↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界突破の魔導エンチャント無双~最底辺の解体屋、虹色の神装備を拾い育てる~  作者: みぎみみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/17

第5話 猫耳の拾い屋と、雨上がりのにおい


「……なに?」


 ルゥはじりっと一歩下がった。尻尾の毛がぶわっとふくらんでいる。完全に警戒されていた。


「怪しいもんじゃないって。さっきの店にいたんだ。見てただろ」


「見てない。ルゥ、ザックのおっちゃんしか見てなかった」


「そっか」


 まあ、そうだろうな。あの状況で後ろにいた破れた服の男なんか気にしている余裕はない。


「あのさ、さっきの袋の中身。ああいうのいつもどこで拾ってるんだ?」


「……なんでそんなこと聞くの」


「買いたいんだ。俺が」


 ルゥの耳がぴくっと動いた。


「ボロの防具を?」


「そう。ザックさんより高く買う」


「うそだ」


 即答だった。


「あんなの誰もほしがらないもん。ルゥ、もう半年も拾い屋やってるけど、ザックのおっちゃん以外、誰も買ってくれなかった」


 半年。こんな小さい子が、半年も迷宮でボロを拾っているのか。


 どう説明しようか迷っていると、ルゥの鼻が、ひくひくと動いた。


「……ねえ。お兄ちゃん、ポケットに何か入ってる?」


「え?」


「雨上がりのにおいがする。ざあって雨がやんだあとの石のにおい」


 俺はポケットに手を入れた。中には、精錬石の欠片が三つ入っている。取り出して見せると、ルゥは目を丸くした。


「あっ、欠片だ! これ、こういうにおいなんだ……」


「においでわかるのか?」


「うん。ルゥ、鼻はいいんだよ。迷宮で欠片が落ちてると、たまにわかるの。でも、欠片ってほかの冒険者がすぐ拾っちゃうから、ルゥのところまで残ってないんだけど」


 ルゥはちょっとだけ得意そうに言った。尻尾の毛が少しおさまってきている。


 俺はためしに聞いてみた。


「じゃあさ。さっきの袋の中のボロからもそのにおい、した?」


 ルゥは首をかしげて、少し考えた。


「……うん。ちょっとだけ。すごくうすいけど。兜のはけっこうしたかも」


 やっぱりだ。


 ボロ装備の中には、欠片の元になる力が残っている。ルゥの鼻はそれを嗅ぎ分けられる。


 ってことはルゥがいれば、どのボロに欠片がたくさん入っているのか、解体する前からわかる。


 背中がぞくっとした。これはとんでもない組み合わせだ。


「なあ、腹減ってない?」


 屋台で串焼きを二本買った。一本二ルーン。痛い出費だけど、話をするにはこれがいちばん早い。ルゥは最初こそ疑わしそうにしていたけど、串焼きを渡したとたんに目がきらきらになった。


「い、いいの?」


「いいよ。そのかわり、ちょっと話を聞いてくれ」


 屋台の横の木箱に並んで座って、俺は自分のことを話した。異世界から来たこと。ハズレ職の解体屋で城を追い出されたこと。そして、解体屋の力でボロの防具から欠片を取り出せること。


 ルゥは串焼きをもぐもぐしながら聞いていたけど、最後のところでぴたっと口が止まった。


「……ボロから、欠片が出てくるの?」


「出てくる。見てろ」


 俺はさっき売りそこねた鉄の靴を取り出して、ナナシを線にそって入れた。靴はばらばらになって、その中から、青いかけらが二つころがり出た。


「うわあ……」


 ルゥは口をあけたまま、かたまった。串焼きのたれがあごからたれている。


「だから、ボロはボロじゃないんだ。俺にとっては、宝箱みたいなもんなんだよ」


「じゃ、じゃあ、ルゥが三ルーンで売っちゃったあの袋……」


「たぶん、欠片が二十個くらい入ってた」


 ルゥの耳がぺたーんと寝た。尻尾も、地面に落ちた。見ていてかわいそうになるくらいの落ち込みようだった。


「だから、提案。これからは拾ったボロを俺に売ってくれないか。一個一ルーンで買う。いいにおいがするやつは、二ルーン出す」


「い、一個一ルーン? 袋いっぱいだったら、十五ルーンとかになるよ?」


「なる」


「ザックのおっちゃんの五倍だよ?」


「俺にとっては、それでもまだ安いからな。ただ、一つだけ約束してほしい。俺がボロから欠片を出せるってことは、誰にも言わないこと」


 ルゥはちょっと真剣な顔になった。


「……ザックのおっちゃんに知られたら、ボロの値段、上げられちゃうから?」


 なかなか頭の回る子だ。


「そういうこと」


「わかった。ルゥ、ぜったい言わない。……あ、でも、トトとミミには言ってもいい?」


「トトとミミ?」


「ルゥの、弟と妹みたいな子。スラムでいっしょに住んでるの。二人ともまだちっちゃいから迷宮には入れないけど、ルゥが拾ってきたボロを磨くの手伝ってくれるんだ」


「その二人も黙っていられるなら」


「だいじょうぶ! ルゥが、ちゃんと言っとく!」


 その夜、俺はギルドの酒場で欠片を二つ売った。


 ザックの店を通さず、冒険者に直接売ったのだ。「欠片、十五ルーンで売ります」と声をかけたら、すぐに若い剣士が飛びついた。店で二十五ルーンのものが十五なら、そりゃ買う。


 五ルーンで買い叩かれるより三倍いい。買う側も十ルーン得をする。ザックだけが損をする。


 手元の硬貨は三十八枚になった。


 次の日の夕方、迷宮の入り口で待っていると、ルゥがまた大きな麻袋を引きずってきた。


「カイ兄! 見て見て、今日いっぱい拾えた! においのするやつ、ちゃんと分けといたよ!」


 いつの間にか、呼び方が「カイ兄」になっていた。


 袋の中身は十九個。そのうち六個にルゥは麻ひもで印をつけていた。解体してみると、印のついたボロからは、欠片が三つずつ出た。ほかのボロからは、一つか、ゼロ。


 全部で、欠片は二十八個。


 ルゥに払ったのは二十五ルーン。


 手のひらいっぱいの青い光を見つめながら、俺はナナシを握りなおした。


 錆びた刃の奥で何かがほんの少しだけ、光ったような気がした。




第5話 了


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。