第25話:家族も味方です
「お嬢様、おかえりなさい。随分とお早いお帰りですね」
1人で帰ってきた私を、使用人たちが笑顔で迎えてくれる。
「ええ、少し体調が優れなくて。それで先に帰ってきたの」
「それは大変ですわ。すぐに医者を…」
「お医者様は大丈夫よ。それよりも、湯あみがしたいの」
ぺスタナ殿下に触られた部分が、なんだか気持ち悪いのだ。とにかくさっぱりしたい。
「承知いたしました。既に湯あみの準備は出来ております。どうぞこちらへ」
使用人たちが、私の体を丁寧に洗ってくれた。さっぱりしたところで、ベッドに横になった時だった。
「お嬢様、旦那様と奥様、お坊ちゃまがお話があるとおっしゃられておりますが、いかがなされましょう」
「お父様たちが?わかったわ、すぐに行くわ」
今日早めに帰って来てしまったから、その件でお叱りがあるのかしら?でも、レアが話を付けてくれているはずだし…
不安を抱きながら、お父様たちが待つ部屋へと向かう。
「お父様、お母様、お兄様、お呼びでしょうか?」
ゆっくり部屋に入る。
「マリオネット、レアから聞いたよ。ぺスタナ殿下の件、大変だったね、大丈夫かい?レアも君の事を、とても心配していたよ」
すぐにお兄様が、声をかけてくれた。どうやらレアが、お兄様に全て話してくれていた様だ。
「ええ、お陰様で少し気持ちは落ち着きましたわ。ただ…」
「分かっている、ぺスタナ殿下の事は、受け入れられないのだろう?まさか侯爵令嬢でもあるマリオネットを、自分の部屋に連れ込もうとするだなんて」
「怖かったでしょう。可哀そうに。もう大丈夫よ、明日お父様と一緒に、陛下に抗議に行ってくるわ。あなたをぺスタナ殿下の元に嫁がせたりはしないから、安心してちょうだい」
「お父様、お母様、ありがとうございます。私のせいで、お2人にもいらぬ心配をおかけして申し訳ございません」
「どうしてマリオネットが謝るの?悪いのはぺスタナ殿下でしょう?それにしても、あのディーズ公爵が助けてくれるだなんて。サターン様は昔、マリオネットを助けてくれた命の恩人だし。
あなた、やはりディーズ公爵家に、マリオネットを嫁がせた方がいいのではなくって?マリオネットも、サターン様の事が好きな様だし」
「私もマリオネットには、好きな人の元に嫁がせてやりたいのだが…ディーズ公爵と中々接触できなくてね。あまり関わるのも、よくない気がして…」
「お母様、お父様、私の事を考えて下さり、ありがとうございます。ですが、もう私はサターン様の事を、諦めようと思っておりますの。彼はきっと、私の事が苦手なのでしょう。学院にも、姿を見せなくなってしまいましたし…
ですので私は、別の殿方の元に嫁ぎますわ。ただ、どうしてもぺスタナ殿下は…」
「マリオネットの気持ちは分かったよ。それじゃあ、早急よさそうな令息を探し、マリオネットと婚約をさせよう。マリオネットが婚約したら、さすがにぺスタナ殿下も、手出しは出来ないよ」
「あなた、どうしてマリオネットが焦って殿方と婚約をしないといけないの?ぺスタナ殿下が悪いのだから、はっきりと殿下に“マリオネットはあなたと婚約するつもりも、マントレス王国に行くつもりもない”と、おっしゃればいいじゃない。向こうが先に無礼を働いたのよ」
お母様がプリプリと怒っている。確かに先に無礼を働いたのは、向こうなのだが…
「そうは言っても、相手はマントレス王国の第二王子だぞ。陛下も穏便に済ませたいだろうし、私も事を大きくしたくはないのだよ。それにぺスタナ殿下とマリオネット、2人きりの時に起こった事だし。
ぺスタナ殿下からその様な事は言っていないと突っぱねられたら、終わりだ。とにかく穏便に事を済ませた方がいい」
お父様の言い分も理解できる。確かに他国の王子を怒らせると、面倒な事になるだろう。
「私も、穏便に事を済ませたいです。とにかく私は、ぺスタナ殿下との婚約を阻止して下されば、それで十分ですわ」
「マリオネットがそう言うなら…でも私は、マリオネットが軽視されている様で、なんだか納得いかないわ」
お母様が不服そうな顔をしている。確かに私も納得いかないが、この国の令嬢として生きる以上、穏便に済ませる事も大切なのだ。
とはいえ、家族も味方でいてくれる様で、よかったわ。これでぺスタナ殿下との関りもなくなるだろう。




