31- 加瀬の終わり 〜第2部〜
【勝 清隆】
銃声が聞こえてきたのは、弾が命中した後のことだった――その不条理さゆえにほとんど滑稽でさえある、この些細な出来事を、もっと素早く反応する代わりに、これほどまでに冷静なまでに正確に認識してしまったことを、私は決して自分には許せないだろう。加瀬の頭は、その乾いた音が港の冷たい空気を切り裂くよりも前に、まるでその音自体が、先立って飛んできた弾丸を追いかけなければならなかったかのように、後ろへと倒れ込んだ。
彼は、もう一言も発することなく、顔に驚きを浮かべる間さえなく崩れ落ち、石畳の上で動かなくなった。街灯の薄明かりの下で、彼の身の下に暗い染みがゆっくりと広がっていった。
僕はすぐには動かなかった。
それは勇気などではなく、自分の目が見たばかりの光景を、脳が――僕に永遠のように感じられたほんの一瞬の間――受け入れようと拒む、ただただ動けない状態だった。
—「キヨタカ!」 屋上から響いた香織子の叫び声が、どんな軍事的反射神経よりも効果的に、僕をその麻痺状態から引き戻した。
僕は荷物の箱の陰に身を隠した。心臓は、ここ数年感じたことのないほどの激しい鼓動を打っていた。
一発の銃弾が、外科手術のような精度で飛んできた。その発射角度は暗闇の中で特定できなかった――反対側の路地に位置する大地や竜橋には遠すぎるし、屋上にいる十部にとっても遠すぎる距離だった。
十部は――後になって初めて知ったことだが――あの混沌とした最初の数秒間、ただ手をこまねいていたわけではなかった。
射手を特定できないと悟ると、彼女は楽器を唇に当て、暗闇の中でまだ僕に突進してくる二人の男たちに向けて、人間の耳にはほとんど聞こえない地を這うような重低音を放った。それは、準備ができていない者が近づけば、その平衡感覚を乱すのに十分なものであった。
これは、指導者の監督下にある軍事演習以外では厳禁されている「霊血」の使い方だったが、あの夜、彼女も僕も、それを詫びるなどとは微塵も思わなかった。
—「どこだ!」僕は特定の相手も定めずに叫び、周囲の屋根をじっと見渡したが、暗闇は何も映し出さなかった。
二人の男のうち最初の男は、走り出す途中の半ばで突然つまずき、両手を耳に当てた。その痛みに満ちた仕草は、僕がすでに知っていた事実――つまり、十部が屋上から、彼が前進し続ければ待ち受けている運命の予兆を彼に味あわせたばかりだ――を知らない者には理解できないものだった。
—「わからない!」と十部は叫び返した。その声には、今まで見たことのない苛立ちがにじんでいた。「音が倉庫の間で反響して、音源を特定できないんだ!」
その返答のなさをさらに考え込む間もなく、背後の路地から慌ただしい足音が聞こえ、私は思わず振り返らざるを得なかった。
前日に大地が説明していたスーツ姿の二人の男――あの港湾労働者を誘拐しようとしたのと同じ男たち――が、暗闇から飛び出してきた。彼らは逃げるのではなく、真っ直ぐに突進してきており、その顔は盲目の怒りで歪んでいた。
—「貴様だ!」と、先頭の男が叫んだ。肩幅の広いその男の顔を、僕はその瞬間初めて目にした――角張った顔立ちで、片方の眉を横切る古い傷跡があった。「お前たちがあいつを黙らせたんだ!」
—「そんなことない――」
僕は言葉を言い終える暇もなかった。彼の拳が、素早く、訓練された動きで飛んできた――ただの街頭チンピラの即興的な攻撃ではなく、もっと計算されたものだった。僕はかろうじてそれをかわし、その一撃の気流が顎をかすめるのを感じながら、湿気で滑りやすい石畳の上でバランスを取り戻すために一歩後退した。
—「よく考えろ、愚か者!?」と俺は言った。すぐに反撃するのではなく、二発目の攻撃をかわしつつ、それでもなお、事態が取り返しのつかないものになる前に、何とか収めようとしていた。「俺が自ら尋問したばかりの男を、なぜ黙らせなきゃいけないんだ?」
—「口が軽くなるのを防ぐためだ!」彼は再び襲いかかり、右手に短剣が現れた。「今夜、俺たちがここに来ることを知っていたのは、他に誰もいなかったんだ!」
それは――対峙の真っ只中で、僕は氷のように冷たい明快さで理解した――彼の視点からすれば、悲劇的ながらも一貫した論理だった。
彼の立場からすれば、他に合理的な説明などあり得なかったのだ。
しかし、そのことを知っているのは、加瀬と彼の手下たち、私たち、そして……おそらく黒幕である仮面の男だけだ。
大地と竜橋は物音に誘われて、ほぼ同時にそれぞれの持ち場から飛び出してきた。そして、その後繰り広げられたのは、決して整然とした戦いとは呼べない光景だった。暗闇の中で交錯する一撃、倉庫の間の狭い空間で半ば抜かれた刀、罵声と荒い息遣いが入り乱れる中での一戦だった。
僕はようやく、6年前に武道館で習った技で相手の武器を奪い取った。真夜中の人けのない埠頭で、実際にこれを使うことになるとは夢にも思わなかったが、愛刀「神眼」の助けも少し借りてのことだった。
彼は息を切らして膝をついた。その瞳に映っていたのは、服従ではなく、必死に誰かを責めようとし続ける怒りだった。
—「きさまには分からないだろう」と、彼はまだ膝をついたまま言った。その声は、敗北というよりは絶望に近い何かに震えていた。「カセ先生は、俺たちに残された唯一の頼りだった。先生がいないと、俺たちには何も残らない。守ってくれる者も、給料も、頼れる名前もない。」
その言葉は、あの夜受けたどんな打撃よりも、ずっと長く俺の記憶に残った。それは、これらの男たちが決して確固たる犯罪者だったわけではなく、ただ投げかけられた唯一の救命浮輪にしがみついていた、また一人の難破者たちに過ぎなかったという、ほとんど無意識の告白だった。
その直後、竜橋は2人目の男を無力化した。その冷徹な手際ぶりは、僕がそもそもなぜ彼を採用したのかを改めて思い起こさせるものだった。
その後訪れた静寂は、それまでの混沌よりもさらに耳をつんざくようなものだった――ただ、5人の荒い息遣いと、桟橋に無造作に打ち寄せる波の音だけが、その静寂を破っていた。
—「キヨくん」と大地が言った。彼の袖には――自分の血ではないことを願ったが――血が染み付いていた。「カセは」
僕は遺体へと駆け寄った。そこに何があるかは、すでに確信していた。頭蓋骨の付け根にある、きわめて正確な傷跡は、射手の腕前について疑いの余地を全く残さなかった。プロだ。即席の拳銃を手にした単なる手下などではない。
何か役に立つものが見つかるという現実的な期待というよりは、職業的反射として、僕は素早く遺体のポケットを捜索した。
無地のハンカチ。小銭が数枚。そして、ジャケットの内張りに挟まれていたのは、擦り切れた小さな写真だった。そこには、見習いの着物を着た10歳ほどの少年が、廃墟となる前の榎本邸と思われる建物の前に立っている姿が写っていた。
間違いなく加瀬自身だろう。人生がこれから彼から何を奪おうとしているのか、まだ何も知らなかった頃の姿だ。私はその写真を自分の手帳に挟み込んだ。なぜその行為が、その瞬間、私が探していた他のどんな証拠品よりも重要に思えたのか、自分でもよくわからなかった。
香織子と十部は、裏口のはしごを駆け下りたせいで息を切らしながら、屋上から降りてきた。
香織子は遺体を見て突然立ち止まり、片手を口元に当て、今まで見たことのないほど青ざめていた。彼女はイスラム教の信仰告白「神は唯一神のみ」と囁き、まだ見開かれたままの加瀬の目を閉じてあげようと身をかがめた。
その間に近づいてきた大地は、彼にしては珍しく無言でその仕草を見つめていた。冗談も、コメントもなく、ただ重々しい表情だけが、彼の絶え間ない冗談の下には、常に、真摯に受け止めるべき事柄に深く心を配る男がいたことを、改めて私に思い起こさせた。
—「少なくとも、それだけには恵まれたな」と、彼はようやく低い声で言った。「そのようないくつもの男たちが、たいてい得られるものよりは、ずっと多い。」
—「名前を言おうとしていたのよ」と、ついに香織子が言った。その声は震えていた――怒りからだと、私はしばらくして気づいた。恐怖よりも、むしろ怒りからだったのだ。「もうすぐそれを出そうとしていたんだ。その音節を口にする直前で、その器は溢れかえり、死の天使が彼を連れ去ってしまった。」
俺はすぐには答えなかった。7番埠頭の冷たい石畳に横たわる加瀬修平の遺体を見つめながら、彼が12年間にわたる秘密と、今や未完成の一音節に縮んでしまったその名前を、共に持ち去ってしまったことを思った。
—「ハ」と、僕はようやく口を開き、彼が言い終える間があった唯一の言葉を繰り返した。「これだけでは、何かを確実に断定するには不十分だ」
—「それでも、無視できるほどのことじゃない」と、十部は言った。彼はすでに周囲の屋根を系統立てて見渡しており、弾道の推定経路を探していたが、見つからなかった。
—「とはいえ」と香織子が言った。「日本には『ハ』で始まる名字は山ほどあるわ。浜田、林、服部、橋本、花、初田、長谷川、羽野……」
—「ああ、ありがとう、香織子。わかってるよ」と僕は答えた。彼女の発言よりも、むしろ自分の無力さに苛立ちとフラストレーションを募らせていた。
私は捕らえられた二人の男の方を向いた。彼らは今、以前とは違った表情で私たちを見つめていた――怒りは、混乱、あるいは恐怖に近い何かに取って代わられていた。
—「本当に、それが俺たちだと思っているのか」と僕は言った。それは質問というより、事実の指摘だった。
傷跡のある最初の男はすぐには答えなかったが、その沈黙は、頑なな確信というよりは、芽生えつつある疑念を露わにしていた。
—「他に誰がいる?」と彼はようやく口を開いたが、その声には以前のような力強さがなくなっていた。
—「カセが言葉を最後まで言い終えることを望まなかった誰かだ」と俺は言った。それは彼のためというより、むしろ自分自身への言葉だった。「今夜、僕たちがここにいることを知っていて、撃つのにこの瞬間――それより前でも後でもなく――を選んだ人物だ。カセ自身から、2ヶ月前に仮面の男が会いに来たという話を聞いたことはあるか?」
二人の捕虜は顔を見合わせ、その長い沈黙から、答えは「はい」だが、彼らも我々と同じくらいしか知らないのだとわかる。
自分の部下たちと共に、安全な距離からその様子を見守っていた頭山が、ついに近づいてきた。その顔には、彼にしては珍しく厳しい表情が浮かんでいた。
—「中佐どの。最初の銃声が鳴った直後に、その船は錨を上げてしまいました。もはや追跡するには遠すぎます。」
—「旗は?」
—「暗闇の中で、私の部下たちは何も確認できませんでした。」彼は一呼吸置いた。「しかし、あの射撃についてですが、中佐どの――私の部下たちは、弾が命中するまで、発砲音を聞くことも、射手の位置を特定することもできませんでした。これは素人の仕業でも、単なるプロの仕業でもありません。」
—「訓練を受けた狙撃手だ。おそらく軍人だろう。もしかして、貴方の部隊の者か?」僕は、特に非難するつもりはなく、あらゆる可能性を洗い出すためにそう尋ねた。
—「もし私の部下の一人だったなら、中佐どの」と、頭山は喜びのない笑みを浮かべて言った。「予防措置として、中佐どのも死んでいたでしょう。厄介な目撃者を生き残らせるようなことは、我々のやり方ではありません。」
それは安心できる言葉ではなかったが、おそらく真実だろうと私は分かっていた。
—「それで、中村は? 近藤は?」と、香織子が突然、新たな不安に満ちた張り詰めた声で尋ねた。「加瀬が彼らの証言を裏付けることができなければ、裁判は――」
—「その方向へ導くのは難しくなるだろう」と俺は認めた。このさらなる複雑さが、他のすべての問題に重くのしかかるのを感じながら。「でも、不可能というわけではない。2人からの証言も、僕たち自身の証言もあるし、今や、2人とも自分たちよりもはるかに強力な勢力の操り人形に過ぎなかったという証拠も手に入った。優れた裁判官なら、利用された人間と、自ら害を及ぼすことを選んだ人間とを見分けることができるはずだ。最悪の場合でも、この2人を窮地から救い出すための手立ては他にもある。」
香織子は半ば安心したようにうなずいた。そして、彼女の顎がこわばるのを見て、彼女はすでに、たとえ自分自身がそれを確かめなければならないことになっても、その「良識ある裁判官」が確かに存在するように、自ら見届けることを心に決めているのだとわかった。
僕は最後にもう一度、加瀬の遺体を見つめ、それから私たちを取り囲む静かで人影のない屋根たちを見渡した。そのどこかに、目に見えない狙撃手がすでに痕跡すら残さずに姿を消しており、誰かが、 どこかで、私たちが加瀬を追っていたのと同じくらい密接にこの捜査を追っていた――そして、決して姿を現すことなく、都合の良いまさにその瞬間に介入する手段を持っている――という、身も凍るような確信を、その射手が持ち去っていったのだ。
—「帰ろう」と、僕はようやく口を開いた。皆の前で、本来なら見せたくないほど疲れ切った声だった。「全員で。生きて。今夜、これだけで、僕たちが望む以上の成果だ。」
香織子が無言で僕の隣にやって来て、暗闇の中で彼女の手が僕の手を探しているのを感じた――彼女がこれまで一度もしたことがない仕草だった。
俺は一言も発することなく、彼女に任せた。その瞬間、この夜が僕たちから奪ったもの、そして今、静かに明らかになった、僕たちが直面している事態の真の大きさを、どんな言葉も十分に表現できないと感じたからだ。
それは、ただ一人の男が秘密を売り渡したということではなく、その秘密によって引き裂かれた一家全体が、口を割らせるくらいなら身内を殺すことさえ厭わないほど、強大で、そして断固とした決意を持っていたということだったのだ。




