32- その事件の後
【勝 清隆】
1891年(明治24年)12月16日(水) — 市ヶ谷、第二局
その夜、僕は一睡もできなかった。それ自体は別に珍しいことではないのだが、その不眠の原因がいつもの不眠症ではなく、目を数秒以上閉じると必ず加瀬修平の遺体が後ろに倒れていく姿が脳裏に浮かんでくるからだった。
公式報告書の作成には夜明けまでかかった――当然ながら、内容は骨抜きにされたもので、 「身元不明ノ銃撃犯」という表現が、2ヶ月前に現れて加瀬に首相を辱めるよう要求した覆面の男に関する記述をすべて置き換え、また「予期サヌ事態」という言葉が、雇い主が政府自身によって暗殺されたと確信する2人の男たちとの、人けのない埠頭での素手による乱闘を覆い隠していた。
厳密に言えば、それは嘘ではなかった。それは単に、完全な真実を語れば、自分自身の上司たちに対してもまだ説明できないような説明を必要とする部分だけを切り取った、真実だったのだ。
吉田 大地は7時に到着した。その顔には、僕とまったく同じように徹夜した跡が刻まれており、駐屯地の前に開いたばかりの屋台で買った温かい麺の入った器を二つ持っていた。
—「ほら」と彼は言い、一言も付け加えることなくそのうちの1つを私の前に置いた。彼にしては、その無言が彼の状態を雄弁に物語っていた。
—「どうも」
彼は僕の机の向かいにある椅子にどっしりと腰を下ろし、しばらくの間、私たちは黙って食事をした――その沈黙は、普段私たちの間にあるような軽やかなものとはかけ離れていた。
—「清隆くん」と、彼はようやく箸を置いて言った。「あの家族のことだ。身内の一人を、口を割らせるくらいなら殺すことを選んだあの家族のことだ。君は、これで終わりだと思う? それとも、これはまだ始まりに過ぎないと思う?」
—「始まりだよ」と僕はためらうことなく答えた。それが、彼に答えられる唯一の正直な答えだったからだ。「残念ながら、ほんの始まりに過ぎない。カセは20年間、原稿を売り続けていた。7部あり、そのうち4部はすでに、我々が知らない買い手に渡っている。僕たち解明しようとしていたあの記号は、その秘密を守るために殺人を犯してきた一族のものだ。これのどこが『決着』に見えるというのか。」
大地はゆっくりと頷いた。僕の言葉を軽く受け流そうとはしなかった――それが、一見無頓着に見える彼を、この8年間ずっと傍に置いてきた理由の一つだった。彼は、いつ冗談を止めるべきかを正確に理解していたのだ。
その直後、竜橋 新が到着し、捕らえられた二人の男に関する報告をもたらした――彼らは現在拘束されており、協力的ではあるものの、射撃犯や加瀬が言及した「一族の黒幕」の正体について、これ以上の情報を提供することはできなかった。
—「カセが、自分たちが半分しか理解できていない世界への唯一の架け橋だと、皆は心から信じているのです」と竜橋は言った。「カセがいない今、皆は私たちに提供できるものも、隠すべきものもありません。」
—「では、木下は?」と、僕は思わず口にしてしまった。
竜橋は、その質問に驚いた様子で僕を見つめた。
—「また木下に連絡を取ってほしいのか?」
—「まだいい。」僕はこめかみを揉みながら、一晩中続いた疲れが思考の隅々まで重くのしかかっているのを感じた。「だが、今後数日間、木下が普段と何か違う行動をとっていないか、誰かにこっそり見張ってほしい。あるシンボルが人命を奪うことになったその週に、そのシンボルの意味を説明しようともしなかった男が、いつまでも黙り続けているとは限らないだろう。」
10時、松方首相官邸からの呼び出しにより、私は市ヶ谷を離れ霞が関へ向かわなければならなかった。そこで私を出迎えたのは、松方公本人――公式には政府の日常業務で多忙を極めているため――ではなく、無表情な顔つきが不吉な予感を漂わせるある国務大臣だった。
—「勝中佐。」その男は、身だしなみの整った50代で、自分とは無関係なメッセージを伝えることに慣れた者特有の冷淡な礼儀正しさで、僕に席に着くよう促した。「首相閣下は、観菊会でのご尽力に対し、改めて感謝申し上げております。しかし……」
—「しかし。」
— 「しかし、作戦の最中に容疑者が死亡したこと、 現場に 頭山 満 の『玄洋社』の情報提供者が関与していたこと——ご存知の通り、同組織はテロ組織と見なされている——、そして真夜中の軍港で自組織の一員を暗殺させることのできる組織が存在するようである——これらすべてが、内閣の一部のメンバーの目には、単なる軍事情報案件の枠を超えた事件のように見え始めている。」
その控えめで丁寧な言葉遣いの裏に、現実的な脅威を感じ取った。権力の回廊のどこかで、すでにこの捜査から俺を外す理由、あるいは俺が機密保持の主導権を完全に失うような上位のレベルへと引き上げる理由が模索されていたのだ。
—「内閣に対しては敬意を表しつつも」と僕は言った。まるで、脆い氷の上を歩く男のように、言葉を選びながら。「現時点で、その組織を特定し、その拠点の位置を突き止め、そして彼が亡くなる前に、その組織構造や資金源に関する重要な情報を入手できたのは、私ただ一人です。今この案件を取り下げれば、誰が加瀬修平を殺したのか、そしてその理由を理解する手がかりとなる唯一の糸を失うことになります。」
秘書は長い間私を見つめ、その瞳には、自分の立場として私の言葉を忠実に報告すべきか、それとも隠すべきか迷っている男の躊躇いが浮かんでいた。
—「中佐どの、2週間の猶予です」と彼はようやく口を開いた。「2週間のうちに、具体的な成果――名前でも、有力な手がかりでも、内閣が進展として提示できるような何か――を提示してください。この期限を過ぎれば、この件はより大規模な委員会に移管されます」
二週間。
なんてことだ! 二週間だ!
僕はその面会を終え、この捜査においてこれまでにないほど、時間が今や僕に不利に働いているという、身も凍るような確信を抱いてその場を後にした。
僕はすぐには霞が関を離れなかった。
秘書は、僕を見送る前に、外務大臣である榎本武揚子爵が、僕が帰る前に「面会を希望している」と伝えた――この省特有の控えめな言い回しでは、丁重に断る余地など微塵もなかった。
僕は、榎本閣下は、加瀬が勤務していた吉祥寺の榎本家とは単なる同姓同名の人物だと思っていた。というのも、榎本閣下は会津出身であり、吉祥寺の榎本家が没落した西南戦争の際には親政府派だったからだ。
しかし、これは我々の大きな見誤りであり、貴重な手がかりを見逃してしまったのだと思う。
僕は、冷めたタバコの煙と海の匂いが漂うオフィスで彼を見つけた――完全に密閉された部屋にしては奇妙な匂いだったが、棚の上に、彼自身の手書きの注釈が添えられた貝殻や海図のコレクションがあるのに気づくまでは。それらは、外交の応接室で過ごすようになる前に、船の甲板で過ごした人生の名残だった。
—「勝中佐。」55歳の榎本氏は、何十年にもわたる海と政界での経験によって刻まれた風貌で、しばらく僕をじっと見つめた後、席に着くよう促した。「ご調査は、私の名を冠した不動産に関わっているとのことです。」
—「吉祥寺近くにある榎本邸ですね。はい、閣下。」
彼は短く、喜びのない笑いを漏らすと、立ち上がって自ら二杯のお茶を注いだ。彼の身分としては珍しい振る舞いで、まだその意味を理解できないまま、私はその様子を心に留めた。
—「その不動産は、私の弟の所有物でした」と彼は、この件に関して形式を重んじることに、とっくに意味を見出せなくなった男のように、率直に言った。「榎本義明だ。明治十年以来、一言も言葉を交わしていない。」
その瞬間、僕の頭の中で何かが再構築されるのを感じた――それまで半分しか組み合わさっていなかった、この事件に関するすべての断片が。
—「西南戦争ですね」と僕は言った。
—「西南戦争だ」と彼はうなずき、一瞬、窓の外へと視線を落とした。
—「西南戦争だ」と彼はうなずき、一瞬、窓の外へと視線を落とした。「私は政府の側を選んだんだ、勝くん。幕末に北海道の独立を宣言したことで、一度は赦されていたんだ。二度と間違った側を選ぶわけにはいかなかったし、そもそももうその思想には共感していなかった。一方、弟は別の道を選んだ。弟は、政治的な信念というよりは同情から、密かに西郷の軍に食糧を供給していた。義明は決して思想家ではなかっ た。彼は、何らかの形で関与せずに友人が死ぬのを見るのが嫌いな男だったのだ。」
—「そして、その代償を払ったわけだ。」
—「弟の家は没収され、その名は汚された。」榎本は、茶碗を口に運ぶことなく、テーブルに置いた。「私は彼を助けるために何もしなかった、勝くん。苦労して取り戻した自分の立場を危うくすることなくして、それはできなかった。私は彼を見捨ててしまい、彼がどうなったのかを知ることも決してしなかった。」
—「明治12年に亡くなったと、私は聞いている。」
—「そう、噂ではそう言われている。」彼はそこで、新たな関心を込めて私を見つめた。「それを疑っているのか?」
私は答えを慎重に選んだ――実のところ、榎本義明の死について確固たる証拠は何もなく、その日付以降、彼の痕跡が一切見当たらないという事実だけだった。しかし、このような調査においては、それだけでは十分な確信とはなり得ない。
— 「分かりません、閣下。ただ、誰も実際に目にしたことのない死者たちには、次第に疑念を抱き始めています。」
榎本は長い間沈黙を守り、再び口を開いたとき、その声からは、会話の冒頭に見られた外交的な冷たさがすっかり消え失せていた。
— 「もし弟が生きているのなら、勝くん。そして、君が追っていると思われることに彼も関わってきているのなら、ただ一つだけお願いがある。弟に対して行動を起こす前に、私に知らせてほしい。弟を庇うためではない――長年の沈黙を経て、私にはもはやその権利も、その気もない。だが、それが私が彼に捧げられる唯一の家族としての行為であり、また、男なら、その人物が誰なのかを、二度と奪われる前に知るべきだからだ。」
その約束が、その時点で既に十分にデリケートと見られていた逮捕を、いざという時にさらに複雑にするだろうと分かっていながらも、私はあまり乗り気ではないまま約束した。
…
その夜、僕は吉祥寺に戻った。それは自分の意思ではなく、やむを得ない事情によるものだった――体が限界に達し、もはや意志の力でも無視できなくなっていたのだ。
望美は玄関で僕を待っていた。彼女の顔には、隠そうともしない不安が浮かんでいた。
—「おかえりなさい、お坊ちゃん!」僕の表情は疲れ切ったまま、固まったままだった。のぞみは眉をひそめ、
「香織子さまからすべて聞きました」と、彼女は淡々と言った。そして、最も深刻な時しか見せたことのないような優しさで、僕のコートを脱がせてくれた。「今日は何か食べましたか?」
—「今朝、麺を一杯食べたわ」
—「それじゃ足りないわ、坊ちゃんもわかってるでしょう」彼女は僕より先に台所へ向かった。そこにはすでに温かい出汁の香りが漂っていた。「座って」
香織子はすでに食卓についており、目の前に開いてあった本を、僕が入ってくるのを見て閉じた。擦り切れた表紙を見て、僕はそれが自分の『シャーロック・ホームズ』だと気づいた。彼女が初めて「借りて」から数ヶ月経っても、今でも定期的に読み返しているあの本だ。
—「だんなさまの顔色、ひどく最悪ね」と、彼女は遠慮なく言った。
—「サンキュー」
—「それは事実の指摘であって、褒め言葉じゃないわよ」彼女は立ち上がり、のぞみが用意したスープを自分で椀に注ぎ、抗議の余地を一切許さないような断固とした態度で私の前に置いた。「食べて。それから、内閣の重鎮たちがだんなさまに何を言ったのか話して。だんなさまの顔を見れば、あれが単なる形式的な会談ではなかったことがわかるから。」
—「一体どうやって、俺が内閣に呼び出されたって知ったんだ?!」
—「この世に生まれて間もない人間じゃなく、かつ蘭学の天才じゃなくても、それくらいは推測できるでしょう、だんなさま。首相暗殺未遂事件の首謀者とされる人物が自ら殺されちゃったんだから、だんなさまを呼ぶわけがないじゃないですか!政府の連中は、一体一日中何をやらかしているんだ!」
僕は呆然とした。その言葉の下品さと率直さだけでなく、その鋭い論理にも打ちのめされたのだ。
—「確かにその通りだ。」
俺は食事をしながら、彼女に話した――2週間という期限、事件の管轄移管というほのめかされた脅し、そしてまだ知らないことの重みを徐々に感じ始めている男の疲れについて。
—「2週間ね」と彼女は思案げに繰り返した。「短いわね。」
—「すごく短いよ。」
—「信じられないほど、無責任なほど短いと言いたいくらいだ。」
彼女はおにぎりをかじった。
「それなら、あなたのオフィスで寝不足になるような無駄な時間は過ごさないで」と彼女は言った。それは、深刻な事態を少しでも耐えやすくするために、彼女がいつも使うあの軽やかな口調だった。「今夜は、しっかり眠って。本物のベッドで、ぐっすり眠るんだ。明日、また捜索を再開しましょう。」
僕は、本当の確信というよりは反射的に反論しようとしたが、彼女が僕の腕に手を置いた――もはや特に意識しなくても自然にできる、そんな素朴な仕草――そして、あまりにも長い間抑え込んでいた疲労に、もう一言も発することなく身を委ねた。
その後の数日間は、ある意味では12月15日の夜そのものよりもさらに過酷なものだった――その激しさゆえではなく、空虚さゆえに。
僕たちが開こうとした手がかりは、どれもすぐに途絶えてしまった。捕らえられた二人の男からは、それ以上の情報は得られなかった。玄洋社のリーダーである頭山は、約束していたにもかかわらず、自身の組織から得たのは気まずい沈黙だけだった。そして、再び手紙で連絡を取った木下からは、何の返事もなかった。
木曜日の夜、僕は再びタバコを吸い始めた。最初は1本。机の引き出しから盗んだものだ。そこには、自分でも完全には認めようとしなかったが、数ヶ月前から開けていた半ば空のタバコが隠されていた。そして金曜日は2本。
土曜日、大地は事務所の入り口で、12月の冷たい空気の中に煙が消えていくのを、普段ならもっと緊急性の高い案件に注ぐような集中力でじっと見つめている私を見つけた。
—「やめたはずじゃなかったのか」と彼は、特に非難するわけでもなく、ただ事実を述べるように言った。
—「わかってる」
—「香織子さんは知ってる?」
—「まだ。」
—「お前は殺されるぞ!」と彼は、いつものように陽気に言った。
—「そうかもね。」
彼はそれ以上何も言わなかったが、その目には、この沈黙が果たして賢明なのかと真剣に疑っている様子が読み取れた。
彼が去った後、紙を1枚取り出し、解明すべき未解決の事件を重要度順に書き出した。
• *加瀬事件 — 最も明白なもの
• *木下事件 — なぜ尚江は、そのシンボルの意味を私に教えてくれなかったのか?
• *秦氏事件 — その秘密をすべて明かしきっていない、不思議な一家
• *香織子事件 — すべての謎の中で最大の謎。彼女はどこから来たのか、そして一体何者なのか。1ヶ月間一緒に暮らしても、香織子から重要な手がかりを得たにもかかわらず、答えの片鱗すら掴めていない。
夜については、以前の状態に戻った――2時間、時には3時間、それ以上は決してなく、その合間には、香織子が自分の部屋から聞こえるかどうかさえ考えずに、自分が取り出したバイオリンの音が響いていた。
彼女は聞こえていた。僕はそれを知っていた。そうした夜、彼女は数週間前とは違って階下には降りてこなかった――単なる疲労以上の深い悲しみを察して配慮してくれたからかもしれないし、あるいは12月15日の後、誰にも見せない傷を癒やすために、彼女自身も少しの静寂を必要としていたからかもしれない。
土曜日の夜、3時間ぶっ通しで、どうしてもきれいに弾きこなせないバッハのパッセージを練習していたところ、彼女は私の書斎のドアの枠に寄りかかって立っていた。肩にはショールを羽織り、僕を見つめるその表情を、僕はすぐには読み取ることができなかった。
—「またタバコを吸い始めたのね」と彼女は言った。それは質問ではなかった。
—「木曜日からだよ」
—「それで、いつ私に言うつもりだったの?」
—「その質問には、まともな答えが思いつかなかったんだ」と僕は認めた。満足のいく答えとは言えないが、少なくとも正直な答えだった。
彼女は近づいてきて、いつものように敷居に腰を下ろし、しばらく黙ったまま、私が同じ一節を何度も読み返すのを聞いていた。私はその一節を最後まで読み終えることがどうしてもできなかった。
—「行き詰まっているのね」と、彼女はついに口を開いた。「捜査だけじゃない。すべてにおいて」
—「ああ」
—「それなら明日」と彼女は言った。「たまには、本当に休んで。逸子さまがお越しになるんだから。一日中ここに閉じこもって、くよくよしているわけにはいかないわ」
僕は反論しなかった。その夜、僕にはその気力も意欲もなかったのだ。




