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      その九


 この放送回を観たドンは、


「よくやった」


 とぼくの頬をやさしくつねってくれた。


 そして市長のお詫び行脚の予算も、トビッキリとの契約が満了する川上さんのマコンドーレ加入も、すべて了承してくれたのである。


 あさ美お姉さんにアドバイスされた「第三者に撮影させる」うんぬんという行脚の問題は、関係者ではあるのだけれど、やはり三原監督にお任せしようと思っている。


 しかし先にも述べたが、三原監督は現在、ラブ・ウィンクスを祭り上げる計画を立てている新キャン連という組織に入れあげてしまっている。しかも『突撃となりの食生活』を観て以降、この界隈にその団体の本部があると思いこんでいるのだ。


「困ったな……」


 またぞろ〈高まつ〉で長考する。すると、あさ美お姉さんが、


「ねえ、たまきくん。だったら、監督さんの視点を、ラブ・ウィンクスから田上雪子ちゃんのほうに移行させればいいんじゃないかしら。だって雪子ちゃんは○○村出身なんでしょ? 三原監督が雪子ちゃんに着目したら、とりあえず監督さんの撮影チームを○○村まで、もってけるわよ。仕向ける方法はいくらでもあると思うな、お姉さんは」


 といってきた。


 川上さんにFAXしていただいた資料を手にしていたあさ美お姉さんは、さらに雪子ちゃんがラブ・ウィンクスの新メンバー候補だったことを指摘する。


「新キャン連が、ラブ・ウィンクスにすらなれなかった雪子ちゃんをスーちゃん役に祭り上げて、キャンディー隊のお三方に刺激をあたえる作戦を企てているってことにしちゃえばいいと思うな、お姉さんは。三原監督という人なら、きっと信じるわよ」


 予算に余裕のあるこのたびのわたくしG=Mは、翌日沼口隊長をたずねた。まずは田上雪子さんの安否を確認してきてもらうためである。


「よーし! ひさしぶりの探険だ! がんばるぞ!」


「あの隊長、できれば、蔵間鉄山っていう小説家の安否も確認してきてほしいんです」


「いいですよ。そのかわり、かつ丼かつどーん!」


 安否といえば専属コーチのぼくは、そろそろすみれクンの安否を確認しに行かなければならない。


 きょうのすみれクンは、ぼくの同級生が経営している喫茶店でオーダーの拒否をしながらわたくし船倉コーチを待つ、というマイボトルキャンペーンのポスターとほぼおなじ設定の課題に取り組んでいるのである。


「最初に出されるお水も拒否しなくちゃいけないんですか? コーチ」


「まああれは、良しとしよう。OKなのは、そのお水とマイボトル――ボトルの中身は自由だな。駄目なのは、オムライスとかナポリタンとか、そういう喫茶店の定番メニューね。しゃぶしゃぶとかは、どうせ喫茶店にはないだろうから、逆に注文してもいいよ。あっ、それからサンドイッチとかのパン類もぜんぶ禁止だからね」


「緊張しちゃうなー。でも、恥ずかしがりやさんという特性を改善するためですもんね。わたし、がんばります。コーチ」


 このように積極的な姿勢をみせていたすみれクンだったが、コーチが店に入ったときには、すでにテーブルのインベーダーゲームだかマージャンゲームだかで小銭をつかうというかたちで店側に寄与してどうにか体裁をつくろっていた。課題をクリアできなかったのである。


 同級生のシッくんに、


「わるかったね。そろそろ何か注文するから」


 とまず声をかける。


 シッくんは、


「あの子にオーダー取りにいったら、その時点でほとんど泣いてたよ」


 と逆に責任を感じていた。


 ゲームに熱中していたすみれクンは「ポン!」と叫ぶと、マージャンゲームで勝ったのだろう、


「やったー」


 と歓喜用の指定ポーズを決めている。


 コーチとおなじものをたのんだすみれクンは、


「ほれほれ、うしし、うしし」


 とひきつづき画面にむかってつぶやいていた。


 そう促されたダイアンちゃんは、いよいよすみれクンに身ぐるみ剥がされることとなる。


 すみれクンは、そんなダイアンちゃんに、


「わたしもスースーしてるけど、がんばってるんだからね」


 というような慰めの言葉もなにげにかけていた。


 なるほど確かにスカートのなかに現在なにもはいていないのであれば、すみれクンもさぞスースーしているにちがいない。


「ちゃんと指示されたとおりにしてますよ、コーチ」


「ししし指示って、オレ、そんな指示出したっけ?」


「ええ。パン類はすべて禁止だって、いったじゃないですか、コーチ」


「それで……ノーパン……」


「はい」


 すみれクンは現在のスースー感を実況することはできるけれど、ノーパンを証明するのは恥ずかしいです、と免責をもとめてきた。


 もともとそんなことを証明してもらおうなんてかんがえてもいない。


 それでも専属コーチのぼくは、


「うーん、まあこっちも責任があるからね。どうだろう、そういうわけにも、たぶん、いかないかもしれないなぁ……」


 と改善を願っている親御さんをあくまでもおもんぱかって即答はさけていた。


 すると、それを受けたすみれクンは、


「だったら、お母さんに相談してみますね、コーチ」


 とすぐケータイでお母さまにお電話してしまった。


「おかおかおかおかお母さまに電話って、お母さまにおでおでおでおでお電話されるんでしたら、しょしょしょ証明しなくても証明しなくてもぉぉぉぉぉ」


「はい、どうぞ」


「あっ、もしもし、お電話替わりました。すみれさんの恥ずかしがりやさん改善の専属コーチをさせていただいております、船倉たまきと申すものでございました――はい、はい、こここ今晩七時ですか! あっ、わたくしのじじじ自宅に、ええ、ええ、わかりました。おまおまおまおまお待ちして、ございます」


 とまあ、そういうことに、あいなってしまったのである。


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