第4話:小さな泡とデスベア祭り
モルトン村の入り口は、石窯広場から歩いて五分程度の場所にあった。
森の切れ間から先は、一段低く開けた土地になっていて、道沿いには柵で囲われた畑や、厩舎の付いた民家が見え始める。
畑にはネギのような背の高い植物やトマト、謎の瓜、芋らしきものまで、さまざまな野菜が育っている。中には、実がかすかに光っているものまであった。
「おぉ……凄いな」
幻想的な光景を前に「凄い」という感想しか出ない自分が悲しい。
厩舎には、元の世界と変わらない普通の馬や、牛のような動物がいた。その中には、デスベアと同じように四肢が光っているものもいた。あれも魔獣と呼ぶのだろうか。
さらに進むと、大きな井戸のある広場を囲むように、三十軒ほどの民家が集まっていた。
木組みと土壁でできた家々の煙突からは白い煙が上がり、道では麻袋を担いだ男や、手押し車で藁束を運ぶ少女が行き交っている。
ちょっとした観光気分に浸っていると、中央広場近くの民家から、ニナとそっくりな髪色と顔つきをした、七、八歳くらいの少年が飛び出してきた。
「姉ちゃん!」
少年がニナの胸に飛び込むと、ニナは彼の頭を何度も撫で、それだけでは足りないのか、最後には頬を両手で挟んだ。
「ただいま、ニノ。良い子にしてた?」
「姉ちゃん、魔獣に襲われたんだって!? 平気だったの?」
「うん、この通り。怪我ひとつしてないよ」
ニナが弟の頬を挟んでいると、今度は母親らしい女性が民家から出てきた。
こちらもニナと同じ赤髪で、長い髪を後ろでひとつに束ねている。
「あぁ、ニナ! デスベアに出くわしたって? よく無事で……」
女性はニナを優しく抱きしめた。
「お母さん。そこのおじさんが、パン種に魔法をかけて助けてくれたの」
「まぁ、パン魔法で……。ニナを助けていただき、本当にありがとうございます」
女性はこちらを向き、深々と礼をしてきた。
「いえ、俺もニナには助けられました。頭を上げてください」
女性は静かに頭を上げた。
「ニナの母、オーベーヌです。お茶しか出せませんが、どうぞ中へ」
あまり丁重にもてなされるのは恐縮だが、他に行く当てもない。手持ち無沙汰に立っているのもばつが悪く、素直に招きを受けることにした。
「ありがとうございます。大麹豊と申します。この村のことを聞かせてください」
「もちろんですわ。こちらへ」
家に入る前に、オーベーヌにフレッドの古い靴を借りられないか尋ねると、快く貸してくれた。
こうして俺は、元の世界から半日近く着続けていたウェーダーをやっと脱ぐことができたのだった。
オーベーヌに案内されたリビングには、大きな一枚板の食卓があった。席へ着くと、干し果実の紅茶に、粗い生地のクッキーまで出してくれた。
俺とニナ、ニノ、オーベーヌの四人で食卓を囲み、石窯広場で起きたことをもう一度説明した。
フレッドに続いて二度目なので、今度はスムーズに話すことができた。
「運んだパン種は、二つとも駄目になったのね」
「ごめんなさい、お母さん。私が目を離したせいで……」
「なに言ってるの、ニナのせいじゃないでしょう。二、三日パンがなくたって、どうってことないわ」
ニナの肩から、目に見えて力が抜けた。
そこへ、ニノが話に割って入る。
「ねぇねぇ、オオコウジって、苗字?」
「大麹が家名で、豊が名前だよ」
ニノの目が輝いた。
「黒い髪で、苗字があって、見たことない服……もしかしておじさん、アズマ国のニンジャ!?」
ニンジャ……忍者だって? この世界には忍者がいるのか?
「ニンジャではないけど、遠い島国から来たんだ」
「やっぱり、アズマ国の人だ!」
出身を説明すると余計にややこしくなる。話を聞くと、幸いアズマという国も日本と似た島国のようだ。適当に話を合わせておこう。
オーベーヌは台所の奥から蓋付きの小さな壺を持ってきた。中には赤紫がかった継ぎ種が、底から指二本分ほど残っている。
「これは継ぎ種といって、次のパン種を育てるために残してあるものなの」
「これに粉と水を足して増やしたものが、石窯へ持っていったパン種になるんですね」
「ええ。全部使ってしまったら、新しく果実から種を作るのに七日くらいかかるわ」
なるほど。種を増やしていけば効率よく大量のパン種にできるわけだ。
俺は継ぎ種壺の中へ意識を向けた。
【発酵基質を検出】
【対象のパン種は発酵が進行中です】
【〈発酵術Ⅱ〉により発酵を促進できます】
示されたのは、デスベアを倒した時と同じ〈促進〉だった。
「この量から、またあの木桶いっぱいまで種を増やせるんですか?」
「ええ。三日くらいあればね」
「なるほど……もしかすると、〈発酵術〉でお手伝いできるかもしれません」
「あら、例のパン魔法ね! お願いしてみようかしら?」
少し違うが、概ね間違ってはいない。
まずはパン種を増やす工程を見せてもらうことになり、俺たち四人は台所へ移動した。
「オオコウジさん。手を洗うなら、そこに洗い石がありますよ」
示された流し台の横に、灰色の石鹸のようなものが置かれていた。
俺は目を見開く。
「石鹸だ……!」
「せっけん?」
「この洗い石の、俺の故郷での呼び方です」
灰と油から作るらしい。香りはよくないが、沢の水だけで洗った時よりはるかに落ち着く。
洗い終えると、指をこすり合わせてキュッとする感覚を楽しむ。
【手指の衛生状態:清潔】
「うんうん、そうだろう……ふふふ。手洗いヨ~シ」
欲を言えば消毒用のアルコールも欲しいが、飲用の酒をいただいても代わりにならないので黙っておく。
ニノに独り言を聞かれて怪訝な顔をされるが、今の俺は気にならない。
ニナが火魔法で小さな薪に火をつけ、鍋で湯を沸かす。オーベーヌはその湯を大きな木桶へ回しかけた。布で内側を拭き、使う柄杓も別に取り分けた湯へ沈め、桶が冷めるまで待つ。
「ニナの火魔法には助けられてるわ。私は小さな風魔法しか使えないんですよ」
とオーベーヌが言う。ニナの火魔法はフレッドからの遺伝のようだ。
「姉ちゃんの火魔法は村一番なんだぜ!」
ニノがそう言うと、ニナは困ったように微笑んだ。
「たまに強火すぎちゃいますけどね」
村一番の使い手というのは否定しないようだ。
オーベーヌが、壺の継ぎ種を一部残して消毒した桶へ移した。そこへニナが水と粉を加え、木べらで丁寧に混ぜていく。
だが、木桶の大きさに比べると、加えた量はずいぶん少ない。
「粉と水は、一度に全部入れないんだね」
「はい。一度に入れちゃうと、桶の中で温度や固さが揃わなくなるんです。泡や酸味にムラが出るので、何度かに分けて足します」
〈促進〉で発酵を早めたとしても、混ざり方や温度のムラまで整えてくれるわけではない。むしろ、発酵状態の差を広げてしまいかねない。
混ぜ終えたパン種へ、〈促進〉を使わずに意識だけを向けてみる。
【発酵基質を検出】
【〈発酵術Ⅱ〉の行使には、[温度]が足りません】
なるほど、無条件に促進できるわけではないのか。
「少し距離を取ってもらえますか?」
俺たちが一歩下がると、ニナは桶のそばへしゃがみ、指先に小さな火を灯した。
指先からこぼれた火は床に落ちず、一本の筋となって桶の周囲を一周する。やがて、桶から少し離れた空中に、白熱電球のフィラメントを思わせるほど細い炎の輪ができた。
炎の輪は木桶へ触れず、一定の火勢を保ったまま静かに燃え続けている。
「しばらくこのくらいの温度を保つと、泡が立ってきます」
桶の側面に触れてみると、ほんのりとした温かさを感じた。
桶が温まるのを待つ間、俺はオーベーヌに教えられながら、桶の外側へ紐を巻き、今のパン種の高さへ目印を付けた。
しばらくして、改めてパン種に意識を集中する。
【対象のパン種は発酵が進行中です】
【〈発酵術Ⅱ〉により発酵を促進できます】
よし、条件が揃った。ここがスキルの使いどころだろう。
「〈発酵術〉、試してみて良いでしょうか」
オーベーヌはこくりと頷いた。
「じゃあ、まずは少しだけ……」
混ぜ終えたパン種を、小さな器に少しだけ取り分けてもらった。
俺はその器へ意識を集中する。
〈促進〉
デスベアの時のように一気に進めるのではなく、ほんの少しだけ早めるつもりで念じる。
ぞわりと血が冷えるような感覚がした。
器の底から、小さな泡が浮かんだ。
続いて二つ、三つ、十、数十――赤紫色のパン種がゆっくり持ち上がり、表面に細かな穴が増えていく。
「わ、凄い……! お母さん、見て見て! 泡が立つのが凄く早いの!」
ニナが器に顔を寄せた。
「でも、匂いはいつもと同じ。お母さん、これなら大丈夫だよね」
オーベーヌも木べらでパン種をすくい、落ち方を確かめたり、味見したりしている。
「ええ。変に酸っぱくもなっていないわ。これなら任せても大丈夫ね」
得体の知れない中年男性に大切なパン種を任せるのは、気が気じゃなかったのかもしれない。上手くいって良かった。
二人の嬉しそうな顔を見ていると、デスベアが倒れた時より胸が高鳴った。
この術でやりたいことを、ようやく一つ見つけた気がした。
オーベーヌに許可をもらい、今度は木桶のパン種全体に〈促進〉を使った。
先ほどよりも強い寒気が、全身を駆け巡った。
赤紫色のパン種のあちこちから無数の泡が浮かび、紐の目印を越えて膨らんでいく。
「わぁ~、ふふふ。もう泡がこんなに! 次の粉と水を足して大丈夫です! 一度、火を消しますね」
ニナが指先をくるりと回すと、炎の輪はしゅんと消えた。
「いつもなら、混ぜてから次の粉と水を足すまで、どのくらい寝かせるの?」
「ええと、この季節なら――」
質問を一つすると、次に確かめたいことが二つ、三つと出てきた。
粉の配合。水の量。気温。湿度。泡の大きさ。匂いが変わる順番。
貴重な天然酵母のパン作りの研修だ。飲食業界の人間として、知りたいことがいくらでもある。
「おじさん……」
「うん?」
「デスベアを見てた時より、すごく、目が怖いです」
「これはたぶん、楽しい顔だよ」
ニナが困ったように母親を見るが、オーベーヌは苦笑いするだけだった。
その後も、粉と水を足してはニナが温度を整え、俺が〈促進〉する作業を繰り返した。
陽が傾く頃には、パン種は村のパンを仕込めるだけの量まで増えていた。
俺たち四人はパン種を持って再び石窯広場へ向かい、作業台でさらに粉と水、そして塩を足しながらパン生地をこねていく。
こねた生地の周囲をニナの火で温め、〈促進〉で発酵を進める。十分に膨らんだところで成形し、もう一度同じ手順で膨らませた。
ニナの火魔法で薪を燃やし、石窯を十分に温める。火が落ち着いたところで、窯の中に残った赤い炭と灰を取り除き、膨らんだ生地を長柄の木べらに載せ、窯の奥へ滑り込ませていった。
あとは、焼き上がりを待つだけだ。
「ふふ。今日は皆が手伝ってくれたおかげで、すぐに終わっちゃいました」
「いやぁ、得難い経験だったよ。こちらこそ感謝してる」
……できれば、元の世界の部下たちと一緒に学びたかったが。しんみりするので、今はあまり深く考えないようにしよう。
どどん。
村の方から、低い打楽器の音が聞こえてきた。
フレッドが肉を振る舞うと言っていたから、宴会の準備をしているのだろう。
異世界で初めて味わう、まともな食事だ。ニナのパンがこんなに美味しそうなのだから、否応にも期待が膨らむ。
石窯からはパンの良い匂いが漂ってきた。
オーベーヌが焼き上がったパンをひとつ取り出し、ちぎって分けてくれたので食べてみる。
果実由来の赤みが混じった生地なのに、酸味はほとんど感じない。むしろ甘味が塩によって引き立ち、噛むと小麦の香りに混じって、ほのかな果実の香りが鼻へ抜ける。食べ慣れたパンとは、まるで別物だ。
丁寧に段階を分けて発酵させたおかげで、口当たりもふわふわだ。どこの高級ホテルで出しても恥ずかしくない。
うん。とても美味しい。
その後、焼き上がったパンから順に籠へ入れていき、宴会の準備が進む広場へ運んでいく。
百人分を超えるパンを運ぶのは、それだけで重労働だった。俺とニナ、オーベーヌの三人で大きな手押し車を一台ずつ押し、二往復してようやくすべてを運び終えた。ニノも、持てるだけの籠を抱えて後ろをついてきた。
「普段は私一人で運んでるんですよ」
ニナはそう言って、得意げに力こぶを作った。
少なくとも、フィジカルでは到底ニナに敵いそうもない。
広場には木の柱に布を渡した簡素な天幕が張られ、その下に長机が並んでいる。
俺たちはそこにパンの入った籠を並べていき、やっと役目を終えることができた。
どん、どどん、どんどん! どん、どどん、どんどん!
陽が落ちきったとき、ひときわ大きな音が村中に響き渡った。
次第に大小さまざまな打楽器が音を重ね、そこへ弦楽器や笛も加わって、一つの陽気な曲になっていく。
広場の中央には、薪が人の背丈ほどの高さまで組まれ、赤々と炎を上げている。その周囲で、足に鈴を巻いた女性たちが輪になって踊り始めた。
ほかのテーブルには、エールやワイン、果実のジュースに水、サラダ、デスベアの肉と野菜を煮込んだスープなどが並んでいる。どれもビュッフェスタイルで、自由に取っていいらしい。
鉄串に刺した肉だけは別の台に並べられ、広場の数か所に設けられた焚き火で、それぞれ好きな加減に炙って食べるようだ。
どどん!
音楽が一旦止まり、広場の中央に筋骨隆々とした初老の男性が立った。
喧噪が止み、村民たちの視線が男へ集まる。
「皆知っての通り、モルトン村のニナと、そこにいる旅人の手により、デスベアが仕留められた! 牛二頭を合わせてもなお及ばぬ巨大な魔獣である! 二人の厚意により、その肉はすべて村へ譲られた! みな、自由に飲み、自由に食べ、存分に騒ぎ、明日の糧としてもらいたい! 旅人も大いに楽しまれよ! デスベア祭り、開催じゃあ!」
「うおぉーーー!」
どん、どどん、どんどん! どん、どどん、どんどん!
歓声と同時に演奏が再開され、一気に宴の雰囲気が盛り上がった。
もう出来上がっている村民もちらほらいるが、男の宣言を合図に、大人は酒を、子供はジュースを手に取り、肉を炙りはじめる。
長机の端にはエールの小樽が据えられ、村人たちが注ぎ口の栓をひねって、木杯になみなみと注いでいる。
俺もそれに倣って木杯を取ろうとしたら、突然横からふんだくられた。
「よお、注いでやるよ」
昼間、鍬を突き付けてきた男だ。
鍬の男は木杯の縁までエールを注ぎ、俺に渡すと、自身の木杯を掲げた。
「デスベアを倒した阿呆で勇敢な毒野郎に、乾杯だ!」
「ははは、乾杯」
毒野郎、という呼ばれ方に思わず笑ってしまった。
俺は男の木杯に、自分の木杯をぶつけた。意外と悪いヤツではないのかもしれない。
「俺もだ! 乾杯!」
「肉、ありがとよっ!」
周りにいた男たちが寄ってきて、次々に木杯をぶつけていく。
ひと通りの乾杯が終わった頃には、エールは四分の一ほどこぼれてしまっていた。
「少しは怪しくなくなったな」
ウェーダーを脱いだので、今の俺は速乾シャツにポリエステルのズボン、フレッドに借りた古靴を身に着けている。
「それは良かったです。あれはウェーダーと言って――」
ゴォォッ!!
近くの焚き火のそばで、物凄い勢いで炎が上がっている。
「なんだなんだー!」
「火事か!? あぶねえぞー!」
「はわわわわ……!」
見ると、燃え上がる四本の串肉を持ったニナが固まっていた。
串をまとめて持っていたせいで脂が燃え上がり、火柱となってしまったようだ。
「なんだぁニナの火じゃねえか! 宴会芸か~~?」
「ファイヤーウォ~~~ルってか! ぎゃーははははは!」
「茶化さないでください~~!」
何がおかしいのか、真っ赤な顔をしたおっさんたちが大盛り上がりだ。あのまま姿勢を崩して炎に突っ込まないといいが。ニナはニナで、はっきりとノーを言える子のようで安心だ。
近くにいた女性が魔法で岩のブロックを生み出し、ニナに炎の上がる串を置かせる。さらに薄い岩を重ね、挟んで消火した。
魔法にはいろいろな使い道があるのだな。
ニナに串肉を一本分けてもらった。俺や家族のために焼いてくれていたようだ。
表面に焦げ目がつき、少しだけカリッとしている。中まで火は通っているが、肉汁は残っていて、ちょうどいい焼き具合だ。塩もよく効いている。デスベア肉は赤身と脂の境界がハッキリしていて、赤身をかじれば上質なステーキ。脂身をかじれば甘い脂が舌の上で溶ける。ひと串で二つの顔を持っている。
うん、これは、かなり美味しい。
検毒石を使った老婆がやってきて、「よく焼きなよ」と念を押した。
「もちろんです。ありがとうございます」
老婆は満足そうに頷くと、今度は赤いままの肉にかぶりつこうとしていた酔っ払いの手を叩きに行った。
ひと通り酒と料理を楽しみ、ひと息ついていると、フレッドがやってきた。
「オオコウジ君。今夜は、うちに泊まるといい。私と同じ部屋でよければだが」
「それはとても助かりますが……いいんですか?」
「ニナの恩人を外で寝かせたら、私がオーベーヌに追い出されてしまうよ」
冗談なのか本気なのかわからない。フレッドは穏やかに笑い、木杯に口を付けた。
「身分証のことは、明日あらためて村長に相談しよう。今夜はたくさん食べて、休みなさい」
「……ありがとうございます」
同じ部屋というあたり、まだ完全に信用されたわけではないのだろう。それでも、いくら娘の恩人とはいえ、素性の知れない中年男を一晩泊めるのは、簡単にできることではない。
明日にでも、何か礼ができないか考えてみよう。
広場では踊りと演奏が終わり、人もまばらになってきた。
俺は一人でワインを飲みながら、仕事の引き継ぎもできなかったなとか、元の世界に残してきた両親や友人たちは、今ごろどうしているだろうとか、そんなことを考えていた。
「おじさん、そろそろ帰りますよー!」
広場の端で、ニナがこちらへ大きく手を振っている。
「今行くよ」
残っていたワインを飲み干し、俺も立ち上がった。




