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その四十五
じっさいには存在しない古書店の夢で起きる。この古書店が夢に出てきたのはひさしぶりであった。
あさ美お姉さんと飲んだ翌日はたいてい二日酔い気味になる。今朝もそうである。
朝風呂に入ったのちにまた軽く寝る。
お昼はおかか雑炊を食べることにする。飲みすぎたときはこれである。
午後もぼんやりしていると、ダルトンからメールが送信されてきた。川上さんに会いたいのだが、うまく取り持ってくれないかうんぬんという内容だった。とりあえず川上さんに連絡してみる。
「もしもし」
「あら、船倉さん」
川上さんは自宅でお昼を食べている最中だった。謝ったのちにかけ直す旨を伝えると、
「船倉さんお昼食べたの?」
ときいてきた。
「食べたよ」
「なに食べたの?」
「おかか雑炊」
「えっ、そんなにわたしの〝おかんこ〟を食べたいんですか?」
川上さんは急に元気になった。かなり意図的な聞き間違いである。おもしろがっているのである。ちなみにこの〝おかんこ〟なる言葉は、わたくし船倉たまきも若いころに森鴎外経由で学んでいる。
「おかんこじゃないよ。おかか雑炊だよ、川上さん」
「じゃあ、おかか雑炊とわたしのおかんこ、どちらが最終的には食べたいですか? ちゃんとこたえてください」
「うーむ……ちょっと、かんがえさせてください」
「どうぞ」
「いいます」
「はい」
「ええ、おかんこのほうを、頂戴したく存じます」
「やっぱりイヤらしいのね、船倉さん」
ダルトンのことを伝える。川上さんはダルトンとの初会合のさい運転手として同行しているので面識はある。川上さんは会うことを了承してくれた。電話を切る。
洗い物を済ませたのちに、もうちょっと寝ることにする。いっこうに調子が上がらなかったのである。
午睡でも先の古書店は出てきた。
ぼくはそこで書物を物色していたのだった。
コンテナボックスに順列おかまいなしに入っていたトーキングヘッズの写真集を偶然みつける。
「ティナ・ウェイマスって、ヌードになってたんだ……」
夢の話である。しかしぼくは驚愕していた。横っちょから、
「船倉さん、それ合成写真ですよ」
と親切におしえてくれる人がいた。赤木さんだった。
「ああ、たしかに……顔とからだの肌の色、あきらかに合ってないですよね」
と写真集をさらにパラパラめくる。
やがてひらひらのお面を付けたあさ美お姉さんがベッドに横たわっている見開きのページを見出す。
「ピピピピンクをピンクを取っ払ってしまっているぅぅぅぅぅ」
横っちょでそれもみていた赤木さんは、
「あの国は平気でそういうインチキなものを、よその国に売りつけてるんだよなぁ」
とぶつぶついっている。
やがて赤木さんはもよりの梯子を使って上の段にある書物を取りにあがって行った。
ぼくはページをめくる。つぎのページは超かわいいマフィンだった。
赤木さんにおしえようと思って上を見る。
赤木さんはいつのまにかかなり高いところまで梯子であがっていた。夢とはいえ、あんなに高いところまで登って大丈夫だろうかと心配になった。




