第17話:幸せな時間~サターン視点~
ゆっくりと顔をあげたマリオネットと、目が合った。目にはうっすらと涙を浮かべていたマリオネットだったが、俺を見た瞬間、ぱぁっと顔が明るくなり、眩いばかりのオレンジ色の光を発しだしたのだ。
その光に包まれた瞬間、俺の心は妙に落ち着いた。やっぱり俺にとってこの子は、かけがえのない大切な子なんだ。彼女がいるだけで、俺の心はこんなに穏やかになるのだから…
て、今はそんな事を考えている場合ではない。あろう事か、可愛いマリオネットのおでこと足から、血が出ていたのだ。
マリオネットが怪我をしている、なんて事だ!すぐに手当てをしないと!
そう思い、マリオネットの腕を掴み、その場に座らせた。手から伝わる彼女の温もりを感じた時、再び魔力が暴走しそうになるのを、必死におさえた。
そしてガーゼで傷口を軽く拭き、薬を塗るふりをしてそっと魔法をかけた。綺麗に傷は治っているはずだが、その事を知られてはいけないため、ガーゼで傷口を隠した。
そんな俺に、嬉しそうにお礼を言うマリオネット。5年前の事を話題に出し、話しをしている。俺にとって5年前のあの出来事は、今も忘れる事のない大切な思い出だ。マリオネットもまた、俺と同じように5年前の事を覚えていてくれていたことが嬉しかった。
ただ…
友達になりたいと言った事が、どうしても引っかかったのだ。俺はマリオネットを、異性として愛している。だが、マリオネットは、俺の事をあくまでも友人として接したいという事か?そう思うと、どうしても受け入れられなかった。
マリオネットの友人になんて、なりたくはない!1人の男として、見て欲しいのだ。それなのにマリオネットは…
妙に腹が立ち、その場から立ち去ろうとしたのだが、なぜか必死に引き留めてくる。またここに来たいと、訴えてきたのだ。
そんな彼女に俺は“好きにしろ”という言葉をかけ、その場から去った。言葉を発した後、もう少し気が利いた事の1つでも言えたらよかった…と後悔したが、生憎気が利いた言葉など思いつかない。俺はどうしようもない男なのだ。
それでもマリオネットは、翌日から俺の傍にやって来ては、俺の顔を見つめたり一緒に本を読んで感動して泣いたり、時には今日の出来事を話したりして過ごしていた。
愛想もなく何も話さない俺と一緒にいても、つまらなくないのだろうか?そう思ったが、彼女はいつも嬉しそうだ。増々オレンジ色の輝きが増していく。
それが妙に嬉しかった。それと同時に、もっとマリオネットと一緒にいたい、彼女に触れたい、会話をしたいという思いが強くなっていく。だが俺がマリオネットを直視すると、感情が高ぶり魔力が暴走しそうになるため、つい冷たくあしらってしまうのだ。
それでも彼女は毎日俺の元に来てくれる、それが嬉しくて幸せでたまらない。
そんな日々が続いたある日、珍しく俺よりも先にマリオネットが家に帰ると言い、一礼して去って行った。そんな彼女の後を、そっと付ける。
マリオネットが丘に来るようになってから、密かに彼女が無事馬車に乗り込むかで見送っていた。それはマリオネットがまだ、俺に話し掛けられずにそっと木陰から眺めていた時からの日課だ。
急ぎ足で歩くマリオネットの後をつけていると、あろう事かマリオネットに絡む令息の姿が。あの男は確か、公爵令息のドリーだ。俺とは正反対のタイプで、整った顔立ちをいい事に、令嬢を食い物にしている男。
もしかしてマリオネットも、あの様な男が好きなのか?そう思ったが、明らかにマリオネットの顔が引きつっている。それなのに、お構いなしにマリオネットに迫るドリー。
おのれドリーめ、俺のマリオネットに触れるだなんて、許せない!怒りの感情が溢れ出し、ドリーを睨みつけると同時に、彼らを撮影する。この証拠を元に、あの男を二度とマリオネットに近づけない様にしてやる!
そんな俺に気が付いたドリーが、真っ青な顔をして逃げていった。だが、マリオネットに触れた事、絶対に許せない。
すぐに魔力を使い、あの男の悪事を暴き出し、学院側に提出、無事あの男を卒業まで停学にする事に成功した。
誰であろうと、俺のマリオネットに近づく奴は許さない!マリオネットは、俺の大切な人のだから…




