↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界突破の魔導エンチャント無双~最底辺の解体屋、虹色の神装備を拾い育てる~  作者: みぎみみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/21

第3話 第一層と光る欠片


 迷宮の入り口は近くで見るとさらに大きかった。


 直径は学校のグラウンドくらいある。ふちからは石の階段が、ぐるぐると螺旋を描いて下へ続いていた。朝早いのに冒険者たちがぞろぞろ降りていく。剣を背負った人、弓を持った人、でっかい斧をかついだ人。


 俺は学生服にナナシが一本。どう見ても場違いだった。


「おい坊主、その格好で潜るのか? 遠足じゃねえんだぞ」


 通りすがりのおじさんに笑われた。でも、しかたない。鎧を買うお金なんてないのだ。


 階段を下りきると、そこが第一層だった。


 天井の高い洞窟だ。壁のあちこちに光る苔が生えていて、思ったより明るい。地面には草も生えている。空気はひんやりしていて、少し湿っぽい。


 まずは観察からだ。


 俺は壁ぎわにしゃがんでしばらくほかの冒険者たちを眺めた。魔物がどこから出てくるのか。どんな動きをするのか。倒したあと、何が起きるのか。


 五分もしないうちに答えが一つ出た。


 ぷるぷるした、バスケットボールくらいの緑色のかたまりが、草むらから出てきた。スライムだ。近くにいた冒険者が剣でぶった切ると、スライムはぱっと光の粒になって消えた。


 あとには、硬貨が一枚ころんと落ちていた。


「本当に、お金が出るんだ……」


 しばらく見ていると、落ちるものは毎回ちがうことがわかった。硬貨だけのときもあれば、何も落とさないときもある。たまに、錆びた鉄の小手や、穴のあいた鉄の兜みたいなものも落ちる。冒険者たちは硬貨だけ拾って、ボロい防具はその場に捨てていく。重いし、たいしたお金にならないんだろう。


 そして、ごくまれに小指の先くらいの青く光るかけらが落ちた。それを見つけた冒険者は、飛びあがって喜んでいた。


「よっしゃ、欠片だ!」


 あれが精錬石の欠片ってやつか。


 ギルドの壁に貼ってあった「新人向けの心得」に書いてあったのを思い出す。魔導精錬石――エンチャントストーンは、武具を強化するための石。装備に当てると、その装備の力が一段上がる。欠片を十個集めると、精錬石一個分になるらしい。


 さて、見学はこのへんにしよう。


 俺はナナシを抜いて、草むらのほうへ進んだ。


 最初の相手はやっぱりスライムだった。ぷよぷよと跳ねながら、こっちに近づいてくる。


 スライムの体の上に小さな文字が浮かんだ。


〔スライム Lv1〕


 魔物のレベルまで見えるらしい。 スライムの体にも光の線が見えた。ぐるぐると渦を巻いた線の真ん中にひときわ明るい点がある。


 たぶん、あそこが急所だ。


 スライムが跳びかかってきた。俺は半歩横によけて、光る点にナナシを突き立てた。


 ぷしゅっ、と空気が抜けるみたいな音がして、スライムは光になって消えた。


「……一撃かよ」


 錆びた短剣なのにびっくりするくらいあっさり刺さった。線のつながっている点を突けば、力はいらないのかもしれない。


 足もとに硬貨が一枚落ちていた。拾い上げる。一ルーン。


 この一枚でパンが半分買える。


 なんだか、じんと来た。自分の力で稼いだ、初めてのお金だ。


 それと、もう一つ。スライムが消えた瞬間、胸の奥にぽっと小さな火がともったような感じがした。体の中に何かがすうっと流れこんでくる。これがレベルの元になる力なんだろう。


 その日は夕方まで第一層を歩き回った。


 スライムのほかに大ネズミという、犬くらいの大きさのネズミも出た。こいつは素早くて、最初は腕をかじられた。学生服の袖がびりっと破れて、血がにじんだ。


 痛い。ゲームとちがって、本当に痛い。


 でも、落ち着いて見れば、大ネズミにも光る点があった。首のつけ根の少し下。突っ込んでくるタイミングにあわせてナナシを置いておけば、自分から刺さりに来てくれる。


 サバイバルの基本は、「真正面からぶつからない」ことだ。敵が強いなら、地形を使う。狭い場所に誘い込む。足場の悪いところで戦う。大ネズミは岩のすき間に誘い込んで一匹ずつ相手にした。


 夕方までに硬貨は十二枚たまった。


 休憩のときに冒険者証に親指をあててみると、数字が変わっていた。


[鳴海カイ Lv3 解体屋 Fランク]

 力 7 守り 6 速さ 10 魔力 2


 レベルが二つ上がって、力は一つだけ。城のじいさんの言ったとおりだ。解体屋はレベルが上がってもほとんど強くならない。


 でも、今日わかったことがある。急所の光る点を突けば、力はいらない。大ネズミはレベル4で俺より上だった。それでも倒せた。


 それと、ほかの冒険者が捨てていったボロの防具をいくつか拾っておいた。穴のあいた鉄の兜が一つ、錆びた鉄の小手が二つ。


 帰り道、休憩のついでにその兜をじっと見てみた。


〔鉄の兜 +0〕


 光の線が兜の表面にあみ目みたいに走っている。そのうちの何本かは、切れていた。穴があいているところだ。


 城の武器庫で思ったことを試してみたくなった。解体屋は線にそってばらす職業。だったら、この線にそって刃を入れたら、どうなるんだろう。


 ナナシの先を線のつなぎ目にそっと当てる。


 すっ、と、刃が吸い込まれるように入った。


 兜がばらばらになった。


 鉄の板が四枚と、革のひもと、鋲が数本。まるでプラモデルのパーツみたいにきれいに分かれて地面に落ちた。


 そして、その真ん中に。


 小指の先くらいの青く光るかけらが、一つころがっていた。


「……え?」


 拾い上げる。ほんのり温かい。昼間、ほかの冒険者が飛びあがって喜んでいたのと、同じものだった。


〔魔導精錬石の欠片〕


 頭の中にちゃんと文字も浮かんだ。


 心臓がどくんと鳴った。


 小手でも試してみた。線にそってナナシを入れる。小手はばらばらになって、一つ目からは欠片が一個、二つ目からは二個出てきた。


 合計三個。


 手のひらの上で三つの小さな光がゆれている。


 落ち着け、と自分に言い聞かせる。ゲームでもよくあることだ。一見ゴミに見えるアイテムを分解すると、レアな素材が出てくる。たぶんこの世界の装備には、もともと精錬石の力がちょっとずつ混ざっているんだ。それを取り出せるのが、解体屋。


 でも、だとしたら、どうしてみんなボロの防具を捨てていくんだろう。


 解体屋っていう職業は、ほかにもいるはずだ。その人たちはこの欠片を取り出さないんだろうか。


 わからないことだらけだった。でも、わかったこともある。


 この迷宮には、ほかの冒険者が「ゴミ」だと思って捨てていくものが、山ほど落ちている。


 そして俺には、そのゴミから、宝を取り出せる。


 俺はナナシを鞘に戻して、ニヤリと笑った。


 帰り道、足もとに捨てられていた錆びた鉄の靴をもう一つ拾った。




第3話 了


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。