第43話 大通りの、青空
翌日の午後、実結は一人で大通公園に来た。
昨日四人で歩いた時に、もう一度来たいと思っていた場所があった。大通公園の、木が多い区画。午後の光が木漏れ日になって地面に落ちる、あの場所。人が多くて、昨日は撮れなかった。
今日は一人だから、ゆっくり撮れる。
* * *
八月の大通公園は、ビアガーデンが出ていた。
大きなテントの下にテーブルが並んで、昼間からジョッキを傾けている人たちがいた。笑い声が遠く届いてくる。実結はその手前の木陰のベンチに座って、しばらくそれを見ていた。
撮るか、撮らないか。
人の笑い声は消えていく。ジョッキのビールは減っていく。今日の夏は、今日にしかない。
OM-40を持ち上げた。
ビアガーデンの縁——テントの外に一人で立っている男の人が、空を見上げていた。何を見ているのかはわからなかった。でも、そのシルエットが夏の光の中に溶けかけていた。シャッターを切った。
* * *
木漏れ日の区画に移動した。
地面に光の斑点が落ちていた。風が来るたびに形が変わる。一つとして同じ形がない。これを撮るのは難しい、とカメラを構えながら実結は思った。シャッターを切る瞬間に、形がもう変わっている。
でも、変わることが面白かった。
消えていく前の光ではなく、変わり続けている光。同じ場所にあるのに、一枚として同じ写真が撮れない。
四枚撮った。全部違う形の木漏れ日が入っているはずだった。現像してみるまで、わからない。
* * *
テレビ塔の方を向いた。
大通公園の東の端に、赤と白の塔が立っている。昨日も見た塔だった。でも今日は光の角度が違うから、少し違う顔をしていた。実結はシャッターを切ることなく、しばらく見ていた。
「消えていくものが、消える前に光った瞬間。」
地区大会に出す写真に、そういう理由をつけた。五味先生に言葉にしろと言われて、言葉にした。
でも今日、木漏れ日を撮りながら思った。
消えていくものだけじゃない。変わり続けているものも、ある。変わり続けていることそのものを撮れるかどうか、まだわからない。引き込み線の錆が金に変わる直前を撮ったのは、どちらだったのだろう。
消える前、か。変わる途中、か。
答えは出なかった。でも、問いが増えた。それでいい気がした。
* * *
帰りがけ、公園の端で噴水を見た。
水が上がって、落ちる。上がって、落ちる。水の粒が光を散らしていた。実結はOM-40を上げた。噴水の頂点の一瞬を狙って切った。水がどこまで上がって、どこから落ち始めるのか。ファインダーの中で、境目が揺れていた。
カウンターが「31」になっていた。
六本目も、もうすぐ終わる。




