第26話:殿方が怖いです
翌朝、貴族学院の制服に着替え、学院へと向かう。学院にはぺスタナ殿下はいないし、今日両親とお兄様が王宮に行って、ぺスタナ殿下との件を話して来るはず。きっと大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせる。
「マリオネット、昨日は大変だったわね。大丈夫だった?」
馬車を降りたところで、レアが私の元にやってきてくれたのだ。レアの顔を見た瞬間、なんだか心が落ち着いた。
「おはよう、レア。昨日は色々とありがとう。お兄様にも話してくれたのよね。お陰様で、随分と気持ちが落ち着いたわ」
「嘘おっしゃい!顔色があまり良くないわ。そうよね、昨日あれだけ怖い思いをしたのだから。私もお父様やお兄様には状況を話しておいたのだけれど…ごめんね、大切なお客様とあって、お父様もお兄様も、ぺスタナ殿下に強くは出られない様で。
本当に情けない話なのだけれど…」
レアが申し訳なさそうに、話してくれた。まさか陛下や王太子殿下にも、話しをしてくれていただなんて。
「私の為に、色々と動いてくれてありがとう。レアには、いつも助けてもらってばかりね」
「何を言っているのよ、私の方こそ、いつもあなたに助けられているわ。昨日だって、アリアの件、ありがとう。あの後カロイド様と、かなりいい感じになった様よ。アリアもあなたには、感謝していたわ。
それに何よりも、私たちは親友でしょう?あなたが困っていたら手を差し伸べるのは、当然だわ」
優しい眼差しでほほ笑んでいるレアを見たら、胸が熱くなった。
「ありがとう、レア。あなたは最高の親友よ」
レアに抱き着いた。温かいレアの温もりを感じたら、なんだか元気が出てきた。
いつまでもぺスタナ殿下の事を、引きづっていても仕方がない。
「マリオネット嬢、久しぶりだね。聞いてよ、あの男のせいで、酷い目に遭ったよ。でも、やっと停学期間が終わって、今日から学院に来ることが出来たんだ。そうそう、聞いたよ。
マリオネット嬢も本格的に、婚約者を探し始めたのだってね。僕なんてどうだい?あいつのせいで停学という不名誉を与えられたが、僕は由緒正しい、ラフレス侯爵家の人間だし、侯爵位を継ぐことも決まっている。
見た目も美しいし」
私達の元に現れたのは、数ヶ月前サターン様によって、停学に追い込まれた侯爵令息、アントニー様だ。どうやら今日から復学した様だ。相変わらず自分勝手な言い分を並べている。まるでぺスタナ殿下の様だ。
レアもあっけに取られて固まっていた。
「さあ、マリオネット嬢。一緒に教室に向かおう」
そう言ってアントニー様が、私の手に触れた時だった。昨日と同じような、ものすごい嫌悪感に襲われたのだ。
「いや」
とっさに手を振り払ってしまった。さすがに失礼だったかもしれない。ただ、どうしても無理で、無意識に近い状態で振り払ってしまったのだ。
「申し訳ございません、あの…私…」
「マリオネット嬢、大丈夫かい?アントニー殿、学院に復帰して早々、マリオネット嬢にちょっかいを出しているのかい?可哀そうに、マリオネット嬢が怯えているではないか。もう大丈夫だよ、俺たちと一緒に教室に行こう」
私の元にやって来たのは、クラスメートの令息たちだ。
「あの…私は…」
令息たちに囲まれ、一気に恐怖に襲われる。今までこんな事はなかったのに…私、一体どうしてしまったのかしら?
「マリオネット嬢、体調がよくないのかい?可哀そうに、俺が医務室に連れて行ってあげるね」
1人の令息が、私に触れようとしたのだ。
いや、お願い、私に触れないで。恐怖から体が縮こまり、強く瞳を閉じた。
「マリオネットは私が…」
レアの声が聞こえたと思ったら、次の瞬間、誰かに抱き寄せられる感覚に襲われた。




