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その四十六
中西さんは添乗員の仕事が大好きである。だからあさって出発するふ菓子国への旅にも、
「ああ、早く行きたい」
と胸をわくわくさせているのだった。
胸といえば、ぼくはここ数日心肺機能を整える例のトレーニングを怠っていた。ピーチタルトにも行っていたし、あさ美お姉さんより頂戴した生写真にも気を取られていたからである。
そんなわけで、今晩のわたくし桃パイドンは中西さんに直訴して、ふ菓子国とこちらとの磁場(?)には、とくに調整は必要ないのに生身の胸をお借りすることとなっていたのである。ちなみにトレーニングはかつてないほど激しいものになった。ここ数日怠っていたからである。
やがて中西さんは畳を入れ替えた例の六畳で寝てしまった。ぼくも寝室にもどる。
「かなりがんばったな」
と横になっていると、
「ん」
すみれクンからメールが送信されてきた。
すみれクンはメロコトン博士の論文を解読して、モンブラン帝国に行ってきたらしい。
猛特訓でくたくたになっていたが、さすがにこれを読んだときには飛び起きてしまった。ともかくお話をおききする。
「もしもし」
「コーチ、チャオ♪」
すみれクンは上機嫌だった。
詳細をうかがうと、すみれクンが立ち寄ったモンブランのショッピングモールには、ポケモンやクレヨンしんちゃんなどのこちらの商品がたくさん売られていたという。
「バッタもんかなぁ」
「たぶん――ドラえもんとか、やたら細長かったもん」
「マクドナルドはあった?」
「ありました。あとドムドムバーガーも入ってたかなぁ」
すみれクンはモンブラン帝国の様子を夢中で話していた。よっぽどうれしかったのだろう。すみれクンは、お話の最後に、
「ねえコーチ、記念に〝おかんこ〟あげますよ」
といってきた。おかか雑炊ではない。何度聞き返しても、かの〝おかんこ〟なのであった。
「そうですか……」
「ええ」
「おかおか、おかんこを……」
「うん――だから明日、旧メロコトン屋敷に来てくださいね」




