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その三十四
食品コーナーで「育ちざかりに栄養ごくごく」を大量に買い、エコバッグに詰め込む。
そして〈うなぎ食堂〉におもむく。
ピーチパイを一つ食べたのちにコシミハルの「シュガー・ミー」をうたう。
店を出ると、農道の先には馬車に乗った御者がぼくを待っていた。
「自宅までお願いします」
ピーチタルトの住まいの玄関先で、
「買ってきたよ」
とエコバッグを肩から下ろす。菊池さんは、
「ありがとう」
とそれを両手で持って台所のほうへ歩いていった。菊池さんが持つと重そうであった。
今日は菊池さんと、スーマリ氏に用意してもらった例の裏技をやってみようと思っている。その裏技は男女でおこなわなければならないからだ。
マニュアルに従ってまずはスーパーマリオをプレイする。
マニュアルにはスーパーマリオの「3-1」で無限UPなる技を決めなければならないと記してあった。
ゲームはあまり得意ではないので悩んでいると、菊池さんは、
「こんなの簡単だもん」
と、あっという間に「3-1」まですすんだ。
そして最後の石段のところでノコノコとかいうやつをいったん気絶させ、石段に蹴っ飛ばして跳ね返ってくるノコノコをまた蹴っ飛ばすという自動の状態にマリオを整えてくれた。
マニュアルは、この状態のときにカセットをガシャッと取り出して、ファミスタ87と差し替えろと指示している。
指示通りカーズとガイアンツを選択する。
カーズの先発ピッチャーを「きたへふ」にし、ガイアンツの二番打者の「こうの」にシュートでデッドボールを当てる。
ぼくは「きたへふ」役だったので、菊池さんにあやまりながら内角をえぐった。
「ふむふむ――それで『くろまて』のときにカウントをワンワンにしてカセットをガシャッと抜くんだな」
マニュアルをみながら、スーパーマリオにカセットをまた差し替える。
つぎの指示は「2プレイヤーゲーム」を選択して、マリオのほうをすぐやられるようにして、Ⅱコントローラーのルイージを呼び出すというものだった。
「はい、マリオ速攻やられました。ルイージどうぞ」
すると、まだ小さい状態で走り出したルイージはいつもの緑色の格好ではなく、ピンク色の和服みたいなやつを確かに着ていた。
「でも、これ普通のスーパーマリオと内容は一緒かもしれない」
菊池さんの指摘通り、この裏技をもちいた「ピーピーねえねの冒険島」に相当するゲームは、ただルイージがピンクっぽくなっているだけの違いしかなかった。
マニュアルには電源を切ってもかまわないが、カセットを抜くと通常のスーパーマリオにもどってしまうと記されていた。ぼくは互換機にスーパーマリオのカセットを差したままにしておく。
この互換機は〈たうえ温泉旅館〉へ行くすみれクンのお母さまに持たせる予定である。
さて、藤吉郎さんがみつくろってくれた今度ぼくが経営するビデオ屋の建物なのだが、なんでも元は医療センターだか研究センターだか、とにかくそんなところだったらしい。
「宮廷に近すぎて奥方さまが嫌がってるから、そのセンターは移転したんだって」
菊池さんによると、藤吉郎さんは、
「ピーチタルトはどんどん既婚者が増えているんです。ですからレンタルより個室ビデオ屋のほうがきっと儲かりますよ、わっはっはっはっはぁ」
といっているようである。
ところで、藤吉郎さんが菊池さんより買い取った例のはまぐりっち群なのだが、じつは菊池さんの元におおむねもどってきている。
それは、ぼくがカードゲームをしている最中に、
「皇帝、あれ、じつは妻が集めてたものなんですよ」
とジャクソン様にいってみたら、
「え! 知らなかった。ごめんな」
と無償で返してくれたからなのである。
そんなわけで、ピーチタルトの住まいには、はまぐりっち部屋なるものが完備されているのだ。ちなみに大借金をして購入した等身大の着ぐるみ(身長152センチ以下の人が対象)も、その部屋で幅を利かせているのである。




