そもそもあなたは、本当にこの国に、純粋に花嫁を探しに来たのですか?」
「サターン殿は、一体何をおっしゃっているのですか?私はマントレス王国の第二王子ですよ!父や兄から、貿易に関しても、任されているのです!今までは公務に忙しかったうえ、令嬢が苦手な私を心配した両親や兄が、外交を進めながら花嫁を探してくる様命じられたのです!
あまり失礼な事をおっしゃられるのでしたら、アンデルサン王国との貿易は、今後一切行いません」
強い口調で、ぺスタナ殿下がはっきりと言い切ったのだ。今までそれなりにマントレス王国とは国交を続けて来たのに、こんな形で国交が途切れてしまったら…
「あの、私…」
「マリオネット、大丈夫だから!」
ぺスタナ殿下に考え直してもらう様に話をしようとしたところで、すぐにサターン様に止められた。陛下も王太子殿下もお父様も、どうして何も言わないのだろう。このままだと、本当に国交が途絶えてしまうというのに…
「ぺスタナ殿下がそこまでおっしゃるのでしたら、それで構いません。ですがそれでは、そちらが困るのではないのですか?マントレス王国の陛下や王太子殿下は、自国に有利になる貿易で進める様に指示を出していますよね?
そしてあなたも、それに従った。それにマリオネットの件だって、本当はお飾りの花嫁が必要なのでしょう?
国に残してきた愛する女性とずっと一緒にいるためには、どうしてもお飾りの花嫁が必要ですもんね」
「サターン殿、何をおっしゃっているのですか?私は…」
「ぺスタナ殿下、あなたも知っている様に、我がディーズ公爵家は、情報を集めるのに非常に長けた一族です。あなたの情報を集める事くらい、朝飯前。
あなたは自国で身分の低い平民を愛してしまった。彼女に夢中になり、公務もおろそかにして遊び惚けていたそうですね。マントレス王国の陛下や王太子殿下は、そんなあなたに頭を抱えていた。
身分の低い女性に身を引いてもらおうと、あの手この手を使ったが、うまく行かなかったそうですね。彼女と結婚できないのなら、命すら捨てると言ったあなたに、陛下たちもついに折れて、彼女との結婚を認めた。
だが、平民でもある女性を公に第二王子の花嫁には出来ない。その為、お飾りの花嫁が必要になった。とはいえ、大々的にお飾りの花嫁を探す訳にもいかず、悩んだ末他国の王女をお飾りの花嫁にしようと考えたのですよね?
相手国に有利な条件で貿易を進める代わりに他国の王女を妻に貰い、結婚後はその王女を使って相手国にゆさぶりをかけ、自国に有利な条件で貿易を進めるつもりでこの国に来た。だが予想外だったのが、あなたがマリオネットを気に入ってしまった事。
侯爵令嬢のマリオネットでは、自国に連れて帰っても我が国の王族たちを揺すれない。だが、どうしてもマリオネットを連れて帰りたい。そこであなたは自国にいる両親や兄に相談して、契約を交わすための書類に細工を仕掛けた。それにしても、よくできていますね。この契約書、水をかけて濡らすと、全く違う内容の契約書になるだなんて。この紙は、あなたの隠れアジトから出てきたものですよ」
サターン様が、一枚の紙に、何やら文字を書いている。そして水をかけると、あっと言う間に違う文字に変わったのだ。まさかこんな紙が存在するだなんて…




