↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者に店を売られたので、従業員全員と向かいに新しい店を開きます  作者: 渋谷 爽月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/50

第39話 向かいの店主と、同じ卓につく

 照合の席には、ガスパール、私、文書士が座った。

 ソランジュの確認書と、母の約束の紙の写しを並べる。

 原本はそれぞれの手元に残した。


 文書士は、確認した範囲を読み上げた。

 私の使用権はある。

 大商会への譲渡承諾は、どちらの権利者からも得られていない。

 セドリックの説明書と、資料に差がある。


「分かりました。商会内の審査へ提出します」


 ガスパールは頷いた。


「当店の商品説明も訂正します。リュミエールが無断使用しているという案内は、当商会の見解ではありません」

「そのことを、公開していただけますか」

「はい。訂正文をご確認ください」


 勝った、という気持ちはまだなかった。

 訂正文の言葉を、一つずつ確かめた。

 ソランジュの名を出す範囲も、本人の承諾どおりにする。


 訂正文には、事実関係だけでなく、誤った説明に基づく宣伝を訂正する日付を入れた。前の案内を見た人が、どの情報が新しいか分かるようにする。

 私は、旧店の商品が全部悪いと読める言葉を削った。あそこで働く職人の味まで、今回の権利の話と混ぜるべきではない。

 ガスパールは削除を認め、修正文を出した。相手の商売を傷つけるほど強い文が、自分を守る最善の文とは限らない。必要な説明を、必要なところへ届けることに集中した。


 席を終える時、ガスパールが言った。


「向かいの店を閉めさせたいわけではない、とおっしゃいましたね」

「はい」

「私も、営業を続けるために整理しています。店を買ったのは私の判断です。説明を信用した責任まで、全部他人へ渡すつもりはありません」


 私は頷いた。

 彼と仲良くなる必要はない。

 ただ、同じ卓で、確認したことを共有できた。


 旧店から戻ると、アドリアンが荷物を下ろしていた。


「お疲れさまでした」


 私は資料を持ち上げた。


「終わりに近づきました」

「では、今日は早く閉められますか」

「予約を渡したら」


 その返事に、彼は笑った。

 勝っても負けても、予約のお客様は待っている。

 いつもの仕事が残っていることが、ありがたかった。


 最後の客が帰る直前、セドリックが入ってきた。

 手には、以前私が返した指輪の箱があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。