第23話:違和感しかありません
悩んでいても仕方がない。私はサターン様の事を、諦めると決めたのだ。とにかく一度、ぺスタナ殿下とお話をしてみよう。
そう思い、中庭へとやって来た。
「殿下、こちらが王宮の中庭ですわ。こっちには、立派なバラ園があるのです。その奥が…」
「花の話はいいよ。暗いしよく見えないし、何よりも私は、花にあまり興味がなくてね。それよりも、君の事を教えてくれるかい?それにしても、美しい子だね。月の灯りに照らされると、尚更綺麗だよ。
さあ、ここに座って話をしよう。こっちにおいで」
私の腕をひき、ソファに座らされた。隣にはぴったりと、ぺスタナ殿下がくっ付いている。さすがに近すぎないかしら?
そっと距離を置こうとするのだが、なぜか肩をがっちりと掴まれていて動けない。ちょっと、どうしてこの人、こんなに距離が近いの?さすがに近すぎるわ。
「君は本当に美しいね。我が国にも綺麗な令嬢はたくさんいるが、君ほど美しい女性は初めて会ったよ。わざわざアンディルサン王国まで来たかいがあった。マリオネット嬢、どうか私と一緒に、マントレス王国に来てくれませんか?
もし君が私に嫁いでくれると言うのなら、君の望むものを何でも与えてあげるよ。どうだい?悪い話ではないだろう?」
「あの…急にその様な事を言われましても…殿下とは今日であったばかりですし。それに私は、殿下の事を何も知りませんし…」
何よりもあなたの強引さや、胡散臭い笑顔が苦手なのよ。なんて事は言えない。
「時間なんて関係ないよ。私と君の出会いは、運命なんだ。マリオネット嬢、私と君は結ばれる運命なんだよ」
私の手を握り、訳の分からない事を呟くぺスタナ殿下。どうしよう、この人、完全に自分の世界に入っている。とにかくこの場を抜け出さないと。
「私の事を、その様に評価して頂いてとても光栄ですわ。ですがこの国には、非常に優秀で美しい令嬢たちがたくさんいらっしゃいます。どうやら皆様、殿下に魅了されている様ですし。
あなた様ほど美しく優秀で魅力的な方は、私の様な人間にはもったいのうございます。どうか彼女たちの中から、結婚相手をお探しになってはいかがでしょうか」
ぺスタナ殿下が、非常に優秀で魅力的な事は理解している。けれど、どうしても彼との結婚には前向きになれないのだ。
きっと私の中には、まだサターン様の存在が強く残っているのだろう。
「マリオネット嬢は、非常に謙虚なのだね。実を言うと、今までずっと令嬢たちに追われる立場だったのだよ。確かに好意を抱いてくれる令嬢たちの気持ちは嬉しいのだが…あまりにも強引に追いかけまわされると、なんだか嫌気がさしてしまってね。
それで謙虚で優しい、君みたいな令嬢を探していたのだよ。やっぱりマリオネット嬢は、私の運命の相手だ。どうか私と一緒に、マントレス王国に来てくれ。君ならきっと、エイラとも仲良くできるよ」
私の手を握り、興奮気味に話しかけてくるぺスタナ殿下。
「落ち着いて下さい、ぺスタナ殿下。そんな急にマントレス王国こいと言われましても、困りますわ。それにエイラ様とは?」
「すまない、興奮してしまった。だが、私は運命の相手の君を逃がさないよ。謙虚で美しい君に婚約者がいないだなんて、やはり私たちは運命でしかないのだよ。そうだ、今から私の部屋で、ゆっくり愛を語ろう」
この人、何を言っているの?殿下の部屋ですって?婚約者でもない殿方のお部屋に行くだなんて、あり得ないわ。
「殿下、申し訳ございません。私たちは、婚約を結んでいる訳ではございません。その様な状況で、殿下のお部屋に参る訳にはいきませんわ」
断固として拒否だ。




