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この乙女ゲームは死亡フラグが多過ぎます。  作者: 天音 神珀
episode.2    この乙女ゲームは容赦ない死亡フラグが多過ぎます。
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64.chapter

 公開処刑キターーーーーー!!


 ふざけてすみません。


 何かもうこれから始まる拷問があまりに酷過ぎて朝っぱらからテンションが滅茶苦茶高いんです。


 それはそう、麻薬中毒者のように!!


「泉、顔壊れてるよ」

「元からだよ! どうせ元から顔壊れてますよ! 不細工ですよ! 不美人ですよ! ごめんなさい! でもこれ私の責任じゃないからね! 製作者(プロデューサー)の責任だからね!」

「そんな話誰もしてないよ……」


 何でやさぐれてんの、と侑香は呆れたように言って、私のコルセットを締めてくれる。


 ぐぇっ……苦しい。


「もういい加減この制服生産停止にしようよ。いっそのこと私服制にしようよ……」

「文句は後で聞いてあげるから、早くイベント行きなさい」


 侑香冷たい! 拗ねちゃうぞ!


「にしても、何か今日はまた朝っぱらから一段と騒がしいねぇ」

「そりゃ文化祭だもの、当たり前じゃない」


 そう。今日はかの残酷なる文化祭(公開処刑)なのである。


 故にまぁ騒がしいのは当然だ。何故また突然侑香は寝ぼけたことを言い始めたのか……と彼女を見ると、侑香は呆れたように「いやそうじゃなくて」と手を振った。


「そんなことは判るけどさ。それより問題はあれでしょ」

「アレ?」


 侑香が窓の外を指差したので、それに釣られて私も視線をそちらへと向ける。


 って、なん……何だアレ。


「……は……、なに、あれ……」

「あそこまでいるとSPみたいに見えるよね」


 窓の外、女子寮の前で金髪の美女がなにやら叫んでいるのが見える。


 一目でわかる。クリスだ。


 それはいい。それはいいんだけど。


 彼女を囲んでいる数人の男は一体なんだ。


 強盗? 強盗にでも遭ってるの? 助けに行った方がいいのこれ?


「なんでカメラマンなんて集めたんだろ」


 侑香の言葉にギョッとする。


 クリスは、よくよく見れば真剣な顔で男達――全員やけに硬そうな鞄を肩から掛けていた――に何か指示を下している。そしてなにやら懐から写真を取り出してうっとりと眺めてから男達に見せ――って、


「えええええええええええええそれ私の写真――!?」


 盗撮したとしか思えない、他でもない私の寝顔がA4に引き伸ばされて彼女の手元にあった。


 いやいやいやいやいや犯罪なんですけどそれ!


「ちょ待っなんでそんなものが」

「そういえば今日クリスが「泉LOVE-!!」とか大声で叫んで部屋を出ていったから朝早くに不本意にも叩き起こされたんだけど、あんた、何か心当たりある?」

「……」


 ある。


 思いっきり、ある。


「ゆ、侑香どうしよう」

「はん?」

「私今度こそ世界を壊すかも」

「はい?」


 青ざめがたがた震えるを認めた侑香はぎょっと身を引き、それから、「まずは落ち着こうか」と、私の両肩を叩いた。


「まず落ち着いて状況説明できる?」

「クリスにイベントぶち壊される。今度こそ終わる」

「いやいや、いつものことじゃない」

「私クリスに追っかけられまくってイベントが進められなくなる!」


 そう叫んで頭を抱え込み、私はその場にしゃがみこんだ。


「……うん、まず落ち着け泉」


 侑香は若干顔を引き攣らせつつ、再度私にそういったのだった。





 私の危惧は二つある。


 まず一つ目。


 以前、クリスが言ってたこと。


『もちろん普通のカメラも持っていきますわ、一眼レフで泉を撮りまくりますわよ!』


 これである。


 つまるところ、文化祭の間中、ずっと彼女に振り回されるのでは?という危惧。


 二つ目。


 そうなると、完璧ふられたと思われる櫟と仲直りはおろか、近づくこともできなくなるかもしれない。


 これは、まずい。相当、まずい。


 まぁ確かに、櫟と仲直りできる可能性は、ほぼない。


 あの様子だと、完璧自己完結しちゃってるみたいだったし、もう色々無理だよねって言いたいんだけど。


 でもここで、無理だよねオワタ☆って笑って誤魔化すわけにも行かないのだ。


 いや個人的にはそうなると大変嬉しいのだけれど、ここは個人的な感情で動くことができないのであって。


「……なるほど……」

「どうしよう?」

「じゃあ、何とか私がクリスをひきつけてあげるよ」

「えっ」


 どうやってひきつけるというのか。


「んで、あんたは――」


 侑香は私の髪を見て首をかしげた。


「ちょっと、確かに目立つよねその髪」

「長いから?」

「そう、長いから。でもまぁ切ることができないから――適当に結い上げとくのが賢明か。ちょっとこっち来なさい」


 侑香は私を手招くと、椅子に座らせて私の髪をブラシで梳かし始めた。


「ど、どうするの」

「まんまよ。結うの。カメラマンはあんたの顔を写真でしか知らないわけでしょ。肝心のクリスがいなけりゃ撒ける。で、あんたの特徴は多分この長い髪だから――イベント開始まで後何分?」

「30分くらい」

「上等。カーラーで巻いて一つに結んでから、三つ編みにでもして結い上げれば騙せるわ。まさかクリスも、突然あんたが髪を結い上げるだなんて思わないでしょ」

「イベントだといつもどおりハーフアップだけど――」

「イベント前になってから解きなさい。それで間に合うわ」


 侑香は淡々とそう言い、引出しからホットカーラーを取り出した。


 にしても、侑香、カーラーなんて持っていたのか。使っている所を見たことがなかったからそんなものとは無縁なんだと思ってた。


 私がどこか他人事のように彼女のすることを見ているうち、侑香は手早く髪を結い上げてくれた。見事なものである。


「ちょっと首振ってみて」


 言われたとおり、首を左右に振ってみる。長い髪が全部後頭部に集中するものだから、大変頭が重い。が、結われた髪が不安定な感じはしなかった。


「ピン3本留まってる。イベント前に外すの忘れないようにね。ゴムは1本」

「判った」


 頷くと、侑香は微笑んだ。


「そのままでも結構可愛いんだけどね。他の男とかに捕まんないようにね」

「いやいや捕まらないよ! クリスに比べたらどんなストーカーでも子供みたいなものだし」

「まぁねぇ。じゃ、私は行ってくるわ」


 そう言うと、侑香は携帯を引っ掴んで部屋を去ろうとする。


「クリス、ほんとにひきつけられる?」


 すこし不安になって聞くと、


「まぁ、あんたはそこで見てなさいよ。私たちが離れたら校舎に向かいなさい。念のため、すぐにね」

「判った」


 半信半疑で頷いた私に、侑香は自信たっぷりに微笑んで部屋を去っていったのだった。

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