帰りたい
ちょっと暗いです&短いです
あれから数日が経った。いまだにお頭さんの嫁の様子がよくなる兆しが見えない。
そもそも一介の女子高生が獣医でも無いのに狂犬病と言われても無理な話だ。しかし、そのような弱音は言ってられない。
毎日のようにお嫁さんが手足を動かして叫びながら苦しむし、私たちのほんの小さな音にも反応する。そのせいで他の狼さん達にも影響が出て、皆も日に日に憔悴していってる。
そのために他の狼さん達にはここを出てもらって、別の場所で待機してもらっている。残っているのはお頭さんと夏希のみ。お互いに会話もなく、ただただお嫁さんの様子を見ているだけだった。
「・・なあ」
沈黙をお頭が破って夏希の返事も待たずに話し始めた。
「もうこいつは楽にしてやったほうがいいのか。もう3日だが全然治る兆しもねえ。このまま苦しみながら死ぬよりも、今寝ている間に逝った方がこいつにとっては良いのかもしれねえ」
「っざけんなよ!」
体力も殆ど尽きかけているいるが夏希は渾身の力でお頭の頬を拳で殴った。
お頭も避ける気が無かったみたいで見事に吹っ飛んで岩に身体をぶつけた。
「お嫁さん頑張ってるじゃんよ。頑張ってるのに私らが諦めてどうすんの?絶対生きたいに決まってんじゃん。生きて馬鹿なお頭の横で笑いたいに決まってる!」
感情が高ぶって涙も溢れてきた。
大声を出したせいでお嫁さんも唸り声を出し始めた。
「じゃあ、どうすればいいんだ!毎日、水や食事を与えるだけで何も出来ねえ。やったのは最初に傷を消毒してそのままだ」
そう言われてもワクチンなどここにない。だから夏希にはほんの少しの水と食事を与えるだけで後は祈るしかできないのだ。頼るのは彼女の治癒能力。それにかけるしかないのだ。
「わかってるよ。でも私にもわからないんだよ」
ああ、どうしてこうなったのだろう。
そうだ、夏希がお城を無断で出たからだ。そうだ、全部夏希が悪いんだ。
ねえ、反省するから、反省するから帰りたいよ。皆がまっている、あの場所へ。




