30- 加瀬の終わり 〜第1部〜
30.
【石場 香織子】
一ヶ月。
ただの一件の軍事記録――政府の倉庫への襲撃に失敗し、逮捕された伊達氏の元武士二人――から、その名前「加瀬修平」にたどり着くまで、だんなさまが費やした時間は、まさにこれだけの長さだった。
加瀬修平。没落した家庭教師であり、明治政府の法律によって二十年前に消滅したとされていた魔法の商人となった男。まるで壺から壺へ水を移すかのように、ある身体から別の身体へと「霊」を移すことができる。
兵役徴兵で落選した男に、一撃で倉庫の窓を三枚も粉砕できるほどの力を与えたのは、彼だった。
二週間前、私の目の前で、観菊会の御前舞踏会において首相を毒殺しようとしたのも、彼か、あるいは彼のような人物だった。
そして、この10日間、私たちが辛抱強くつなぎ合わせてきた、どんなに些細な手がかりであれ、そのすべてが彼へとつながっていた。廃屋で見つかったカフスボタンに刻まれたシンボル、互いに面識のない4人の目撃者が証言した手首の傷跡。
それらは、実に乏しい、極めて乏しい手がかりだった。そして、それらを基に捜査の再構築を行うのは、あまりプロらしいやり方ではない。
だが、現実はそうなってしまったのだ。
今夜、その名前はついに単なる仮説ではなくなった。
私はその瞬間、彼を初めて目にした。
それまで、加瀬・修平という人物は、私にとって、バラバラな証言の寄せ集めであり、4回も描写された傷跡であり、「その風貌にしては整いすぎた」声に過ぎなかった。
半ば消えかけた街灯の薄明かりの中、ホームに立っている実在の男は、私が想像していたよりも小柄だった――清隆より頭一つ分低く、顎ひげが濃く、丸い眼鏡をかけ、がっしりとしたが、ほとんど痩せこけたような体つきで、人生のある時点で、わずかなもので満足することを学ばざるを得なかった男のようだった。
おそらく見栄ではなく、二流の仕立て屋に作らせたのだろう、暗い色の西洋風のスーツが、彼の肩に少しだぶだぶと掛かっていた。しかし、その顔だけは他のすべてと矛盾していた。繊細で、ほとんど高貴とも言える顔立ち、貧しさの中で生まれた男にはあり得ないような頭の持ち方――それは、彼から奪い取られる前に与えられた教育の痕跡であり、二十二年経った今でもなお、はっきりと見て取れた。
加瀬は微動だにしなかった。武器に手を伸ばす仕草も、後ずさりする動作も――パニックを思わせるような素振りは一切見られなかった。
彼は、半分消えかけた埠頭のランタンの薄明かりの中、両手をゆっくりと体から離したまま、そこに立ち尽くしていた。その落ち着きは、凍てつくような高みから眺めていた私にとって、あまりにも自制が効きすぎていて、ほとんど侮辱的だとさえ思えた。
—「『外国勢力との密接な関係』」と彼は、まるでその言葉を一つひとつ味わうかのように繰り返した。「自ら誰と交渉していたのかさえ知らなかった男にとって、それは奇妙な告発ですね、中佐どの。」
—「今夜、旗を掲げていない船に乗り込もうとしていたではありませんか。」
—「乗り込んでいた、そうだな。何へ向かっていたのか、確かなことは言えない。」彼はわずかに頭を傾けた。その仕草はまるで教授のようで、上からその姿を見るだけで鳥肌が立った。「名前が聞きたいんだな、中佐どの。その姿勢や、鞘のそばに手を置いたまま、決して完全に握りしめない様子から、それがわかる。『戦わずにその名前を教えてくれることを期待している』」
—「それなら、教えてくれ。」
—「なぜ私がそうしなければならない?」カセは、喜びのない乾いた笑いを漏らした。「中佐どのが私を逮捕し、裁判にかけ、処刑するか、あるいは終身刑に処するだろう。どちらにせよ、私の人生はそこで終わる。それに対し、沈黙こそが、私に残された唯一の切り札なのだ。」
目で見るというよりは、直感で感じたのだが、私の隣で十部が身構え、その武器はすでにほぼ構え済みだった。まるで、この会話が今にも途切れることを予期しているかのようだった。
—「それなら交渉しよう」と清隆は言った。その声は、私にとっては完全に作り物だとわかっていたほど平静を保っていた――二時間前、彼が生まれて初めて声に出して恐怖を認めるのを私は聞いていたからだ。そして今、その表向きの冷淡さの中に、私が彼に与えたのと同じ助言を認めた。「公正な裁判だ。君が全面的に、かつ検証可能な形で協力してくれるなら、死刑は免れる。」
—「中佐どのにはその権限はない。将校であって、裁判官ではない。」
— 「僕の推薦が重みを持つほど、僕は十分な影響力を持っている。この国で、首相の命を救ったばかりの男からの言葉なら、それは決して小さなことじゃない。」
— 「ちっ……ふざけるなよ。むしろ、あいつは自慢するのが好きなんだって言えばいいのに」と、私は十部にささやいた。
彼女は、その光景から目を離すことなく、笑みをこらえていた。
最も近い倉庫の影に身を潜めていた竜橋は、会話が始まってから一言も発していなかったが、私は彼が、ほとんど痛々しいほど注意深く、加瀬をじっと見つめているのを知っていた。
その時、ある夜、彼が私に打ち明けてくれたことを思い出した。それは、私が彼を不意打ちして自分のベルトで縛り上げたあの夜のことだった。絶望の淵から雇われた男たちは、他の人には決して見えないある細かな点で互いを認識し合う――たとえじっとしていても、何年経っても、いつでも逃げ出せる態勢を保っているその姿勢で。
加瀬はまさにその姿勢をとっていた。竜橋は、目には見えなくても、この埠頭にいる誰よりもその姿勢を見抜いているに違いないと、私は直感した。
加瀬は長い間黙り込み、その約束の真の価値を秤にかけているようだった。
港の風が、倉庫のどこかに不十分に固定された防水シートをそっとバタバタと鳴らしていた。その音が、張り詰めた静寂の中で、突然耳をつんざくように響いてきた。
—「『一通の手紙』」と、彼はようやく、声を低くして言った。「明治12年(1879年)のことだ。その差出人には一度も会ったことがない。」
—「続けてください。」
— 「その方の名前は存じ上げません、中佐どの。一度も知ったことがありません。その年、私が仕えていた屋敷が廃墟となって以来、失われたと思っていた文書への手にする権限を与えられました。その見返りとして、時折、ある頼みをされるのです。手紙は、同じ筆跡で署名されたものは二度となく、常に具体的な指示が記されていました。」
—「要するに、この12年間、あなたは幽霊に従っていたわけですね。」
—「報酬は手厚かった幽霊です」とカセは言った。その口調には、初めて演じているようではなく、本心から湧き出るような苦味が感じられた。「私が一度も疑問に思ったことがないとお考えですか、中佐どの? 一度も見たことのない主人に12年間も仕えてきたのですから。だが、階級も、名前も、自分を育ててくれた家も、すべてを奪われてしまえば、少しばかりの権力を与えてくれる者の正体が何であれ、時が経つにつれて、それはほとんど二の次になってしまうのです。」
—「そして、今夜君に同行していた二人の男は」と清隆は尋ねた。「3日前に証人を誘拐しようとした連中です。この手紙に署名しているのが誰か、連中は知っているのですか?」
—「私よりも知らないでしょう、中佐どの。私はその2人に報酬を払い、指揮を執っていますが、知る必要のないことは決して伝えません――それは、その『幽霊』の名前を知ることはできなくても、その幽霊から学んだ教訓です。知らないことを裏切ることはできないのです。」カセは苦い笑みを浮かべた。「私はこの原則に基づいて生き延びてきました、中佐どの。今夜、私を殺すのは彼かもしれません。しかし、後悔は一切ありません。」
—「幽霊を追うなんて。ずいぶん度胸があるな、まったく!」路地裏の監視位置から大地が声を上げた。その声には、信じられないという驚きと、思わず湧き上がる敬意が混じっていた。
—「ああ、確かに度胸はあるよ」と加瀬は答えた。その声には、もはや教師らしさのかけらもない、苦い笑いが混じっていた。「その度胸のせいで、私は盲目になり、あの有名な『依頼主』の一族を分裂させている派閥争いの駒にされてしまったのです。」
彼は一呼吸置き、このやり取りが始まって以来初めて、声がわずかに震えた。
「二ヶ月前、その一族の別の者が、やはり私に何かを要求しに来ました。今回は手紙ではありませんでした。直接、仮面を被って、しかし確かに生きていて、確かにそこにいた。彼は、レイの移送について私が知っていることをすべて返せと迫ってきた。12年間の研究の成果が、たった一晩で奪い去られたのだ。そして、私の罪と実験に対する『贖罪』として、その首相に身体的な危害を加えるよう命じた。殺してはならない、と彼は付け加えた。ただ屈辱を与えるだけだ。集まった貴族たちの前で、彼を弱く、無防備な姿を見せつけ、政府関係者に警告なのだ。」
12月の寒さとは全く関係のない、背筋を走る戦慄を感じた。
観菊会。毒入りのシャンパン。つまり、私たちが考えていたように、単に海外の買い手を説得するための力見せではなかったのだ。
それは、カセの依頼人の実の親族の一人によって下された罰であり、その理由は、彼にも私たちにもまだ理解できていなかった。
—「あの男は……」と清隆は言った。まるで足元の氷が割れるのを感じながらも、後退しても助からないと分かっているかのように、慎重に半歩だけ前に踏み出した。「それは誰だったのですか?」
—「私もはっきりとは申し上げられません。先ほど申し上げた通り、仮面を被っていました。声や動きの機敏さから判断するに、若い男でした。『古くからの過ちを正す』とか、『我らが家が放置して朽ち果てさせたものを修復する』などと語っていました。自らに大義名分があると信じ込んでいる者の言葉ですね、中佐殿。そういう男こそ、往々にして最も危険な存在なものです。」
清隆が半歩、慎重に踏み出すのが見えた。まるで、足元の氷が割れる音を聞きながらも、後退しても助からないと分かっているから、それでも前進し続ける男のように。
—「あの船は」と彼は言った。「買い手は、あの恐喝者なのか?」
—「その点についても、確かなことはお答えできません。」
カセは、見えない地平線の方へ漠然と手を振った。そこには、国旗を掲げない船が、暗闇のどこかで待機していた。
「通信網はこれほどまでに歪み、入り乱れ、絡み合っているため、盲目的な服従の条件であり、至る所に蔓延する死への恐怖によって、誰が誰なのかを見極めることはほぼ不可能になっている。しかし個人的には、あの人物だと思う。仮面の恐喝者だ。毎回異なる仲介者が、船と価格や待ち合わせ場所を交渉している。私はその船に足を踏み入れたことは一度もありません、中佐殿。領海の境界線で商品を渡し、すぐに引き返します。知らないことは、たとえ今夜、自分の命を救いたいとどれほど願っても、お売りすることはできません。」
—「そうか。では、その船にはどのような貨物を積んでいるのだ?」
カセは躊躇した。その最初の躊躇は、感情的なものではなく、純粋に戦術的なもののように私には思えた。
—「写本です、中佐殿。榎本家が保管していた原本をもとに、20年以上の歳月をかけて、私自身の手で丹念に書き写したものです。それと触媒――特定の方法で『レイ』を染み込ませた調製済みの品々です。これさえあれば、手稿を所持する者は誰でも、私のようにその仕組みを理解するために何十年も費やすことなく、転送を再現できるのです。」彼は苦い笑みを浮かべた。「私が売っているのは、単なるサービスだけではありません、中佐殿。私は、十分な資金さえあれば、誰でも私になれるという可能性を売っているのです。」
—「原稿はいくつあるのですか?」と、ついに沈黙を破った竜橋は、私がこれまで見たことのない切迫感を帯びた声で尋ねた。
加瀬は、声が聞こえてきた暗闇の方へ顔を向けたが、相手が誰なのかは判別できなかった。
—「七つだ」と彼は言った。「七つの複製で、それぞれが異なる買い手に向けられていた。これはその三つ目だった。」
—「残りの四つはどこにある?」
—「売れた。引き渡された。ここと同じように、私も知らない行き先へと運ばれていった。」カセはゆっくりと首を横に振った。「中佐殿は一つの扉を閉めようとしているが、私はこの扉の前にすでに四つの扉を開けてしまった。悪、もし悪があるとするなら、その大部分はすでに成されてしまっているのだ。」
それは我々が想像していたよりもはるかに深刻な事態だった。稀有な才能を金で売りさばく孤立した一人の男ではなく、その才能を拡散させ、再現可能にし、代金を支払える者なら誰にでも伝授しようとしている男だったのだ。
— 「それ以上、何か知っているだろう。」
—「あなたの船には関係ないことを知っているのです、中佐どの。」加瀬の声はより張り詰めたものになり、ほとんど切迫した口調だった。まるで交渉の時間が尽きつつあることを感じ取り、勝負が自分の手から滑り落ちる前に最後の切り札を打ち出そうとする男のように。「中佐殿は、私が育った屋敷で、ある記号を見つけましたね。二本の線と一つの点。あなたは、夜明けまでにはどうあれ消えてしまう船の名前を知るよりも、その記号が何を意味するのかを知りたがっているのです。」
清隆はすぐには答えなかった。それ自体が、すでに認めているに等しいと、私は分かっていた。
—「言ってくれ」と、彼はようやく口を開いた。
加瀬は躊躇した――今回は、見せかけではなく、本物の躊躇だった。体から離したままの両手が、まるで正確な深さを測ったことのない高さから飛び降りようとしている男のように、わずかにこわばった。
—「この紋章は、中佐どの。何世代にもわたり、この国の政府がもはや存在しないと主張する一族に忠誠を誓ってきた秘密結社のものです。榎本の家にあるその紋章は、中佐どのもよくご存知のあの氏族の分派を示す印なのです……」
言葉は最後まで出なかった。カセは黙り込み、手足が震え、顔からは汗が滝のように流れ落ちた。
—「さっさと話せ、さっさと終わらせろ」と大地は言い放った。その焦りの裏には、待ちわびる緊張がにじんでいた。
—「中佐どの、ご承知おきください」と加瀬は、かすれた息のような声で言った。「この名前を明かすことは、私にとって死刑宣告に等しいかもしれないのです」
—「話をそらさないで、話せ」と清隆は言った。
次の言葉は、完全に加瀬の口から出たわけではなかった。神がそれを許さなかったのだ。彼は一音節だけ発した。
—「ハ――」
そして、銃声が響き渡った。




