第22話:ぺスタナ殿下とご対面です
「ありがとう、マリオネット。あなたのお陰でアリア、とても嬉しそうよ」
私の元にやって来たのは、レアだ。
「あら、私は何もしていないわ。ただ少しだけ、アシストをしただけ。どうやらカロイド様も、アリアちゃんの事が気になっていた様ね。このまま2人が、結ばれてくれるといいのだけれど」
「あら、きっと大丈夫よ。あなたが手をかけたカップルは、皆結ばれているのですもの。ねえ、マリオネット、侯爵様にそろそろ真剣に婚約者選びを進めると話したのですってね。さっき聞いたわ。
あなたはまだ、サターン様の事が好きなのでしょう?もう少し彼を待ってみても、いいのではなくって?私はね、あなたには後悔して欲しくないの。本当に好きな人と、幸せになって欲しいと思っているのよ」
レアが真剣な表情をしている。レアがそんな事を言うだなんて…
「どうしたの?あなたがそんな事を言うだなんて。いつも“サターン様の事は諦めて、他の殿方を探せ”と、言っていたのに。それでも私の気持ちに寄り添ってくれて、ありがとう。でもね、私ももう15歳でしょう。こうやって1人で夜会に参加していると、色々と考えてしまうのよ。
いい加減、現実を見なければってね。きっとサターン様とは、結ばれる事はないと思うの。それならば、今まで好き勝手させてもらった分、家の為に結婚したいと思っていて。出来るだけ我が家にとってメリットの大きい相手と、結婚しようと考えているの」
きっとサターン様ほど、誰かを好きになる事はないだろう。それならせめて、侯爵家の役に立ちたいのだ。
「マリオネットったら、今時家の為に結婚だなんて、ナンセンスだわ。確かにあまり身分の差が大きいと良くないけれど、皆ある程度好きな人と結婚しているのだから。王女の私ですら、好きな人と婚約したのよ。だからあなたも…」
「レア殿下、こんばんは。随分楽しそうに話しをしているのだね。隣にいる美しい女性は、どちら様ですか?」
穏やかな表情を浮かべ、こちらにやって来たのは、ぺスタナ殿下だ。さっきまで囲まれていたはずなのに。とにかく挨拶をしないと。
「お初にお目にかかります。ファレリス侯爵の娘、マリオネットと申します。どうぞお見知りおきを」
令嬢らしくカーテシーを決めた。
「ファレリス侯爵家といえば、マンドル殿の」
「はい、妹にございます」
「マンドル殿の妹君か。彼の妹は、この国で3本の指に入るほど美しい令嬢だと聞いていたいが。本当に噂通り、美しい子だね。桃色の髪の令嬢なんて、初めて見たよ」
じっくりと私の顔を眺めるぺスタナ殿下。いくら王族でも、さすがに失礼だろう。だが、そんな事は言えない。
「ぺスタナ殿下、あちらに令嬢たちが待っておられますよ」
それとなくレアが、殿下の興味を別に移そうとしてくれているが…
「レア殿下、私はこの国に花嫁を探しに来ているのだよ。確かマリオネット嬢には、特定の婚約者がいないと聞いている。せっかくだから、中庭でも案内してもらおうかな。君は王宮にも詳しいのだろう?綺麗にライトアップしていると聞いたよ。早速行こう」
私の手を引き、歩き出したぺスタナ殿下。なんて強引な人なのかしら?
「あの、私は…」
「殿下、中庭でしたら私がご案内いたしますわ。マリオネットよりも、私の方が王宮の事は詳しいですので」
すかさずレアが、間に入って来てくれたのだ。きっと私が困惑している事を察知してくれたのだろう。
「レア殿下には、マンドル殿がいるのだろう?いくら私が美しいからって、婚約者を差し置いて、私の方に来ようとするのはいかがなものかと。それに私は、マリオネット嬢と2人きりで話がしたいのだよ。それじゃあ、行こうか」
私の手を握り、そのまま歩き出したぺスタナ殿下。レアはただ、私を助けようとしてくれただけなのに…
「あの、ぺスタナ殿下、レアは私の事を心配して、自分も行くと申したのです。ですからレアの事を…」
「君は友達思いの、優しい子なのだね。見た目だけでなく、心まで綺麗だなんて。別に私は君を取って食べたりはしないから、安心してくれ。ただ、話しがしたいだけだから」
話がしたいだけ…そう言われてしまったら、これ以上何も言えない。
よく考えてみれば、もし私がぺスタナ殿下に見初められたら、きっと我が侯爵家にも莫大な利益をもたらすだろう。それに国を離れたら、少しはサターン様への思いも薄れるかもしれない。




