第27話 祭りの朝に届かなかった箱
祭りの朝、包装箱が来なかった。
納入業者へ走ったポールは、代金の精算確認が済んでいないと言われた。
私は支払いの控えを出す。業者の帳面では、似た名の店と混同されていた。
「確認する人が、昼まで戻らないそうです」
故意かどうかを考えるより、今は菓子を運ばなければならない。
売り場に立つ時間まで、あと一時間。
ニナが普段の包み紙を出した。
「ひとつずつなら包めます。箱のセットは、今日はやめましょう」
「紙を使う量は?」
「見本どおりなら、この分で足ります」
四人で包み方を確かめる。
紙は留めすぎず、開けやすく。底へ折りを入れ、菓子が滑らないようにした。
箱を売るつもりで決めた価格は、包材の違いを引いて直す。
アドリアンが、搬入用の丈夫な木箱を持ってきた。
「菓子を直接入れず、包んだものを並べてください。業者の確認には商会の者を出します」
全部を彼へ任せたい気持ちを、私は一度飲み込んだ。
「確認をお願いします。こちらの支払い控えを預けます。販売は、私たちで」
荷車へ菓子を積み、広場へ向かう。
テオが、最後の木箱を抱えて走った。
マルタは歩く速度を落とさないまま、彼に言う。
「転ぶと全部なくなるよ」
テオが速度を落とした。
少し遅れて、私も笑えた。
荷車を押す途中、私はニナへ客への説明を相談した。箱がない事情を、長く話す必要はない。今日の包装と価格を、先に分かりやすく伝える。
彼女は短い札を書き、木箱の横へ入れた。
テオは、昨夜練習した売り文句を呟いている。私は聞いて、菓子の特徴を二つだけに減らした。全部伝えようとすると、息を継ぐ場所がなくなる。
彼は言い直し、今度は自然に笑った。準備が崩れた朝でも、まだ整えられるものはあった。
会場に着くと、隣の大商会は既に大きな看板を掲げていた。
菓子の種類も、人数も多い。
こちらの看板はニナが書いた板一枚。
私はその前へ、林檎の灯りを並べる。
箱は間に合わなかった。
菓子は間に合った。
鐘が鳴る。
私は売り場から一歩だけ前へ出た。
「焼き林檎と蜂蜜の菓子です。ひとつから、どうぞ」




