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19/21

第19話「お客様は、全員うちの仲間です」

世界の終わりまで、あと五十九分。


 そんな状況で、俺は人生最大のセールを始めようとしていた。


 ただし、売る商品はない。


 値段もつけない。


 おまけに、客が増えるほど俺の責任が重くなる。


 商売としては、最悪だ。


 それでも。


「いらっしゃいませ!」


 俺は、王都支店の扉を大きく開けた。


「本日、当店は特別営業を行います!」


 通りを行き交う人々が、足を止めた。


 空には巨大な亀裂。


 街には避難を呼びかける鐘の音。


 王国軍の兵士が走り回り、商人たちは店を閉め、子供たちは泣いている。


 その真ん中で。


 俺だけが、営業を始めようとしていた。


「……レオン様」


 セレスティアが、額を押さえた。


「念のため確認しますけれど、正気ですわよね?」


「たぶん」


「たぶんでは困ります!」


 俺は笑った。


「大丈夫です。勝算はあります」


「何割ですの?」


「……一割くらい?」


「今すぐ営業を中止してください!」


 もっともな意見だった。


 だが。


 俺には、ひとつだけ確信があった。


 世界を支配しようとした過去の俺は、失敗した。


 自分を犠牲にしようとした俺も、失敗した。


 そして、あの監査官は、俺に誰か一人を選ばせようとしている。


 ならば。


 七回目の俺が選ぶべき道は、きっと違う。


 誰かを支配するのでもない。


 誰かを犠牲にするのでもない。


 俺の店を、みんなの店にする。


 そのために必要なのは、魔法でも剣でもなかった。


 商人として、俺がずっとやってきたことだ。


「ミロ!」


「はい!」


「紙とインク! あと、店にある一番大きな看板を!」


「分かりました!」


「ユリウス!」


「何だ!」


「店の前に並ぶ人の整理を頼む!」


「……並ぶ人?」


「そうだ!」


 俺は、にやりと笑った。


「今から、王都で一番大きな行列を作るぞ!」


     *


 最初の客は、パン屋のおばさんだった。


「……レオンさん」


「いらっしゃいませ!」


「こんなときに、何を売るんだい?」


「安心です」


「……は?」


 おばさんは、怪訝そうな顔をした。


 当然だ。


 俺だって、逆の立場なら怪しいと思う。


「ただし、無料です」


「……無料?」


「はい。その代わり、ひとつだけお願いがあります」


 俺は、店の壁を指差した。


 そこには、いつもの規則が並んでいる。


『店内での暴力行為は禁止』


『店内での窃盗は禁止』


『店内での脅迫は禁止』


『店内での種族による差別は禁止』


 そして、新しく追加した規則。


『当店では、お客様の同意なく、命や記憶を商品として扱うことを禁止します』


「この規則を、守っていただけますか?」


 おばさんは、目を丸くした。


「……そんなこと?」


「はい」


「守るも何も、当たり前じゃないか」


 俺は、頷いた。


「では、こちらに名前をお願いします」


「名前?」


「この場所を、安全な場所にすることに同意したという記録です」


 おばさんは、少し考えた。


 そして、紙に名前を書いた。


「……これでいいかい?」


「ありがとうございます!」


 その瞬間。


 俺の視界に、文字が浮かんだ。


【境界拡張申請を検知】


【対象区域:店舗前面】


【対象者の同意:確認】


【管理者の責任受諾:未確認】


 ……来た!


 俺は、息をのんだ。


 やっぱり。


 この力は、ただ範囲を広げればいいわけじゃない。


 そこにいる人が規則を受け入れること。


 そして。


 俺が、その場所に責任を持つこと。


 俺は、心の中で答えた。


 引き受ける。


【管理者の責任受諾を確認】


【対象区域の境界を検証中】


 店の入口が、淡く光った。


 光は、ゆっくりと石畳の上を進む。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 そして。


 店の前に置かれた看板のところで、止まった。


【境界拡張:成功】


【拡張区域:店舗前面・三メートル】


 俺は、拳を握った。


「……よし!」


 おばさんが、目を丸くした。


「……何だい、今の光は?」


 俺は、笑った。


「当店の、新しいサービスです」


     *


「……三メートル?」


 ユリウスが、呆然と呟いた。


「世界を救うには、少々短くないか?」


「最初は、こんなものだ」


 俺は、帳簿に数字を書き込んだ。


 境界拡張。


 三メートル。


 対象者一名。


 管理者負荷、不明。


「……負荷?」


 俺は、視界に浮かんだ文字を見つめた。


【境界維持負荷:微小】


【管理者の処理能力:正常】


 なるほど。


 範囲を広げれば、負荷が増えるのか。


 なら、無制限には広げられない。


 だが。


「……方法はある」


 俺は、店の外を見た。


 そこには、パン屋のおばさんが立っていた。


「皆さん!」


 おばさんが、通りへ向かって叫ぶ。


「この店の前は、安全だよ!」


 近くにいた人々が、顔を上げた。


「……本当か?」


「魔物が来ても大丈夫なのか?」


「分からないけど、ここはレオンさんの店だよ!」


 おばさんは、胸を張った。


「私は、この店に何度も助けてもらった!」


 その声に、何人かが近づいてきた。


 鍛冶屋。


 八百屋。


 荷運びの青年。


 子供を抱いた母親。


 俺は、一人ひとりに規則を説明した。


 暴力を振るわないこと。


 盗まないこと。


 脅さないこと。


 種族で差別しないこと。


 命や記憶を、本人の同意なく商品にしないこと。


 そして。


「ここで困っている人がいたら、できる範囲で助けてください」


 俺は、そう付け加えた。


 規則を守るだけなら、簡単だ。


 だが、安心できる場所を作るには、それだけでは足りない。


 誰かが転べば、手を貸す。


 子供が泣いていれば、声をかける。


 食べ物が足りなければ、分け合う。


 俺一人で、全員を守ることはできない。


 だから。


 みんなにも、少しずつ力を貸してもらう。


 人々は、次々と名前を書いた。


【境界拡張申請を検知】


【対象者の同意:確認】


【管理者の責任受諾:確認】


【境界拡張:成功】


 光が、さらに広がった。


 三メートル。


 十メートル。


 二十メートル。


 店の前の広場が、淡い光に包まれる。


 その瞬間。


 空から、小さな黒い破片が落ちてきた。


「危ない!」


 ユリウスが叫ぶ。


 破片は、広場にいた子供へ向かって落下した。


 だが。


 光の境界に触れた瞬間。


 ぱきん。


 破片が、砕け散った。


 子供は、無事だった。


 母親が、泣きながら抱きしめる。


 周囲から、歓声が上がった。


「……守られた!」


「本当に、安全なんだ!」


「レオンさんの店だ!」


 俺は、息を吐いた。


 ……よかった。


 少なくとも、今の破片は防げた。


 だが、視界に警告が浮かぶ。


【境界維持負荷:上昇】


【管理者の処理能力:七十八パーセント】


 ……まずいな。


 まだ、広場の一部しか守れていない。


 このまま王都全体へ広げれば、俺が先に倒れる。


 俺は、帳簿を見つめた。


 何か、方法はないか。


 もっと効率よく。


 もっと多くの人を。


 守る方法は。


     *


「……レオン様」


 セレスティアが、俺の肩を叩いた。


「少し、よろしいですか?」


「何ですか?」


「あなた、ひとつ勘違いをしていますわ」


「……え?」


 彼女は、帳簿を指差した。


「管理者の処理能力を、すべてご自分で負担しようとしているでしょう?」


「……はい」


「それでは、世界中を守ることなど不可能です」


 俺は、頷いた。


「分かっています」


「いいえ。分かっていません」


 セレスティアは、きっぱりと言った。


「あなたは商人でしょう?」


「……はい」


「ならば、なぜ、すべてを自分でやろうとするのです?」


 俺は、息をのんだ。


 ……あ。


「……そうか」


 俺は、帳簿を見た。


 店舗経営。


 仕入れ。


 販売。


 配送。


 会計。


 どれも、一人ではできない。


 だから、人を雇う。


 役割を分ける。


 責任を明確にする。


 ……そうだ。


 世界を守るのだって、同じじゃないか。


「……セレスティア」


「はい」


「あなた、天才ですね」


 彼女は、少しだけ頬を赤くした。


「……今さらですわ」


 俺は、笑った。


 そして、視界に向かって命じた。


 境界管理。


 補助管理者の設定は可能か?


 数秒間、沈黙。


 そして。


【境界管理機能を検索中】


【補助管理者制度:存在】


【利用条件:未達成】


 ……ある!


 俺は、息をのんだ。


 条件は?


【補助管理者登録条件】


【一、管理者による正式な委任】


【二、対象者による自発的な同意】


【三、対象者が管理区域内の責任を引き受けること】


【四、管理者が最終責任を保持すること】


 俺は、笑った。


 ……できる。


 これなら。


「ユリウス!」


「何だ!」


「お前、店長代理をやる気はあるか?」


 ユリウスが、目を丸くした。


「……は?」


「補助管理者だ」


「……何だ、それは」


「簡単に言えば、支店長みたいなものだ」


 ユリウスは、しばらく俺を見つめていた。


 そして。


「……給料は上がるのか?」


 俺は、思わず笑った。


「時給十二銅貨から、十五銅貨にしよう」


「安い!」


「世界が終わりそうなんだから、少しはサービスしてくれ!」


「……仕方ないな」


 ユリウスは、笑った。


「引き受けよう」


 その瞬間。


【補助管理者登録申請を検知】


【対象者:ユリウス】


【同意:確認】


【責任受諾:確認】


【登録:成功】


 白い光が、ユリウスを包んだ。


 彼は、驚いたように自分の手を見た。


「……何だ、これは」


 俺は、笑った。


「今日から、お前も店長だ」


 ユリウスは、しばらく黙っていた。


 そして。


「……俺が?」


「ああ」


「……勇者ではなく?」


「もちろん」


 俺は、頷いた。


「うちの店長代理だ」


 ユリウスは、目を伏せた。


 そして、小さく笑った。


「……悪くないな」


     *


 そこからは、早かった。


 セレスティアが、契約書を作る。


 ユリウスが、王国軍の兵士たちへ説明する。


 リリアーナが、魔族の商人たちへ協力を呼びかける。


 ヴァルガは、三千の魔族兵を動員して避難路を確保した。


 ミロは、帳簿と名簿を管理する。


 美咲は、境界管理の仕組みを調べ続けた。


 そして、俺は。


 ひたすら、人に会った。


 パン屋。


 鍛冶屋。


 宿屋。


 薬屋。


 王国軍。


 魔族の商人。


 貴族。


 冒険者。


 誰もが、最初は戸惑った。


 だが。


「この規則を、守っていただけますか?」


 俺がそう尋ねると。


 ほとんどの人が、頷いた。


 暴力を振るわない。


 盗まない。


 脅さない。


 差別しない。


 そんな当たり前のことを、守るだけでいい。


 ただし、俺は必ず説明した。


「境界は万能ではありません。落下物や攻撃を防げても、すべての危険を防げる保証はありません」


 そして。


「ここで困っている人がいたら、助け合ってください」


 人々は、頷いた。


 そのたびに。


 光が、広がった。


 王都の大通り。


 市場。


 広場。


 そして、城門へ。


【境界拡張:進行中】


【補助管理者:十二名】


【管理者の処理能力:六十三パーセント】


 俺は、息を吐いた。


 ……いける。


 補助管理者を増やせば、負荷を分散できる。


 ただし、最終責任は俺に残る。


 無限に広げられるわけではない。


 それでも。


 さっきまで三メートルだった境界が、今は王都の半分近くを覆っていた。


 そのとき。


 空に、文字が浮かんだ。


【管理権保持期限:残り三十分】


 俺は、拳を握った。


 ……あと三十分。


 間に合うか。


     *


「……何をしている!」


 怒鳴り声が響いた。


 振り返ると、マルセルが立っていた。


 その背後には、ベルク商会の護衛たち。


「レオン殿!」


 彼は、顔を真っ赤にしていた。


「あなたは、何をしているのです!」


「見てのとおり、営業中です」


「ふざけるな!」


 マルセルは、周囲を指差した。


「これは、管理権の不正拡張だ!」


 俺は、首をかしげた。


「不正?」


「正式な許可もなく、管理区域を拡張している!」


「許可なら、いただいていますよ」


「……誰に!」


 俺は、周囲の人々を見た。


 パン屋のおばさん。


 鍛冶屋。


 荷運びの青年。


 王国軍の兵士。


 魔族の商人。


 そして、子供たち。


「ここにいる皆さんです」


 マルセルは、言葉を失った。


「……何?」


「全員、規則に同意してくれました」


 俺は、笑った。


「そして、俺が責任を引き受けました」


 マルセルは、歯を食いしばった。


「……そんなものが」


 そのとき。


 セレスティアが、前へ出た。


「マルセル殿」


「……何ですか」


「ベルク商会の管理権移転申請について、法務院へ異議を申し立てました」


 マルセルの顔が、引きつった。


「……何?」


「二百年前の契約書は、初代店主の承認を欠いています」


 セレスティアは、書類を掲げた。


「したがって、優先承継権は成立していません」


「……それは、管理機構が判断することだ!」


「いいえ」


 セレスティアは、静かに言った。


「少なくとも、この王国における店舗の所有権は、王国法に従います」


 マルセルは、黙った。


「そして、法務院はすでに、ベルク商会による強制的な店舗接収を差し止めています」


 彼女は、微笑んだ。


「あなた方には、店を奪う権利などありません」


 周囲から、歓声が上がった。


 マルセルは、顔を歪めた。


「……まだ、終わっていない」


 俺は、彼を見た。


「ええ」


 俺は、頷いた。


「まだ、終わっていません」


 そして。


「だから、最後まで営業します」


     *


 残り二十分。


 境界は、王都のほぼ全域へ広がっていた。


 補助管理者は、三十六名。


 王国軍。


 魔族の兵士。


 商人。


 冒険者。


 それぞれが、自分の区域に責任を持っている。


 俺の視界には、数字が浮かんでいた。


【境界維持負荷:高】


【管理者の処理能力:四十一パーセント】


 ……まだ、いける。


 だが。


 問題があった。


「……おかしい」


 俺は、王都の地図を見つめた。


 境界の光は、街の大部分を覆っている。


 南門。


 中央市場。


 職人街。


 王城周辺。


 どの区域も、補助管理者の登録が完了していた。


 ところが。


 北区画だけが、ぽっかりと暗い。


 まるで、地図に穴が開いているようだった。


「……なぜ、ここだけ広がらない?」


 俺は、指で北区画を示した。


 ミロが、帳簿をめくる。


「店長。北区画の住民名簿だけ、提出されていません」


「……何?」


「他の区域は、町内の代表者が同意を集めてくれました。でも、北区画は誰からも返事がありません」


 セレスティアが、眉をひそめた。


「北区画の自治組合は、ベルク商会の管理下にありますわ」


 俺は、顔を上げた。


「……つまり?」


「住民への連絡網も、避難所の使用許可も、ベルク商会が握っています」


 ……あいつら。


 俺は、歯を食いしばった。


「でも、住民の同意さえ取れれば、境界は広がるはずでしょう?」


「通常なら、そうですわ」


 セレスティアは、地図を見つめた。


「ただ、北区画にはベルク商会の大倉庫があります」


 彼女は、倉庫の位置を指差した。


「ここには、二百年前の境界商会から引き継いだという古い設備が保管されているはずです」


 俺は、息をのんだ。


 ……古い設備?


 その瞬間。


 美咲が、俺の隣へ駆け寄ってきた。


「レオン!」


「どうした?」


「境界の記録を調べていたんだけど……北区画、普通じゃない」


 彼女は、俺の視界に小さな図を映し出した。


 王都を覆う白い光。


 そして、北区画の中央にある黒い点。


「ここから、別の管理信号が出ている」


「……別の?」


「うん。ベルク商会が持っている古い認証設備だと思う」


 俺は、眉をひそめた。


「それが、どう関係するんだ?」


「境界の拡張は、隣り合う区域の接続を確認しながら進む仕組みなの」


 美咲は、図を指差した。


「だから、北区画だけが空白のままだと、王都全域を一つの管理区域として確定できない」


 俺は、息を止めた。


「……つまり」


「今のままでは、共同管理制度へ移行できない可能性がある」


 美咲の声が、低くなった。


「北区画が、王都全体の境界を完成させるための最後の接続点になっているの」


 俺は、地図を見つめた。


 ……そういうことか。


 北区画を放置すれば、そこにいる人々が危険なだけじゃない。


 王都全体を守る仕組みまで、不完全なままになる。


「……別の場所から接続できないのか?」


 俺は、尋ねた。


 美咲は、首を振った。


「試した。でも、北区画の古い設備が接続要求を拒絶している」


「設備を止めれば?」


「それも、外部からは無理」


 彼女は、俺を見た。


「認証鍵を持つ管理者が、現地で接続を確認する必要がある」


 俺は、息をのんだ。


 ……俺が。


 行かなければならない。


 そのとき。


 空に、赤い文字が浮かんだ。


【警告】


【王都境界網に未接続区域を検知】


【対象区域:北区画】


【旧認証設備による接続妨害を確認】


【全域共同管理への移行条件:未達成】


 俺は、拳を握った。


 ……確定だ。


 北区画をつながなければ、共同管理制度は使えない。


 そして、管理権保持期限は残り二十分。


 時間がない。


「ユリウス!」


「何だ!」


「北区画へ向かう。護衛を頼む!」


 ユリウスが、即座に頷いた。


「分かった!」


 だが、セレスティアが俺の腕を掴んだ。


「待ってください!」


「……セレスティア?」


「現地は危険です。管理者であるあなたが倒れれば、王都全体の境界が維持できなくなるかもしれません」


 そのとおりだった。


 俺が倒れれば、ここまで広げた境界がどうなるか分からない。


 それでも。


「……行きます」


 俺は、はっきり答えた。


「北区画を放っておけば、結局、王都全体が危なくなる」


 セレスティアは、唇を噛んだ。


「……ですが」


「俺だけで行くわけじゃありません」


 俺は、ユリウスを見た。


「頼りになる店長代理がいますから」


 ユリウスは、苦笑した。


「時給十五銅貨で、ずいぶん働かせるな」


「帰ってきたら、昇給を考える」


「今のうちに書面にしておけ」


 俺は、思わず笑った。


 こんな状況でも、こいつはこいつだ。


 そのとき。


 ミロが、小さな声で言った。


「……店長」


「何だ?」


「僕も、北区画に行きます」


 俺は、目を見開いた。


「……ミロ?」


 彼は、震える手で帳簿を抱えていた。


「北区画には、母さんがいるんです」


 俺は、息を止めた。


 ……そうだった。


 ミロの母親は、北区画の小さな家に住んでいる。


 薬は手配できた。


 だが、まだ届けられていない。


「……母さん、歩けないんです」


 ミロは、俯いた。


「避難するように言われても、一人じゃ動けません」


 俺は、何も言えなかった。


「それに……」


 ミロは、帳簿を開いた。


 そこには、北区画の住民の名前が書かれていた。


「僕、前に母さんの薬を探していたとき、北区画の薬屋さんや近所の人たちに助けてもらったんです」


 彼は、顔を上げた。


「だから、誰がどこに住んでいるか、少し分かります」


 俺は、帳簿を見た。


 薬屋。


 仕立屋。


 荷運び職人。


 小さな食堂。


 そして、ミロの母親。


 それぞれの名前の横には、住所が書かれていた。


 ……そうか。


 ベルク商会が住民名簿を出さなくても。


 ミロは、自分で人とのつながりを記録していたんだ。


「……ミロ」


「はい」


「その帳簿、すごく助かる」


 ミロの目が、大きく開いた。


「……本当ですか?」


「ああ」


 俺は、頷いた。


「俺たちが北区画へ行く理由が、もう一つ増えた」


 彼は、俺を見つめた。


「……理由?」


「君のお母さんを助ける」


 俺は、笑った。


「それから、北区画のみんなを守る」


 ミロの目に、涙が浮かんだ。


「……はい!」


 その瞬間。


 遠くから、悲鳴が聞こえた。


 北区画の上空。


 黒い亀裂が、急激に広がっている。


 そこから、巨大な破片が落下した。


 建物が、崩れた。


 煙が、上がる。


「……まずい!」


 ユリウスが叫んだ。


「北区画が危ない!」


 俺は、地図を握りしめた。


 もう、迷っている時間はない。


「セレスティア!」


「はい!」


「俺たちが戻るまで、王都側の境界をお願いします!」


 彼女は、頷いた。


「分かりました。補助管理者の方々と、維持に全力を尽くします」


「美咲!」


「うん!」


「北区画の古い設備を止める方法を、引き続き調べてくれ!」


「分かった!」


 俺は、ユリウスとミロを見た。


「行こう」


 二人が、頷いた。


 俺は、北区画へ向かって走り出した。


 世界を救うために。


 王都全体の境界を完成させるために。


 そして。


 ミロの母親を、助けるために。


 俺たちは、最後の未接続区域へ向かった。


     *


 北区画。


 そこは、地獄のような光景だった。


 建物が崩れ、道には瓦礫が散乱している。


 人々が、逃げ惑っていた。


 俺たちは、ユリウスと数人の兵士を連れて、北区画へ入った。


「……店長!」


 ミロが、叫ぶ。


「あそこです!」


 彼が指差した先。


 小さな家が、半分崩れていた。


 俺は、息をのんだ。


 ……間に合ってくれ。


 俺たちは、瓦礫をどけた。


 ユリウスが、重い梁を持ち上げる。


 兵士たちが、石を運ぶ。


 そして。


 家の奥から、かすかな声が聞こえた。


「……ミロ?」


 ミロが、泣きながら叫んだ。


「母さん!」


 そこには、痩せた女性が横たわっていた。


 顔色は悪い。


 だが、生きている。


 俺は、息を吐いた。


「……よかった」


 ミロは、母親に抱きついた。


「……母さん!」


「……ミロ」


 女性は、弱々しく笑った。


「……来てくれたのね」


「薬も持ってきたよ。店長が、手配してくれたんだ」


 ミロは、鞄から包みを取り出した。


 母親は、俺を見た。


「……ありがとうございます」


「お礼は、元気になってからでお願いします」


 俺は、笑った。


「そのときは、ぜひ店にも来てください」


 彼女は、小さく頷いた。


 だが。


 まだ、終わっていない。


 俺は、北区画の中央にある大倉庫を見た。


 ……あそこだ。


 ベルク商会の旧認証設備。


 あれを止めなければ、王都全体の境界は完成しない。


「ユリウス。ミロのお母さんを、安全な場所へ」


「分かった。お前は?」


「倉庫を調べる」


「一人で行く気か?」


「いや」


 俺は、ミロを見た。


「ミロ。北区画の人たちに、店の規則を説明できるか?」


 彼は、涙を拭った。


「……はい!」


「頼んだ。住民の同意を集めてくれ」


「分かりました!」


 俺は、頷いた。


 ……よし。


 あとは。


 あの倉庫だ。


     *


 ベルク商会の大倉庫。


 その扉には、巨大な錠前がかかっていた。


 だが、俺は無理に壊そうとはしなかった。


 ここは、ベルク商会の所有物だ。


 勝手に壊せば、後で問題になる。


 それに。


 俺は、商人だ。


 商人には、商人の戦い方がある。


「……すみません!」


 俺は、倉庫の前に立つ警備員へ声をかけた。


「ベルク商会の責任者の方はいらっしゃいますか?」


 警備員は、驚いたように俺を見た。


「……レオン?」


「はい」


「……こんなときに、何の用だ?」


「倉庫の設備について、確認したいことがあります」


 警備員は、首を振った。


「無理だ。立ち入りは禁止されている」


「分かりました」


 俺は、頷いた。


「では、ひとつだけ質問させてください」


「……何だ?」


「この倉庫にある古い認証設備は、今もベルク商会が管理しているんですよね?」


 警備員は、少し迷った。


「……ああ」


「ありがとうございます」


 俺は、笑った。


「では、管理責任者として、設備の停止をお願いできますか?」


「……は?」


「今、その設備が王都全体の安全を妨げています」


 俺は、地図を見せた。


「このままでは、北区画だけでなく、王都全体が危険です」


 警備員は、顔を青くした。


「……そんな」


「ですから、設備を停止していただきたいんです」


 彼は、しばらく黙っていた。


 そして。


「……俺には、そんな権限はない」


 俺は、頷いた。


「分かりました」


 そして。


「では、責任者に連絡してください」


 警備員は、震える手で通信具を取り出した。


 数秒後。


 通信具から、怒鳴り声が響いた。


『……何だ!』


 マルセルの声だった。


「マルセルさん」


 俺は、笑った。


「レオンです」


『……貴様!』


「お忙しいところ、すみません」


『今度は何だ!』


「北区画の旧認証設備を、停止していただきたいんです」


『……断る!』


 即答だった。


 俺は、ため息をついた。


「……理由を聞いても?」


『あれは、ベルク商会の重要資産だ!』


「そうですか」


 俺は、頷いた。


「では、確認します」


『……何だ』


「その設備が原因で、北区画の住民が危険にさらされていることは、ご存じですか?」


 沈黙。


「……マルセルさん?」


『……知るか!』


 俺は、目を細めた。


「分かりました」


 そして。


「今の回答、記録しました」


『……何?』


「設備の管理責任者が、危険を認識しながら停止を拒否したという記録です」


 俺は、通信具を見つめた。


「王国法では、危険な設備の管理者には、被害を防ぐ義務がありますよね?」


『……貴様!』


「もちろん、正式な判断は法務院に委ねます」


 俺は、静かに言った。


「ですが、今この瞬間にも、北区画の人々が危険にさらされています」


 そして。


「設備の停止を、もう一度お願いできますか?」


 長い沈黙。


 やがて。


『……好きにしろ!』


 通信が、切れた。


 俺は、息を吐いた。


 ……よし。


 少なくとも、停止への反対は撤回された。


 ただし、これは設備の所有権を譲り受けたという意味ではない。


 必要な範囲で、危険な動作を止めるだけだ。


 俺は、警備員を見た。


「今のやり取り、聞いていましたよね?」


「……ああ」


「では、設備の停止に立ち会っていただけますか?」


 警備員は、少し迷った。


 そして。


「……分かった」


 頷いた。


     *


 倉庫の奥。


 そこには、巨大な黒い装置があった。


 古い魔法陣。


 錆びた金属。


 そして、見覚えのある紋章。


 ……二百年前の、俺の店の印だ。


 俺は、息をのんだ。


 その瞬間。


 視界に、文字が浮かんだ。


【旧境界認証設備を検知】


【管理者認証:未完了】


【接続状態:拒絶】


 俺は、黒い剣を取り出した。


 ヴァルガから預かった、境界管理の認証鍵。


 剣を装置へ近づける。


 すると。


【認証鍵を確認】


【管理者R-017を認証】


【旧設備の管理状態を照会中】


 装置が、低く唸った。


 だが。


【警告】


【旧設備に外部管理権限が設定されています】


【現在の管理者:ベルク商会】


【停止権限:未確認】


 ……なるほど。


 ベルク商会が、この設備を管理している。


 だから、俺の権限だけでは止められない。


 だが。


 さっき、マルセルは言った。


 好きにしろ、と。


 俺は、警備員を見た。


「先ほどの通信記録を、確認できますか?」


 警備員は、頷いた。


「ああ」


 彼が通信具を操作する。


 マルセルの声が、再生された。


『……好きにしろ!』


 俺は、視界に向かって命じた。


 この設備の停止について、管理者からの許可があった。


 記録を照合してくれ。


【管理者発言を照合中】


【設備停止に関する許可意思を検出】


【許可範囲:危険動作の停止】


【所有権移転:なし】


 俺は、息を吐いた。


 ……よし。


 これなら。


 俺は、黒い剣を装置へ向けた。


「旧認証設備の接続妨害を停止する」


【停止申請を受理】


【旧認証設備:接続妨害を解除】


 装置の黒い光が、消えた。


 その瞬間。


 王都の地図に、一本の白い線が現れた。


 北区画と、中央市場。


 途切れていた境界が、つながり始める。


 だが。


【警告】


【対象区域の住民同意:未確認】


【境界拡張:保留】


 ……まだだ。


 設備を止めただけでは、足りない。


 必要なのは。


 ここに住む人々の意思だ。


     *


 俺が倉庫を出たとき。


 北区画には、人々が集まっていた。


 その中心に、ミロがいた。


「……店長!」


 彼が、俺を見つけて駆け寄ってくる。


「みんなに、説明しました!」


 俺は、目を見開いた。


「……本当か?」


「はい!」


 彼の手には、何枚もの紙が握られていた。


 そこには、北区画の住民たちの名前が書かれていた。


 薬屋。


 仕立屋。


 荷運び職人。


 小さな食堂。


 そして。


 ミロの母親の名前も。


「……みんな、守るって言ってくれました」


 ミロは、泣きながら笑った。


「僕たちも、レオンさんの店の仲間になりたいって」


 俺は、息をのんだ。


 ……そうか。


 俺が、倉庫で設備を止めている間。


 ミロは、みんなの同意を集めてくれていたんだ。


 そのとき。


 空から、巨大な音が響いた。


 ばきん!


 俺たちは、顔を上げた。


 北区画の上空。


 巨大な亀裂が、真上まで広がっていた。


 そこから。


 黒い光が、降り注ぐ。


「……まずい!」


 ユリウスが叫んだ。


「全員、伏せろ!」


 俺は、ミロと母親を抱きしめた。


 ……守れ。


 頼む。


 ここだけでも。


 守ってくれ。


 その瞬間。


 視界に、文字が浮かんだ。


【境界拡張申請を検知】


【対象区域:北区画】


【旧認証設備による妨害:解除済み】


【対象者の同意:確認】


【管理者の責任受諾:未確認】


 俺は、息を吸った。


 引き受ける。


 北区画の人々を。


 この場所を。


 俺の店の責任として。


【管理者の責任受諾:確認】


【境界拡張:成功】


 白い光が、北区画を包んだ。


 空から降り注いだ黒い光が、境界に触れる。


 そして。


 砕け散った。


 人々が、歓声を上げた。


 俺は、膝をついた。


 ……間に合った。


 だが。


 視界に、警告が浮かんだ。


【境界維持負荷:限界接近】


【管理者の処理能力:十二パーセント】


 ……まずい。


 俺は、息を吐いた。


 体が、重い。


 視界が、揺れる。


 それでも。


 俺は、笑った。


 ……守れた。


 ミロが、泣きながら俺を見た。


「……店長」


「……何だ?」


「……ありがとうございます」


 俺は、彼の頭を撫でた。


「……気にするな」


 そして。


「……うちの店員だからな」


     *


 そのとき。


 空が、激しく光った。


【管理権保持期限:残り五分】


 俺は、息をのんだ。


 ……五分?


 もう、そんな時間か。


 その瞬間。


 王都全体に、エリオットの声が響いた。


『素晴らしい』


 俺は、顔を上げた。


『本当に、素晴らしい結果です』


 空に、銀髪の男の姿が浮かんだ。


『管理者R-017。あなたは、ついに王都全域へ境界を拡張しました』


 俺は、拳を握った。


『しかし』


 エリオットは、微笑んだ。


『残念ながら、管理権移転審査は予定どおり進行します』


 俺は、歯を食いしばった。


『五分後、管理権はベルク商会へ移転されます』


 その瞬間。


 王都の空に、巨大な文字が浮かんだ。


【管理権移転審査:最終承認待ち】


【移転先:ベルク商会】


【現管理者の同意:不要】


 俺は、息を止めた。


 ……ふざけるな。


 そんな契約、認めていない。


 そのとき。


 エリオットが、静かに言った。


『ただし、ひとつだけ方法があります』


 俺は、顔を上げた。


『管理権の移転を阻止する方法です』


 ……何?


 エリオットは、微笑んだ。


『管理者R-017。あなたが、最後の規則を設定すればよい』


 俺は、息をのんだ。


 ……最後の規則。


 二百年前の俺が、言っていた。


 店を失うとき。


 店は、最後の規則を求める。


 そして。


 最後の規則を設定した管理者は、世界から消える。


 俺は、拳を握った。


 ……また、同じ選択か。


 店を守るか。


 自分を犠牲にするか。


 アリシアを救うか。


 何かを、捨てろっていうのか。


 そのとき。


 ミロが、俺の手を握った。


「……店長」


 俺は、彼を見た。


「……何だ?」


 ミロは、泣きながら笑った。


「……僕、店長が好きです」


 俺は、息をのんだ。


「……だから」


 彼は、俺の手を強く握った。


「……店長も、帰ってきてください」


 俺は、目を閉じた。


 ……そうだ。


 俺は、帰らなきゃいけない。


 店に。


 みんなのところに。


 アリシアを迎えに行って。


 また、あのカウンターに立つんだ。


 俺は、ゆっくり立ち上がった。


 そして。


 空を見上げた。


「……エリオット」


『何でしょう』


「最後の規則って、何でもいいのか?」


 エリオットは、少しだけ首をかしげた。


『管理者の権限内であれば』


 俺は、笑った。


「……そうか」


 そして。


「じゃあ、ひとつ確認させてくれ」


『何でしょう』


 俺は、王都を見渡した。


 人々。


 店。


 市場。


 城。


 そして、光に包まれた街。


「……この境界の中にいる人たちは、全員、俺の店の客なんだよな?」


『……はい』


「全員、規則に同意してくれたんだよな?」


『……そのとおりです』


 俺は、頷いた。


「なら」


 俺は、ゆっくりと口を開いた。


「……俺がいなくなっても、店は続けられるよな?」


 エリオットの表情が、変わった。


『……何を、考えているのですか』


 俺は、笑った。


「簡単な話だ」


 そして。


「店主がいなくても、店員がいれば店は回る」


 その瞬間。


 俺の視界に、新しい文字が浮かんだ。


【未登録の管理方式を検知】


【共同管理制度】


【管理者権限の分散が可能です】


 俺は、息をのんだ。


 ……やっぱり。


 これだ。


 俺は、空を見上げた。


「エリオット」


『……何でしょう』


「俺は、世界を支配しない」


 俺は、拳を握った。


「誰か一人を犠牲にもしない」


 そして。


「この店を、みんなに任せる」


 その瞬間。


 王都全体が、白く輝いた。


【共同管理制度:申請受付】


【必要条件:全補助管理者の同意】


【現在の同意数:三十六名中三十六名】


【申請条件:達成】


 俺は、笑った。


 ……よし。


 これなら。


 俺が消えなくても。


 店を守れる。


 だが。


 次の瞬間。


 視界に、赤い文字が浮かんだ。


【警告】


【共同管理制度の実行には、管理者権限の最終分割が必要です】


【最終分割後、現管理者は境界管理権限を喪失します】


 俺は、息を止めた。


 ……権限を失う?


 それなら。


 俺は、もう店の規則を使えなくなる。


 境界を広げることも。


 アリシアを探すことも。


 できなくなるかもしれない。


 そのとき。


 エリオットが、静かに笑った。


『……なるほど』


 俺は、彼を見た。


『あなたは、最後まで選択を避けようとするのですね』


「違う」


 俺は、首を振った。


「俺は、選んでいる」


 そして。


「誰かを犠牲にしない道を」


 エリオットは、しばらく黙っていた。


 やがて。


『……面白い』


 微笑んだ。


『では、最後の試験です』


 その瞬間。


 空に、巨大な文字が浮かんだ。


【管理権保持期限:残り一分】


【共同管理制度:実行待機】


【最終確認】


【現管理者R-017は、すべての境界管理権限を放棄しますか?】


 俺は、息をのんだ。


 ……すべての権限。


 それを失えば。


 俺は、ただの商人に戻る。


 だが。


 それで、みんなを守れるなら。


 俺は、ゆっくりと目を閉じた。


 アリシア。


 ユリウス。


 セレスティア。


 リリアーナ。


 ミロ。


 そして。


 俺の店を好きだと言ってくれた、すべての人々。


 俺は、静かに笑った。


「……ああ」


 そして。


「放棄する」


 その瞬間。


 世界が、白く染まった。


【共同管理制度:実行】


【管理者権限:分割開始】


【現管理者R-017:権限喪失処理】


 俺は、息を止めた。


 ……これで。


 終わる。


 そう思った。


 だが。


 次の瞬間。


 視界に、見たことのない文字が浮かんだ。


【警告】


【共同管理制度に重大な矛盾を検知】


【管理者R-017の権限放棄により、未完了の個人契約が失効します】


【対象契約:境界維持補助契約】


【対象者:アリシア】


【転送先:第零境界領域】


【接続維持:不可能】


 俺は、目を見開いた。


 ……待て。


 アリシアは。


 まだ、あそこにいる。


 俺が権限を失えば。


 彼女との接続が、切れる?


 その瞬間。


 エリオットの声が、響いた。


『さあ、レオンさん』


 彼は、静かに微笑んだ。


『最後の選択です』


 そして。


『世界を救いますか?』


 俺は、息を止めた。


『それとも』


 エリオットは、俺を見つめた。


『アリシアを、永遠に失いますか?』

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