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ローリング・アタック!

「突入せよーっ!」


 フルール軍が注意を引いてくれたおかげか。

 望外に早く門を抜いた。

 ここで手こずって、


『1ヶ月死体の山を築いただけ』


 みたいなことも平気であり得るからな。



 だがここからが本番だ。



 じゅうぶん勘弁してほしいだけの激闘を繰り広げたが、序の口。


「うわあああ」

「退けっ! 退けぇっ!」


 パニックに陥った敵を薙ぎ払うのは簡単だが、


「おおおおおお!!」

「待てっ! 迂闊に前へ出すぎるな!」


 勢いに任せて内側へ雪崩れ込めば、



「今だっ! 撃てーっ!!」



 当然だが、門の通路は内側の空間より狭い。

 逆ボトルネック。


「うぐっ」

「ぎゃっ」

「あああ熱いいぃ!!」


「団長!」

「一旦地属性に壁を立てさせろ!」


 飛び出せば門前の広間が急に(ひら)ける。

 そこに多数で防御陣を構えていた敵兵からの、一斉射。


 180度からの猛攻で、先行した騎士たちが壊滅する。

 一瞬だ。


 こんなもの、


『穴がひとつしかないモグラ叩きを、大量の人間がハンマー持って囲んでいる』


 に等しい。

 突っ込むのは自殺行為だが、


「でも団長! 急がないと後続が!」

「分かっている!」


 門が開いたとなれば、味方も大勢突っ込んでくるだろう。

 中に入れば、外で城壁から撃たれているより安全と思うだろうし。


 だがここで我々が止まっていれば、渋滞を起こしてしまう。

 今度は順ボトルネックだ。


 そうなると足が止まった味方は、敵から狙い撃ちし放題


 ならまだいい。

 それで困った味方がどんどん前へ押してきたら。


 私たちは圧死するか、押し出されてさっきの二の舞になるかの2択になる。


 なんとか迅速に突破せねばならない。


「やっぱり火薬を使うんだったかなぁ!」

「今から取りに行ったって遅いよ!」


 アネッサから非難の声。

 そういえばコイツは火薬使用推奨派だったな。


 ただその理由が、戦略的に正しいか以前に


『フューちゃんの勝利と無事以外、どうでもよくない?』(真顔)


 だったから却下した。

 こんな思想のヤツに危険物を持たせてはいけない。


 いや、笑えない笑い話を思い出している場合じゃない。

 すでに後方から来る人の波で、私自身1歩2歩前へ出されている。


「こうなったらもう、ビックリドッキリで行くしかないな!」

「こんなときに何言ってるの!?」

「なんだアネッサ、忘れたのか?


 こういうときは、相手が想定できないような手でないと打開できないんだぞ」


 まぁ想定できない手なら打開できる、とは言っていないが。


「地属性! 通路から出たところにスロープを作れ!」

「大ジャンプで向こうに乗り込むんですか!?」

「逆だ。こっちから向こうへ下り坂にしろ」

「え?」

「いいから」


 向こうから詰めてくる心配はないだろう。

 出てきた敵を叩くだけ、待っているだけで勝てるんだからな。

 実際こちらが動いていない今、連中も静まり返っている。


「オマエたち、ちょっと手伝え!」

「えっ、フューちゃん、もしかして!?」

「それを使う気かい!? フロイライン!」

「いいから手伝え!」


 何をビックリしてんだ。

 アネッサなんて、私の呼び方が素に戻ってるぞ。


「スロープ、こんなんでどうでしょう!」

「あぁ、バッチリだ!」


 視線を戻せば、立派な高さの坂ができ上がっている。


「なんだアレは!?」

「連中、何をしようってんだ!?」

「ええい、騒ぐな騒ぐな! 集中しろ!


『敵が出てきたら撃つ』


 それだけだ!」


 敵も少なからず動揺しているらしい。


 だが、私の言っていたビックリドッキリはこんなモンじゃないぞ!


 そのスロープから、


「地属性、邪魔な壁を崩せ!


 いくぞぉ!



 せーっ、のっ!」



 門をぶち破るのに使った丸太を転がす。



「わああ!」

「なんだありゃ!」

「こ、こっち来るぞぉ!」



 よしっ! 思ったとおり意表を突いたぞ!

 こうなると当然、



「あっ!」

「なんだっ!? 誰か撃ったぞ!」

「敵が出たのか!?」

「なんだかよく分からんが撃て!」

「撃て撃てっ!」



『出たら撃つ』

『すぐに撃つ』


 で構えていたんだ。


 ()()()()するヤツ、釣られるヤツもいるさ。


 となれば当然、



「今だっ! 掛かれ掛かれ!」



 いかに魔法は連射が効くとはいえ。

 弓矢なんかは小筒より短いにしろ、インターバルがある。


 それでじゅうぶんだ。


 少しでも敵の攻撃が途切れているあいだに。

 何より混乱して足並みが揃わないうちに。


「うわあ! 突っ込んでくるぞ!」

「うっ、撃てっ、いや、剣で……!」

「どっちですか!」

「ま、間に合わない!」


「美人を前に気もそぞろとは、感心しないなぁ!!」


 突っ込んで蹂躙する。

 これが何より手っ取り早い。


「オラオラオラオラ! さっきはよくもやってくれたなぁ!」


 敵が崩れる。

 私が前に出る。

 後ろが続けるようになる。


 するとモグラ叩きに勤しんでいた敵より、だんだんこちらの方が多くなる。

 実際の被害より流れを察知したのだろう。


「ええい、退けっ! 退けっ!」


 完全崩壊するまえに、敵勢が撤退を始めた。


 賢い。

 この(いくさ)、先は長いからな。

 今ここで消耗するもんでもない。


 それに、



「よしっ! これより城壁の上に攻め上がり、敵兵を排除する!」



 私たちも追撃より優先することがあるからな。

 安全に逃げられるってことだ。


『フルール軍より先に攻略して、名実ともに勝利者となる』


 これがマストな現状、さっさと進みたい気持ちはある。

 汚い話、壁の敵が残れば、フルール軍を足止めしてくれる効果もあろう。


 が、逆に進む私たちの背後を狙われては堪らんからな。

 ここは仕方ない。


 内側からなら、城壁へ入れるドアがたくさんある。


「乗り込め乗り込め!」


 私もハルバードを捨て、剣を抜いて換気用の窓から飛び込む。

 狭い屋内で振り回せるサイズしてないからな。


 それぐらいには廊下も各部屋も狭い。

 だから大人数で展開はできないし、下手に魔法を使えば生き埋め蒸し焼き。


 つまり、


 1対1、腕っぷしでの殺し合いがものを言う舞台ってことだ。



 私の独壇場じゃあないかぁ。



 あ。言っておくが、私は戦争を楽しんでいるようなタイプではないぞ。念のため。

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